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バックナンバー H26.第1.2.3講

第1講 テーマ 「人口減少・大災害のリスクに備えた都市の未来戦略」

2014年5月20日(火)14:30~16:30 愛知芸術文化センター12階 アートスペースA

「人口減少・大災害のリスクに備えた都市の未来戦略」

豊橋技術科学大学学長・日本学術会議会長 大西  隆 氏

 本日は、東日本大震災を始めとする大災害のリスクについて整理し、長期的な人口減少社会を見すえた中で都市の未来戦略をどう考えるかお話ししたい。最初に東日本大震災の教訓と減災思想について、我が国で従来からとられてきた防災という考え方について東日本大震災を通した検証が急務です。私は、減災という観点から人命は最優先に守るという観点から防潮堤、防波堤等の防災施設と合わせ、災害を前提としたまちづくり、避難、これら全部が必要であると考えます。また、懸念される南海トラフ巨大地震については、津波による被害と合わせ、揺れや倒壊に対する対策も怠ってはなりません。

 次に、我が国が抱える大きな課題のひとつに、人口減少社会の流れが上げられます。推計によると、100年後には明治時代の終わり頃と同程度の人口規模が想定されるに止まらず、長期的には人口がゼロに向かって行きます。また、例え合計特殊出生率が回復したとしても、30~40年、人口減少社会は続きます。一方で、都市が拡散しているという都市政策に関連する課題があります。こうした中で富山市が進めているコンパクトシティが注目されています。富山がうまくいっているのは、一か所の拠点に集約するのではなく、鉄道駅周辺にいくつもの核をつくるという、選択肢をたくさん設けていることが大事です。

 「人口減少に対してどう集約化していくか」、「安全なまちをどうつくるか」がこれからの都市政策の基本となると考えます。その切り口として、「還流する田園」、「地域の産業力」、「低炭素化」、「中心市街地の活性化」の4点を提起させてもらいます。

第2講 テーマ 「コミュニティを主体とした地域の防災力の強化~ 地区防災計画の策定を通じて」

2014年6月11日(水)13:30~16:30 愛知芸術文化センター12階 アートスペースA

「コミュニティを主体とした地域の防災力の強化~地区防災計画の策定を通じて」

 

兵庫県立大学防災教育センター長 室崎 益輝 氏

 今日は自治体の地域防災計画と合わせて、日常生活圏をベースとする隣近所のコミュニティレベルの防災計画がなぜ重要なのかお話ししたいと思います。従来の防災は自治体が中心となって進めるものとされていましたが、阪神淡路大震災等において、場合によっては公助よりも自助、共助が大きなウエイトを占め、公助の限界が明らかになっています。公助、自助、共助が一体となった仕組みとして、トップダウンとボトムアップが連携した流れや計画(地区防災計画)を作ることが必要です。従来縦割りで取組まれてきた災害弱者対策、津波対策、消防団の役割など、いずれも最後はコミュニティに集約されます。

 減災は、リスクを知った上でいかに人命を守るかという思想です。具体的には対策の足し算と被害の引き算の合わせ技として被害を最小化することだと考えます。一例として、ハードウエアは公共が主体となって対応するものの、ソフトウエアやヒューマンウエアなどは範囲が小さくなるほどコミュニティの役割が大きくなります。

 地域での取組みとして、災害情報の収集と伝達を図るコミュニティ減災情報システムの整備、地域の各主体が連携した減災協働の仕組みづくり、地域レベルでの減災環境整備、減災教育の展開が必要です。また、地区防災計画を絵に描いた餅にしないため、訓練等を通じて習熟し、検証することが重要です。

市民が主体となって策定した地区津波防災まちづくり計画」

静岡県牧之原市政策協働部協働まちづくり専門監 加藤  彰 氏

 牧之原市では、15㎞の海岸線に沿って立地する5地区に全市人口の約8割が居住しており、巨大地震では甚大な被害が想定されています。こうした背景の中、この5地区において市民が主体となって地区津波防災まちづくり計画を策定しました。

