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その54 サッカーを通じて、子どもの自主性を育むとともに国際交流を実施 (2016 JUN. ちもんけん VOL.95)

ACミランサッカースクール テクニカルディレクター

マテオ コント さん

 今回のいもづるネットワークでは、保育園及び幼稚園を対象にサッカーを通じて子どもの自主性を育み日本の文化とイタリア文化を繋ぐ活動をしているACミランサッカースクールテクニカルディレクターのマテオ コントさんにお話を伺いました。

 

■活動の経緯を教えてください。

 クラブのプロジェクトとして「日本に新たなスポーツ文化を伝播していく」をモットーに活動しています。サッカー文化は日本にもありますが、イタリアの文化とは当然違います。子どもたちにはイタリアの文化を感じてもらいながら、日本に新たな文化や思想を与えることが出来たら良いと思っています。平成23年に来日して以降、主に小牧市を中心に活動していますが、これまで保育園・幼稚園訪問を述べ41園、1,400人以上の園児を接してきました。

 

■日本の子どもたちの印象は?

 よく言えば協調性のある子ども達だと感じています。ただ、悪く言えば、皆と同じ枠組みの中で生活しているだけで、外の文化に対しても内弁慶になっているように感じます。それは大人にも言えることで、恐らくこれまで日本が培ってきた文化の枠組みの中にいれば、極力ミスの少ない生活が保障されているのではと感じています。そのため、子どもたちも知らず知らずに行儀の良い子、枠の中に納まる子になっているのではないでしょうか。イタリアには発明家を多く輩出していることをご存知でしょうか。日本にも失敗は成功のもとという格言がありますが、そのことを日本の子供たちに教えていきたいと思っています。ミスしてもいつでも挽回はできるんだよと。ミスを恐れて自主性が育たないのは実に惜しいです。この活動を通して、子どもたちの自主性を育てていきたいと思っています。

 

■ACミランではサッカーを通じて地域貢献を行っていますが、具体的には?

 座学として、イタリア人との交流や、文化の違いをEN-US">40分程度教えています。座学の後にサッカーを45分程度教えるカリキュラムで臨んでいます。保育園や幼稚園を対象としたサッカースクールの目標は、「世界は広いこと、日本だけが全てじゃないこと」を感じてもらい、園児が日本の文化を超えた枠組みの中で人としての成長を促すことを目標としています。そのために、座学では日本の色や数字、動物の鳴き声等がイタリアではどのように発音されているのか、ゲーム感覚で学んでもらったり、文字や食生活の違いを体験してもらいます。子どもたちは初めてイタリア語と接するとインパクトがあり思わず笑ってしまうようです。しかし日本の子どもは好奇心が旺盛で吸収も早いです。日本人の特徴として協調性が優れていることはとても良いことだと思います。子どもたちに日本との文化の違いを感じ、幼いうちから海外に対してもオープンマインドになってもらうことで協調性を伸ばしながら内弁慶から自主性も育めるようにさまざまなコンテンツを用意しています。

 

■保護者との接し方は?

 可能な限りサッカースクールに保護者も見学してもらうようにお願いしています。サッカースクールを通じて、我々が子どもたちに対してどうアプローチしているかを保護者にも感じてもらいたい。アプローチの内容は社会性やメンタル面、リズム感など様々ですが、アプローチの最終目標は子どもも大人も人間力を高めることです。我々は子どもが泣いても、わがままを言っても笑顔で対応します。それは子どもが今一番したいことがそのような行為となって表れているからだと思っているからです。保護者は初見では何を教えているんだと我々に注意することもしばしばありますが、我々の活動をずっと見てもらうことで最終的には理解していただいています。我々は大人として、子どもに対して喜怒哀楽をしっかり伝えます。子どもに対しては怒ることはありません。1人の人間としてしっかり理由を説明して納得してもらいます。サッカーやマインドに関して日本との違いを感じていますが、我々の思想を保護者にも感じてもらうため、保護者とチームはより近い関係でいたいと思っています。子どもの変化を保護者にも感じてもらいたいと思っています。

 

■サッカースクールを通じて子どもたちの変化は?

