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人物紹介 いもづるネットワーク

その45  暮らしを支える活動を次々と展開するドリームハイツの仕掛け人の一人 (2012 JUN. ちもんけん VOL.80)

横浜市深谷台地域運営協議会 会長 泉 一弘 氏

 行政サービスだけに頼ることなく自主的な取り組みを進め、郊外住宅団地の居住環境を高めているドリームハイツの活動家の1人泉一弘さんにお話をうかがました。

 

≪はじまりは子育て課題への対応≫

 横浜市の南西部の一番外れにある戸塚区のそのまた外れに、1972年ごろにかけて、神奈川県と横浜市の住宅供給公社により開発・分譲された「ドリームハイツ」があります。

 分譲されて間もなく、私たち家族も転入してきましたが、交通の便は非常に悪く、福祉施設や教育施設などもほとんどありませんでした。一園あった幼稚園もすぐいっぱいになり、どうやって子育て・保育をするのかというのが、最初に課題として持ち上がりました。

 同じ課題を抱える居住者が集まり話し合った結果、「行政から支援が得られないなら、自分達で一つひとつ、つくっていこうじゃないか」ということで、横浜市の壊れたバスとを払い下げてもらい、自主保育を始めました。その後、子ども達が学校に行く段階で、学童保育をつくりました。この場所には水道が来ておらず、父親たちが近くに井戸を掘り、水を確保しました。

 

≪高齢化への対応≫

 それから時は経ち、1990年代になると、居住者の高齢化を視野に入れた活動が始められました。1990年、高齢者の食生活を支えるため、約30名の女性グループによる地域の会食・配食サービス「地域給食の会」が活動を始めました。

 次にできたのが、訪問介護を行う「ふれあいドリーム」で、後にNPO法人となり介護保険サービス事業者に成長しました。

さらに、当時、まだ一般化していなかった介護予防活動を行う「いこいの家 夢みん(むーみん)」をつくりました。メンバーのうち15人がお金を出し合って1500万円を集め、不足分は、私が銀行から600万円ほど借りて、団地内の一室を購入し、活動場所を確保しました。ちなみに、私はこの時に勤めていた民間企業を早期退職し、初代理事長になりました。

  一方、「自由に集まれる場所が欲しい」という居住者の意見が多く出さていたことから、郵便局の隣の空き店舗を改装し、みんなの居場所「ふらっとステーション・ドリーム」をつくりました。前述の地域福祉3団体が連携して実施主体になり、誰もが生き生きと豊かに過ごせて、交流の場となるよう、横浜市との協働事業としてスタートしました。具体的には、平日のランチを提供し、一人暮らしの高齢者(特に男性)の食生活を下支えしたり、いろいろイベントを開催したりして、年間1万4000人位の利用者を迎え入れています。

 

≪地域運営協議会によるエリアマネジメントの始まり≫

 2007年10月からは、団地内で2つの自治会と6つのNPO法人等が集まって「ドリームハイツ地域運営協議会」を設立し、地域全体のことを協議し、必要な取り組みを進めています。協働を一歩前進させたイメージで、行政は後押しをする程度です。

 地域運営協議会では、最初にアンケートを行い、居住者の意見を吸い上げました。これまでのアンケートでは「公共交通機関の便が悪い」、「スーパーが欲しい」と年々ニーズは変化しており、2007年には、「一人暮らしの高齢者の見守りや緊急連絡体制」が課題の上位を占めました。

そこで、団地の高齢者に服用している薬やかかりつけ医などを記入できる「安心カード」を配布するとともに、見守りネットセンターという仕組みをつくり、遠隔で電気の消費量などを把握し、高齢者の生活の見守りをしています。緊急通報にも対応しています。

 さらに、ボランティアのマッチングシステムである「ボランティアバンクえん」を立ち上げ、ちょっとした生活のお手伝いを通して、高齢者の生活を支援しています。

 

≪地域と学校との関わりの強化≫

 2009年12月から、深谷台小学校の空き教室を開放していただき、地域交流室を開設しました。そこには、地域運営協議会の事務スペース、見守りネットセンターの拠点、学校と地域の交流拠点の3つの機能があります。

