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タウンレポート

Part.49.50.51

Part.49 名古屋市西区 弁天通商店街にて手作り朝市 「弁天マルシェ」がスタート (2013 JUN.ちもんけん VOL.84)

■名古屋市内でも朝市ブーム?!

 近年、名古屋市内でも各地で「朝市」が行われるようになってきました。商店街振興や地産地消による農業振興、地域の交流促進など目的も様々で、そこで扱われる商品も名古屋近郊で採れた地産地消の新鮮野菜をはじめ、お花、加工品、日用品、木工製品などバラエティに富んでおり、いずれも特色があってとても楽しいものです。

 

■買い物難民支援を目的に「弁天マルシェ」がスタート

 昨年の7月から、名古屋市西区の弁天通商店街でスタートした朝市「弁天マルシェ」もその一つです。地下鉄鶴舞線「浄心駅」から東に約400m延びる弁天通商店街は、周辺に広がる住宅街を商圏としており、地元主婦などが日用品などを徒歩や自転車により買い物する最寄品中心の近隣型商店街です。しかしながら、昨年度、野菜や魚などの生鮮品を扱っていた地元でも評判の八百屋が閉店してしまい、生鮮品の購入が不便になったことから、商店街周辺に住む高齢者などの買い物難民の支援をはじめとする地域振興を目的として、弁天通商店街が中心となって新たに朝市に取り組みはじめました。(※名古屋市商店街地域活力向上事業の採択を受けて実施。筆者はアドバイザーとして支援。)

 

■試行錯誤しながら事業計画を作成

 第1回は昨年7月3日に実施。酒屋の駐車場に移動販売の八百屋を誘致したところ、あいにくの雨にも関わらず約120名のお客さんが野菜や果物などを目当てに来てくださいました。その後も月1回(毎月3日)のペースで今年3月まで実験的に継続し、その間に来場者にアンケート調査を行ったり、地元の学区関係者や区役所とも意見交換を行ったりしながら、開催時間や開催場所、店舗構成などを見直してきました。こうした地域の新たなチャレンジは新聞にも採りあげられ、少しずつ認知度も高まっています。また、朝市の実践に合わせて月1回のペースで勉強会を行い、他市の先進事例視察なども参考にしながら今後の事業計画を作成し、本格実施にむけた環境を整えてきました。

 

 ■平成25年4月から月2回の本格実施

 今年の4月からは月2回(3日、第3土曜日)に回数を増やしています。地域外からは野菜・果物、干物・海産物屋、豆腐などの生鮮品を扱う5店舗が地元商店の駐車場やお寺の境内に出店するとともに、朝市に合わせて特別協賛品を出品する地元商店も増加してきています。さらに、地元の高校とお菓子メーカーの共同開発による新商品のテスト販売を行うなど徐々に広がりを見せており、来客数も着実に増加傾向にあります。

 

■公道を活用した地域ぐるみの賑わいづくりが課題

 弁天通商店街では、十数年前に行った電線類地中化工事により、街路樹や花壇、駐輪場、休憩スペースなどが配された広くて快適な歩道空間が整備され、商店街及び地域の貴重な財産となっています。今後は、警察等の関係機関と連携を図りながら、朝市の開催場所としても歩道空間(公道)を活用することで、会場を拡張するとともに面的な賑わいづくりにつなげることが課題となっています。

 また、本事業の目的が、地域の高齢者などの買い物難民の支援、さらには地域住民の賑わいと交流の居場所づくりであることから、地元のボランティアグループが手作り品のバザーを出店したり、地元の子ども達が店舗販売を通じて職業体験できる機会とするなど、今後は地域住民を巻き込んだ企画・運営を進めて、地域ぐるみの活動に育てていくことが求められています。その第一歩として、今年、実施主体を弁天マルシェ実行委員会と改め、より開かれた運営を始めたところです。毎月3日と第3土曜日は、ぜひ一度弁天マルシェに足をお運びください。

 