 牧之原市では、町村合併後の自治会組織のあり方が議論され、10小学校区ごとの地区自治推進協議会が発足、うち沿岸5地区で地区津波防災まちづくり計画が策定されました。地区自治推進協議会は地域の絆づくりを念頭に幅広い住民層の参加によって発足したものであり(牧之原市自治基本条例)、計画づくりを住民の主体的参加のもとに策定できたと評価しています。計画づくりの当初は避難タワーなどハード施設の整備を行政に求める声が大きかったものの、住民だからできることについて検討をしてもらうよう方向を変えていきました。計画づくりを通して、地域の専門家たる市民が主体的に計画づくりにかかわることによって、施策の多くを行政に頼るという、従来の行政と住民の関係を住民側が再考する転機となったと思います。

第3講 テーマ 「地方自治体の業務継続計画の策定と運用 ~ BCPからBCMへ」

2014年6月30日(月)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室

「地方自治体の業務継続計画の策定と運用 ~ BCPからBCMへ」

東北大学災害科学国際研究所(人間・社会対応研究分野)教授 丸谷 浩明 氏

 突発災害の発災時に行政機関の業務の継続をどのように図るかが行政機関のBCPのポイントです。行政機関が被災すれば、平常時の業務を継続することは困難であり、優先業務の選定、発災直後の業務レベルの向上と業務立ち上げ時間の短縮等を受援も含めて対応が必要となります。

従来の防災計画は、応急・復旧業務や復興期の業務などを定めたものであるのに対して、BCPでは、行政機関自らが被災した時に災害後優先すべき業務、継続・早期復旧が必要な業務を定めます。このため、重要な業務を絞り込んで優先的に復旧するために不可欠な人材、設備などの供給元の二重化を始め、発災後に実施すべき対応・手順を決め、重要業務を許容期限までに復旧するのがBCM(業務継続マネジメント)です。業務拠点が防災対策の想定を超える大きなダメージを受けた場合、何も対応できなくなってしまう事態を防ぐため、防災対策に加えてBCMが必要です。

 東日本大震災等の教訓を踏まえた有効なBCMとして、業務の継続を図るため代替拠点の確保、代替の人材確保、情報のバックアップ、代替調達先の確保などが指摘されます。そのためには、地域内だけでなく広域の連携、必要な参集人員の確保と安全対策、ICTの活用、業務継続の対応や対策を簡潔な文書にまとめること、訓練の実施と評価・継続的改善が必要です。

「藤沢市におけるICT-BCPの取組みについて」

神奈川県藤沢市総務部参事兼IT推進課長 大高 利夫 氏

 総務省では東日本大震災の経験を踏まえ、災害に強い電子自治体に関する研究会を立ち上げています。自治体の業務継続に初動対応の重要性にかんがみ、ICT-BCPの作成により地域防災計画を始めとする防災対策を含め、業務の継続力を高めることが必要です。

 藤沢市のICT-BCPは、セキュリティ対策として情報資産を守ることです。藤沢市ではセキュリティの対策を進めた結果、BCPになったといえます。多くの自治体では、災害時は地域防災計画に基づいて、大半の職員は災害対策本部にはりつき、自治体の業務継続は残余の人員で対応することとなっていないでしょうか。藤沢市では、BCPを作成し、災害対応業務に先んじて継続する業務を決めています。藤沢市におけるICT-BCPは、地域防災や市のBCP全体を支えるものであり、IT部門のBCPとは別物です。藤沢市ICT-BCPでは、実際の災害時においても機能するよう、確認、対策を立てるためのチェックシートを重視しています。

 BCP、BCM、BCMSの違いについて、BCPは計画書、BCMはPDCAを含む行動、BCMSは有効性の評価といえ、藤沢市では3つをセットのものと考えています。従来から情報セキュリティポリシーを立てていたため、BCPの認証まで一連の流れの中で位置づけています。