H26.第10.11.12講
第10講 テーマ 「空き家問題の見通しと対策 ~空き家の有効活用策」
2015年2月4日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室
「空き家問題の見通しと対策 ~空き家の有効活用策」
富士通総研経済研究所 上席主任研究員 米山 秀隆 氏
2013年の全国の空き家率は13.5%(8,196千戸)、戦後一貫して増え続けています。戦後の住宅絶対数の不足から、近年の地方都市における人口減少を背景とするなど、内容は変化しています。空き家のうち、売却用、賃貸用でない、その他の住宅の空き家(3,184千戸)の増加が大きな課題となっています。
空き家対策には、①危険な空き家の撤去促進、②ストックとしての利用促進策 の二つがあります。撤去促進のため、撤去費用の補助、公費撤去、特定空き家に対する固定資産税の住宅用地特例の解除などがあります。また、空き家の利活用促進策として、空き家バンク、定住支援策、公的活用など各地で取組まれています。①、②とも空き家を巡る課題も多く、所期の成果を上げているところは少ない。
とりわけ地方都市において人口減少、高齢化が進む中で、コンパクトシティによる中心市街地活性化という、まちづくりを視野に入れた取組みが重要です。
「江津市の定住促進と空き家対策」
島根県江津市政策企画課 森脇 淳 氏
江津市においても人口減少と高齢化は大きな課題です。このため、平成19年に江津市定住促進ビジョンを策定し、定住促進と、江津市に住み続けるための産業振興を施策の2本柱としています。江津市では、空き家は定住促進を図るための地域資源と考えています。
田舎暮らしや空き家を利用したいというニーズは大きいものの、具体的な成約にまで結び付かないことが多い。宅建業者、地域・NPO、行政の役割分担と組織連携による情報提供、移住相談、地域のコミュニティを含めた入居後の支援などにより定住を促しています。空き家バンクの大原則として、あっせんするのはU・Iターン者とし、江津市民や近隣市町村居住者は対象としない。状態のよい住宅の登録、空き家バンクを通じた情報提供、無料職業紹介、起業・創業支援、空き家バンク登録住宅の改修費用の補助などを行っています。江津市の空き家対策は、当初の空き家あっせんから、創業支援を通じた人材誘致、まちの活性化にシフトしています。
「尾道式空き家再生術」
NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事 豊田 雅子 氏
海外ツアー添乗員の経験から、歴史を居間に活かすというヨーロッパのまちづくりが活動の原点にあります。尾道には駅から2キロ圏内の町の中心に500軒以上の空き家が点在しています。再建築できない非接道の建物が多く、今ある建物を活用することとなります。市に空き家バンクはあっても、物件の登録はなく自分で空き家を探した。1軒の空き家との出会いをきっかけに2007年に「尾道空き家再生プロジェクト」が発足。
空き家に関する情報がないところからNPO活動は始まります。このため、尾道建築塾、尾道空き家談義、空き家再生蚤の市、尾道まちづくり発表会、空き家再生ピクニック、尾道空き家再生!夏合宿などを開催しています。これまでに多くの空き家再生を実施しています。空き家再生は、多様な人とのネットワークとも言えます。
現在、尾道市空き家バンク事業を受託、尾道暮らしのための手引書作成、空き家巡りツアー開催、定住支援、観光分野への活用など展開しています。尾道の空き家はまだまだあります。
第11講 テーマ 「生活困窮者自立支援法と自治体の役割」
2015年3月13日(金)13:30~16:30 名古屋商工会議所 第5会議室(3階)
「生活困窮者自立支援法と自治体の役割」
首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻 教授 岡部 卓 氏
近年の経済・雇用環境を反映して、ワーキングプア、無年金・低年金高齢者層が増加しています。こうした人々の中には、地域の中でネットワークを持つことなく孤立した失業者・高齢者・障害者・ひとり親世帯なども多く、生活保護制度を活用せざるを得ない人たちが増えています。生活保護の前段階で第2のセーフテイネットである低所得者対策の充実強化が要請されています。
生活保護に至る前の自立支援の強化を図るため、生活困窮者自立支援法が成立、2015年4月より実施されます。本法では、必須事業として、①自立相談支援事業、②住居確保給付金の支給、任意事業として、①就労準備支援事業、②一時生活支援事業、③家計相談支援事業、④学習支援事業などがあります。
生活困窮者自立支援が有効に機能するため、行政を基点としつつ、地域住民、社会福祉法人、NPO、企業等の連携・協働により、生活困窮者・貧困者の多様な生活課題への緩和・解決に向けて取り組むことが必要です。
「名古屋市における生活困窮者自立支援の取組み」
名古屋市仕事・暮らし自立サポートセンター センター長 大熊 宗麿 氏
名古屋市では、生活困窮者を経済的理由だけでとらえることなく、個別的、包括的、継続的な支援により、就労による経済的自立に止まらない日常生活、社会生活における自立を目指しています。生活困窮者自立支援法に基づいて2014年7月から始めた生活困窮者自立促進支援モデル事業では、自立相談支援事業、就労準備支援事業、家計相談支援事業、就労訓練事業、住宅支援給付金事業、学習支援事業を行っています。
名古屋市仕事・暮らし自立サポートセンターは、多くの関係機関と連携して相談窓口は広くし、相談者の様々な問題を解決することを目指しています。昨年7月の開設から1月までに来所226件、電話・メール等437件の相談を受けています。相談内容は、生活費、住居、就労に関するものが多く、背景として病気、障害、精神疾患、コミュニケーション、成育歴、家族関係などがあります。
多様な背景に対応するため、市内の支援機関とも連携して対応したい。都市部の自立相談支援機関の役割として、窓口となるハブ機能と支援機能を担うことが考えられます。
第12講 テーマ 「おもろいな やってみなはれ~自治体なんやさかい何でもやったらよろしいねん」
2015年3月26日(木)14:30~16:30 昭和ビル 9階ホール
「おもろいな やってみなはれ ~自治体なんやさかい何でもやったらよろしいねん」
滋賀県湖南市 市長 谷畑 英吾 氏
地方分権を阻む要因が地方の側にあるのではないか、反証として分権型社会とは住民自らが自治を楽しむものだと思います。地域に飛び出す公務員も、現場では思いっきり弾けてもいい。湖南市での取組みを大きく6つに要約して紹介したいと思います。
①湖南市の障がい福祉を担保するために、発達支援システムを条例化して乳幼児期から就労まで一貫して支援。基礎的自治体には社会のインフラ整備だけでなく、心のインフラづくりが求められます。先手の小さな福祉が大きな力を発揮します。②地域で学校を包み込む「学校支援地域本部(地域が学校の教育活動を支援)」と「地域運営学校(コミュニティ・スクール)」を設け、多様な実習活動が行われています。③地域福祉や防災、環境などに取り組む7つの地域まちづくり協議会を設置、各地域でユニークな活動が取組まれています。④エネルギー、経済の地域内循環。⑤既存の地域資源をくっつける、ないものをでっちあげる。⑥よそもの若者馬鹿者と(湖南市地域おこし協力隊と市長)。など、湖南市では、分権型社会ならではの取組みを行っています。
まとめとして、地域協働の主体は、行政、市民活動団体、地域団体、企業などさまざま。連携の形態もテーマによりさまざま。協働には持続可能となる仕組みが不可欠。協働政策の枠組みは、自治立法により担保される必要がある。自覚者が責任者(糸賀一雄)。