 目に見える効果としてはグループ内でリーダーシップを取るようになったり、泣かなくなったりしたことではないでしょうか。しかし我々の目標はこの活動を通じて人間として成長したかどうかです。

 子どもたちが皆Jリーグの選手になれるとは思っていません。しかし、少なくとも人間として成長したと言える育て方を我々は実行していると思っています。

 長期的に見て今の子どもたちが10年後に社会に出たときに我々が予想していなかったようなすばらしい大人となって社会で羽ばたいてくれたら良いと思っています。

 

■今後はどのように活動されますか?

地域に深く入り込んでいきたいと思っています。今は小牧市がメインですが、今後は違う地域でも活動の幅を広げていきたいと思っています。

また、グランドの外に出て我々の取組みの普及活動ができればと考えています。

 

(文責/町田隆義)

 

その55 ポランの広場in陶(すえ) (2016 JUN. ちもんけん VOL.95)

NPO法人ポランの広場in陶 理事

臼井 重喜 さん

 名古屋城付近からの基幹バスルートは国道363号を通っています。この道を車で東に約1時間20分、瀬戸から急坂を多治見に登り、土岐を経て、岐阜県瑞浪市陶町に到着します。そこで地域の活性化を目指して、農園や体験メニューを進めている臼井さんを訪ねました。臼井さんは、私が駆け出しの頃、瑞浪市総合計画策定などを担当し、その後、旅行会社経営、市会議員に就かれ、地元にNPO法人ポランの広場を設立して、地域の人々の交流や元気な暮らし、交流人口の創出に挑戦なさってきました。

 ポランの広場での催しにも参加しましたが、地元や遠来の参加者の方々と少し汗を流しながら会話し、ピザや食事を楽しみ、起伏のある土地を散策することは、とてもリフレッシュすることができました。

 

■30年振りにご自宅におじゃました訳ですが、回りの様子が一変しましたね。

 ここは、体験工房「しあわせの杜」と呼んでいます。お越いただく皆さんや、地域の皆さん、子ども達の交流の場で、食事を作って楽しむことができるように建てました。あの窯はピザを焼けるようにと2度自作しましたが思わしくなく、県の陶磁器試験場の元場長の指導で作りました。

 川向こうの土地は重機を使って造成しましたが、素人仕事だったので、大変でした。ハウスは2重構造利用で、下層でイチゴ、上層でブドウを育てています。また、各務原市の事業者からトレーラーハウス3台の寄付を受けました。今年中には、ログハウスが1棟建ちます。

 

■ポランの広場を作ってみたきっかけは、どういうことですか。

 瑞浪市職員から市会議員に転身し、4期務めて引退したところです。ポランの広場は平成13年に地域の有志に声をかけて協議会をつくり、意見交換をしたのがきっかけです。陶町は、陶磁器の産地地として、往時には「瑞浪市は陶で持つ」と言われました。けれども、工場が廃業していき、陶の人口はピークの時より2千人以上も減ってしまいました。そこで、高齢者の農業技術と無償で借用可能な農地に活路を見出そうとしたのです。農業を通じて地域の高齢者が元気に、子ども達の農業体験と食育にも貢献したい、加工品も作って地域が収益を得ていくという目的で始めました。

 

■農地や施設が方々にあるのですが、人手はどうしていますか?

 ちょっとした作業は、地域の団体やお年寄りやボランティアの皆さんにも手助けいただいています。今では約1haほど耕作しています。NPO法人を平成18年に設立し、まとまった作業は、NPOの関係者や協力団体で実施します。NPOにする前から、社会福祉法人や小学校、長寿クラブ、食品会社や中京学院大学中京短期大学部に協力いただいています。

 

■これからの課題はどうお考えですか?

 まだまだ収益を上げるまでにはなっていません。毎年のように国や県の助成金に手を挙げています。来訪者は、今のところ口コミやフェイスブックなどで情報発信して、よそからも来ていただいています。その時、地元の人にも協力してもらって収穫や食事をしようという催しも組みます。農産物の加工所を計画していますが、資金確保が大きなハードルです。今のところ、川上屋さんと商品開発を行ったりしてきましたが、自前で加工・販売することに挑戦するつもりです。

 こうして、地域の農地・空き家などを工夫して活用し、各種農産物の生産、農産物の加工、農業体験、クラインガルテン、民泊など実施し、雇用を創出しようと考えています。その素地ができつつあります。ぜひ、若い方々にもフェイスブックに登録いただき、応援していただくとありがたいです。