 また、2010年からは、放課後の子ども達に宿題やプリント学習を通して学習習慣や基礎的な学力の定着を図る「アフタースクール」を始めました。現在、全校約300名の児童のうち、130名ぐらいが登録し、週2回の開室日には60名ぐらいが来ています。

 

≪最後に≫

 昨年度、ますます進む高齢化、一人暮らし化への対応を考えた場合、ドリームハイツの団地だけではカバーできないのではないかと考え、地域運営協議会の範囲を小学校区に広げました。ドリームハイツでは高齢化の問題しか見えてこないのですが、エリアを小学校区に広げることによって、新しい地域課題もみえてきました。

 外に開かれた組織でありたいと考え、情報の受発信、見学研修者の受け入れ、外部への事例報告等に心がけております。

 

 

 

 

(文責:副主任研究員 河北 裕喜) 

その46 愛知県初の市民コミュニティ財団「一般財団法人あいちコミュニティ財団」   (2013 JUN. ちもんけん VOL.84)

一般財団法人あいちコミュニティ財団

事務局長 長谷川 友紀 さん

 今年4月1日に設立された愛知県初の市民コミュニティ財団「一般財団法人あいちコミュニティ財団」(代表理事 木村真樹さん。以下、財団)。いよいよ助成事業が始動しました!!そこで、財団の事務局長である長谷川友紀さんに財団設立に込めた想いと事業の概要についてお聞きしました。

 

■あいちコミュニティ財団とは?

 あいちコミュニティ財団は、市民の方から寄付を募り、その寄付金(“志金”※1)をもとに市民公益活動団体(NPO)の事業を助成するコミュニティ財団です。

 2012年10月から発起人(設立寄付者)募集説明会を重ね、653人、9,501,789円の共感と想いを集め、設立に至りました。

 

■あいちコミュニティ財団を設立することになったきっかけを教えてください。

 財団の代表である木村が同じく代表を務めるコミュニティ・ユース・バンクmomo※2(以下、momo)では、持続可能な地域づくりを行う事業に対して融資を行っています。

 応募事業の中には、重要な地域課題の解決に取り組んでいるにもかかわらず、まだ地域課題としてあまり認識されていなかったり、組織基盤が弱いために融資できないケースがあります。そのような活動を支援するためには融資以外の支援が必要だと考えて設立しました。

 

■どのような助成プログラムがありますか?

①事業指定プログラム(ミエルカ=見える化)

 助成を希望する市民公益活動団体(NPO)を募集し、採択された団体と一緒に“志金(≒共感者)”を集める“志金”調達サポートプログラムです。

単にお金を助成するだけではなく、「事業をPRするツールをつくってPRし、必要な“志金”を集め、実施する」という一連の流れをサポートします。そのプロセスを通して、団体の組織基盤の強化にも取り組みます。

 現在、参加団体を募集中で、県内5カ所で説明会を開催します。

②テーマ提案プログラム(エンタク=縁卓)

 一定の条件を満たした市民公益活動団体(NPO等)や発起人、自治体、企業などから特定テーマや地域ごと、分野ごとなどの独自の支援プログラムの提案を受けて、設置する基金です。提案者が主体的に“志金”集めや運営に関わることができます。

 現在、設立記念基金として、発起人の関心の高かった「子ども・教育」に関する基金を設置する予定です。

③冠プログラム(カンムリ)

  財団の寄付者がプログラムの名称や助成対象、分野、金額などを考えてつくる、オリジナルの助成プログラムです。

このプログラムは2014年度からの開始を予定しています。

 

■「寄付」以外で協力できることはありますか?