(文責:主任研究員 池田哲也)

Part.50 地域連携BCPによる「災害に強いものづくり中部」をめざして      (2013 OCT.ちもんけん VOL.85)

はじめに

 近年、企業や市町村等においてBCP(事業継続計画)、BCMS(事業継続マネジメントシステム)への関心が高まっています。BCPは、企業等の組織が疫病、自然災害、事故、テロなどの予期せぬ事態の発生に直面した時、限られた経営資源で優先すべき事業活動を継続、あるいは目標とする復旧時間内に再開できるよう、事前に策定される行動計画です。各組織における危機管理対応は従来から様々なかたちで取り組まれてきましたが、東日本大震災による大きな被害とその中での事業継続や復興といった取り組みを目の当たりにして、改めてBCPの重要性が認識されています。

 

産業防災ネットワーク事業

 BCPは一般的に個別の企業や市町村等で取り組まれる活動ですが、地震や風水害などの広域災害において、個社の自助には限界があります。そこで着目したのが、地域連携BCPによる地域産業の事業継続を図る取り組みです。地域問題研究所では、経済産業省中部経済産業局が作成した「地域連携BCP策定ポイント集」(平成24年2月)の成果を踏まえ、平成24年度に「産業防災ネットワーク事業」として、豊橋市明海地区における地域連携実証訓練、地域内・地域間連携の事例調査・検証作業により、連携のポイント、連携の効果、課題等を検証。また、個社BCPを基礎としつつ、多様な地域連携BCPの構築による災害時等の地域レベルでの産業活動強化方策を検討しました。

 

地域連携実証訓練

 豊橋市の明海工業団地において、地震発生・津波到達を想定した避難訓練を実施(平成24年12月7日 60社、1,284名参加)。今回は事業継続の前提となる従業員の生命を守る観点から、団地内のグループ単位に共同の避難場所への避難訓練を行い、訓練後にアンケート、ヒアリング等を行い、自助・共助・公助が対応すべき分野、課題等を検証したほか、個社の自助と地域単位での共助それぞれに期待する役割について提言しました。

 

■地域連携BCPの可能性

 地域連携BCPはいくつかの類型に整理することができます。地域内連携BCPとして、①工業団地等におけるBCP、地域間連携BCPとして、②企業グループ内BCP、③他社工場等を活用したBCP、④委託代替生産を活用したBCPに大別できるほか、これらの複合型も考えられます。地域連携によるBCP構築による事業継続に期待される効果は大きいものの、解決すべき課題の多いことも事実です。各地の事例から地域連携の背景、連携のポイント、課題などを検証し、個社BCPに市町村の産業政策も含めた地域連携BCPの概念を加えることで、懸念される巨大地震等の襲来に備え、モノづくりのメッカである中部圏、とりわけ東海地方の産業基盤の強靭化を高めたいと思います。

 

(文責:地域連携マネージャー 金子宏)

Part.51 花祭りの里  東栄町で暮らしてみませんか? 「東栄町空き家リフォーム住宅の見学会」に行ってきました (2014 JAN. ちもんけん VOL.86)

1.はじめに

 愛知県の北東部の静岡県浜松市との県境にある東栄町は、四方を山に囲まれた小さなまちで、その約90%が山林・原野で占められるほど自然が豊かである。また、国の重要無形民俗文化財に指定されている「花祭り」などの歴史と文化が息づく町である。

 しかし、平成22年の国勢調査で人口3,757人と10年間で約1,000人が減少し、65歳以上の高齢化率も47.8%と過疎、高齢化が進んでいる。これに少しで も歯止めをかけるため、町内に約150戸ある空き家を活用して、移住・定住の促進を図る「東栄町空き家リフォーム住宅」の取り組みを平成24年度から進めている。

 