 

ポランの広場in陶 

岐阜県瑞浪市陶町水上267-1

携帯 090-4187-5309

https://www.facebook.com/ポランの広場-in-陶-383072491731430/

 

(文責/田辺則人)

 

その56 東栄町体験型ゲストハウス danon (2016 OCT. ちもんけん VOL.96)

体験型ゲストハウス

金城 愛 さん

 愛知県北設楽郡東栄町で、「暮らすように遊ぶ」をコンセプトに築150年の古民家を利用した体験型ゲストハウス(だのん)を2015年4月にオープンした沖縄県出身の金城愛さんに話を伺いました。

 

■東栄町で体験型ゲストハウスをはじめたきっかけは?

 2012年に愛知県の事業「あいちの山里でくらそう80日間チャレンジ」に参加し、東栄町で80日間の期間限定で暮らしていました。その任期終了後、201年からも、地域おこし協力隊として引き続き東栄町を中心に2年間活動してきました。その中で、都会の人がいきなり空き家に移住するのは大変なので、若者が気軽に来ることができる場所、地域の人と都会の人との交流の場があったらいいなと考え、宿泊客と地域とを結ぶ場となる体験型ゲストハウスをオープンさせました。

 

 この家は10年近く空き家だったのですが、大家さんもこの古民家を活用することに協力的で、トイレや洗面所など、部分的な改修も行ってオープンにこぎつけました。

 このゲストハウスは8畳の和室2間で、男女別の相部屋で、キッチン、お風呂、トイレなどはすべて共同利用となっています。

 

■開業にあたっての苦労は?

 開業にあたって一番苦労したのは、許認可の問題です。保健所や消防などの許可で苦労しました。また、「100㎡の壁」です。ゲストハウスを運営するためには旅館業法における「簡易宿所」という営業許可が必要ですが、この簡易宿所の許可を取得するためには、建築基準法に基づいて建築物の「用途」を正しく申請しなければなりません。申請にあたっては書類や図面作成などの作成が必要になり、費用面からも大変な負担です。しかしゲストハウスとして利用する床面積が100㎡未満なら用途変更の確認申請が必要なく、ゲストハウスに転用することができるのです。そこで、ここでは100㎡未満のゲストハウスとして、泊まる人数は制限されますが、コストをあまりかけずに開設しました。

 

■どのような方が宿泊されますか? 

 宿泊客は20歳代から30歳代が多く、全国から訪れています。ホームページ(http://danon-toei.com/)を見て来た方が多いですが、最近は雑誌「自遊人」に掲載されたこともあり、それを見たお客さんが増えています。

 交通手段も自家用車で来る方、電車とバスを乗り継いで来る方、最近は自転車で来る方も増えています。さらに最近はリピーターも増えてきました。

 

■ゲストハウスではどのような体験ができますか? ゲストハウスは夕食と朝食の食材代を含めて1泊5,500円(体験料は別途)です。

 旬の食材を使って宿泊客の方と一緒にご飯を作ったり、地域の方と農業体験などを行ったりと、宿泊客の希望に応じて山里の魅力を堪能できる、暮らすように遊ぶ場を地域の方々と一緒に提供しています。

 

■今後の展開はどのように考えていますか?

 ゲストハウスの運営が軌道にのってきたら、短期のシェアハウスにもしていきたいと考えています。シェアハウスに住みながらゲストハウスの手伝いをしてくれるヘルパーにも住んでもらいたいとも考えています。

 また、役場と連携して、空き家や仕事の情報を共有し、移住相談できる一つの窓口にすることができないかとも考えています。

 

■最後に

 現状、このゲストハウスには宿泊客だけでなく、地域の人も一緒に集い、交流する場にもなっています。今後は町内外の人が一緒になって地域を盛り上げていけるよう、地域づくりの拠点として、色々な人材の発掘・育成の場、様々なアイデアの創造の場、ネットワークづくりの場として、何か楽しいことが起こるワクワクするような場になっていくことを期待します。

 

体験型ゲストハウス danon

住所 愛知県北設楽郡東栄町本郷下前畑6-1

TEL. 0536-76-1860

MAIL. info@danon-toei.com

URL http://danon-toei.com/

 

(文責:主席研究員  藤正三)