 現在、「フレンドレイザー」を募集しています。フレンドレイザーとは、事業指定プログラムの参加団体の“志金”調達をサポートするボランティアのことで、8月に説明会を開催します。

 その他にも、助成団体のPRなども協力してもらえるとうれしいです。

 

■話は変わりますが、長谷川さんは大手企業を退職して財団の事務局長になられましたが、その理由を教えてください。

 私は、momoでの活動を通して、地域にたくさんの課題や魅力があることを知りました。そして、課題解決や魅力アップに取り組む人たちと出会い、つながりができる中で、地域には“支えてくれる人がいる”という安心感を得ることができました。

 私は、多くの人が地域の課題や魅力に触れることができる機会をたくさんつくり、目の前の課題に取り組んでいる人を応援できる社会にしていきたいと思います。財団にはその想いを実現できる可能性を感じました。

 

■これからに向けて

 財団は、多くの市民の方からお金をいただいて成り立っています。また、参加団体の活動のサポートを通して、地域課題を見える化すれば、多様な課題に困っている人を助けることができます。

 責任重大ですが、財団も地域に必要な財団として定着していくように、参加団体や賛同人、発起人、賛助会員など共感してくれる方たちと一緒に頑張っていきます。

 

■対談を終えて

 地域の課題が多様化、複雑化している中で、目の前の課題に気づき、気づいた人が解決に取り組むことができ、その活動を応援していく環境をつくることは非常に重要です。あいちコミュニティ財団の活動は、地域社会づくりの新しい一歩だと感じました。

 長谷川さんが「財団はあくまでインフラです。」とおっしゃっています。

 私たちには、木村さんや長谷川さん達がつくり上げてくれたこの貴重なインフラを、うまく活用したり、維持・管理していく役割があるのではないでしょうか。

 

※1 あいちコミュニティ財団やコミュニティ・ユース・バンクmomoでは、想いや志の宿ったお金のことを“志金”と呼んでいます。

※2 コミュニティ・ユース・バンクmomoとは、2005年に20~30代の若者が中心となって設立した、東海3県の持続可能な地域づくりを行う事業に融資を行うNPOバンク。これまでに39件、総額8,385万円の融資を行っています。

HP コミュニティ・ユース・バンクmomo

http://www.momobank.net/

(副主任研究員 宮原 知沙)

  

【一般財団法人 あいちコミュニティ財団の紹介】

あいちコミュニティ財団のホームページには、財団の事業概要や設立趣旨、いもづるネットワークで紹介しきれなかった活動情報がたくさん掲載されています。行政の方への様々な呼びかけも行われています。

まずは、一度ご覧ください。

HP:http://aichi-community.jp/

 

 【事務局】

住 所:〒461-0002 愛知県名古屋市東区代官町39-18

日本陶磁器センタービル5F

電 話:052-936-5101   FAX:052-982-9089

E-mail:office★aichi-community.jp(★を@に変えてご利用ください。)

その47 教育環境の展開とESD(持続可能な開発のための教育)の地域、学校における普及を目指して(2013 OCT. ちもんけん VOL.85)

一般社団法人 四日市大学エネルギー環境教育研究会

副会長兼事務局長  矢口 芳枝 さん

 当研究所が受託した西春中学校エコ改修・環境教育事業でお世話になり、近年では、西尾市と御嵩町の環境基本計画策定に際して、住民ワークショップなどでご活動をお話しいただいた矢口さんに、お目にかかりました。研究会事務室は、大学内にありますが、昨年の春に一般社団法人化して活動の強化が進められているところです。

 

■研究会創設のきっかけは?

 研究会は平成14年度に資源エネルギー庁が進めた「エネルギー教育研究調査普及事業」で四日市大学が拠点大学として選ばれたことです。早いもので、12年目を迎えました。

 私は平成17年から事務局としてかかわったわけですが、三重県のエネルギー施策の委員でご一緒だった朝日幸代先生(現、三重大教授)に、エネルギー環境教育研究会に迎えられ、会長の環境情報学部の新田義孝先生とご縁があり現在に至っています。研究会は環境教育と地域循環型形成事業などの社会貢献を主な活動として取り組んでいます。具体的には、四日市市などの受託事業や環境省や企業の財団などの助成金を得て環境保全活動を進め、大学と地域をつないだ活動をしています。

 

■もともと環境教育に携われたきっかけは?