2.空き家リフォーム住宅

町では、空き家の有効活用を通して、町と都市住民との交流拡大、定住促進による地域の活性化を図るため、「空き家情報活用制度」(空き家バンク制度)を平成18年度より実施している。しかし、町内にある多くの空き家は、「居住者が不在になってから数年以上経過して老朽化していること」、「家財道具などが残ったままになっていること」、「お風呂やトイレ、台所などの使い勝手が悪いこと」、「所有者と定住希望者で賃貸契約を結ばなくてはいけないなどの手続きが面倒なこと」など、空き家をそのまま活用することが困難なことから、空き家を活用した移住が進みにくいところがある。

そこで、町では平成24年度から町内で空き家になった住宅をリフォームし、UターンやⅠターンの定住希望者に貸し出す移住定住事業を進めることになった。この事業は、町が空き家情報活用制度に登録された空き家を所有者から10年間借り上げ、総務省の「過疎地域集落再編整備事業」による国庫補助と、過疎債、町費をあわせた1,600万円で年間3軒の空き家を、水回りを中心に改修し、定住希望者に貸し出すものである。平成24年度は町内の3軒の空き家を改修して、名古屋市、知立市、豊橋市から3家族、計13名が入居している。

この空き家リフォーム住宅の利用にあたっては毎年、町と「建物賃貸借」契約を行い、最長10年間の契約ができるが、契約期間終了後は、空き家所有者との契約となる。また、中学生以下の子どもが同居する場合には家賃が2割減額する制度もある。さらに入居にあたっては、「町の自治組織に加入し、地域の行事等に積極的に参加できること」、「町への定住を希望するUⅠターンの家族(単身不可)であること」、「入居する住宅に住民登録できること」などの要件がある。

なお、1年間はお試し居住期間として町での暮らしに慣れてもらうようにしており、2年目以降に本契約を結ぶかどうかを地域住民との面談等を行って決めることになっている。

 

3.東栄町空き家リフォーム住宅の見学会

 今年度の空き家リフォームは今年の夏から行われ、概ね改修が完了した平成2512月8日()に見学会が開催された。

 今年度の空き家リフォーム住宅は、御園地区、東薗目地区、本郷地区にある3軒で、当日は愛知県豊田市、知立市、岐阜県多治見市、神奈川県川崎市などから、子ども連れの家族や夫婦など6組16名が参加した。

 まずは町役場で、町での買い物、病院、学校、仕事などの暮らしの情報などの説明を行い、その後、3軒の空き家を見学した。見学した空き家は、台所や風呂、トイレが今風に綺麗に改修されているが、大きな梁がそのまま残っていたり、おくどさんが残っていたり、地下(床下)に納屋があったりと、古民家風の雰囲気を残した立派な住宅ばかりであった。

この見学会はただ単に空き家を見学するだけでなく、地域の方から、地域と関わり、地域とともに暮らすための作法など、地域の話を聞けるようにするなど、地域に愛着を持って安心して住んでもらえるようなプログラムになっていた。

なお、当日は昨年度にこの制度を使って移住したお宅も訪問し、薪ストーブのある暮らし、ヤギやポニーとともに家族4人が元気に地域に溶け込んで暮らす姿を垣間見ることができた。

見学会に参加した方々は田舎に移住して農ある暮らしをしたいと考えている方ばかりで、改修された空き家を、時間をかけてじっくり見学したり、役場の方や地域の方に東栄町内での仕事や借りられる農地のことを熱心に質問するなど、東栄町での暮らしのイメージを膨らませることができたようで、多くの方がリフォームした住宅や地域に満足した様子であった。

 

4.さいごに

 都会から移住するにあたっては、「家族の理解」、「地域の受入」、「住宅の確保」、「仕事などの収入源の確保」などの課題をクリアする必要があると言われるが、この空き家リフォーム住宅の制度は、その課題解決に少しでも対応ができるような内容になっている。

 今後、応募者の中から面接などを経て入居者を決定し、4月までに入居できるようになるが、これらの方々が地域の新たな担い手として活躍されることを期待する。

 

(文責:主任研究員 藤 正三)