 私は、平成4年ごろに、四日市市の生涯学習課に在職して、いろいろな市民活動に汗を流している方々と知り合いました。その折、市の地域環境リーダー養成講座の第1期生で環境を学び、環境について活動しないと大変なことになると感じ、すぐに未来の主役となる子ども達を集め、足元である地域の活動から始めたわけです。現在もその活動は地域の方々が継承していただいており嬉しい限りであります。しかしながら環境悪化のスピードは速く、ジレンマを抱えながら環境保全活動を続けています。

 平成12年には、三重県環境学習情報センター環境学習推進員になって、講師や委員として、たくさんの機関にお招きいただく機会に恵まれました。

同時に、環境カウンセラーや省エネルギー普及指導員の資格取得や、14年の合併前の西春町の社外重役制度に応募・採用され、現在も宇福寺児童館の環境リーダーの子どもたちとご一緒に活動をしています。その他、小中学校や地域団体に出向いたり、高校で非常勤講師を務めたり、忙しく過ごしています。

 実際は、環境教育は何なのかについて夢中になって考えて行動するうちに、いつの間にか、大学の研究会を支えるような立場になりました。

 そんな中で、20年度には環境省中部地方環境事務所のご推薦をいただき環境大臣賞を戴き、その使命を全うすべき活動を進めています。

 

■西尾市や御嵩町で矢口さんにご指導いただいた時、住民の方々は普通の主婦が環境活動に挑戦しておられると、とても親しみやすい印象を持っていました。

一般社団法人の会員はどのようなメンバーですか?

 三重県と岐阜県、愛知県の大学や小・中・高校の教員、行政、市民団体、企業の方々が主なメンバーです。活動には、もちろん学生も参加して、大学の中に拠点を置くという特色を活かしているわけです。がんばって会を支えていこうというメンバーが多く、一般社団法人になったのですが、会員が主体的な気持ちを持ち続けることが大切と思っています。

 

■最近お取組みの事業は?

 西尾市でもお話ししましたが、地域循環型形成事業「伊勢竹鶏物語」の取組みを環境省の助成金に採択されて活動を進め、各メディアから取材・活動の紹介や、22年度の環境白書に掲載され、COP10開催では講演の機会など得るなど成果があがったと自負しています。内容は、地域で管理に困っている竹をうまく使って、3Rを実現しようと養鶏を実験してきました。地元小企業が持つ「アライ菌」という微生物で竹粉末を処理して、養鶏の飼料に混ぜると卵の品質が良くなるんです。さらに、未利用品の野菜くず、パンくずも使って3R飼料を開発しました。鶏糞の臭いも弱くなり、養鶏場の周りの環境も良くなりました。卵はお菓子屋さんで加工してもらって、甘みがあるまろやかな商品にもなっています。

 

■学校におけるESDの普及に向けて、東海地域では何が課題でしょうか?

 東海地域の課題という訳ではないですが、小中学校でいかに現状の教育のカリキュラムの中にESDを取り入れることができるかが課題だと思います。様々な社会や暮らしの課題を解決しながら新たな価値観や行動を促し、持続的に可能な地球や社会を創っていく教育です。学習指導要領に基づいた教育、子どもの生活指導など教育現場の多忙さや、環境教育への理解不足ということもあり、教員が創造的な教育内容を組む余裕が少ないですね。でも、ESDに理解がある教員の方もおられ、かなりの温度差を感じております。そのような課題を解決するためにも、四日市市でもESDにつなげるためのワーキンググループを立ち上げ、今年から始めて取り組んでいます。やはり、教育委員会の支援なしでは進めることは出来ません。また、他地域での実績ですが、総合学習で環境教育に関わって、学習を共にする子どもたちの目は輝きます。講座が終わってからアンケートを行うと子ども達のESDに対する理解は深まっています。

 市民やPTA、自治体、企業、教育委員会、そして学校現場がESDを世界に通用して、地球にやさしい子どもを育てるために、熱意を持って進めていきたいと思います。

 

◇連絡先・HPなど

一般社団法人 四日市大学エネルギー環境教育研究会

住所 〒512-8512 四日市市萱生町1200番地 四日市大学6号館内

電話 059-340-1638

ファクス 059-365-6630

メールアドレス info★yokkaichi-ene.comhttp(★を@に変えてご利用ください。)

ホームページ www.yokkaichi-ene.com/

*お問い合わせはメールでお願いたします。

 

(文責:主席研究員 田辺則人)