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H28.第4.5.6講

第4講  テーマ 「ストック活用によるまちの価値の創造」

2016年7月5日(火)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)

「まちに暮らしとしごとの未来を埋め込む ―リノベーションの世界― 」

東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授   松村 秀一 氏

 人口一人当たりの住宅は、米国0.42戸/人に対して、日本は0.48戸/人と、日本は今や住宅ストック大国です。これまで、建築は住宅と言うハコを生産する産業(ハコの産業)であったものが、より望ましい生活の場を構成・提供する「場の産業」と変わりつつあります。あり余る余剰空間を利用者とどう結び付けるか、建築の可能性は大きく広がろうとしています。建築の新しい仕事のかたちとして、①生活する場からの発想、②空間資源の発見、③資源の短所を補い長所を伸ばす、④空間資源の「場」化、⑤人と場を出会わせる、⑥経済活動に埋め込む、⑦生活の場として評価すること、この7つの視点をリノベーションの軸に据えることが重要です。まちに暮らしとしごとの未来を埋め込むことと=リノベーションは、生活者の組織化とスモールビジネスの集積、職域のクロスオーバーから生まれる付加価値、まちで暮らすことが仕事・自身の仕事の拡張と言えます。

「豊島区リノベーションまちづくり ~ママとパパになりたくなるまち、なれるまち~ 」

東京都豊島区都市整備部住宅課長   小池 章一 氏

 日本創生会議による人口推計で、人口構成などから豊島区は、東京23区中、唯一消滅可能性のある都市とされました。消滅可能性都市から持続発展都市への転換を目指す取り組みが、「豊島区リノベーションまちづくり」です。豊島区の住宅の多くは小規模かつ老朽化の比率が高く、空き家も多い状況です。豊島区のリノベーションまちづくりは、①単なるリフォームや空き家対策でない、②民間事業者による自立的な経営、③地域を巻き込み、地域の課題を解決し、地域の価値を高めることを基本としています。子育てしやすく住み続けられるまち、アーティストや起業家が活動しやすいまち、外国人も楽しめるまちを目指しています。まちを変える仕組みや暮らしづくりの担い手を支えるため、まちづくりの各段階において、官民学ネットワーク、遊休不動産情報提供、家守会社の育成・認定、規制緩和・各種支援制度などを戦略的に実施しています。

第5講 テーマ 「自殺対策について、自治体ができること、すべきこと」

2016年7月22日(金)13:30~16:30 オフィスパーク名駅プレミアホール403ABC

「誰も自殺に追い込まれることのない社会へ ~自治体の責務と役割~ 」

NPO法人ライフリンク 代表   清水 康之 氏

 我が国の自殺率は世界8位、アメリカの2倍、イギリスやイタリアの3倍と多く、現代日本社会において、自殺は国民的リスクと言えます。国民の社会的立場や職業などにより、自殺に至る要因は様々であり、多くの要因が複雑に連鎖しています。自殺を減らすための有効な方策とは、当事者本位の生きることの支援であり、人がそうした状況に陥ることのない社会を創ること。自殺対策は、地域・社会づくりでもあります。こうした背景で生まれたのが、自殺対策基本法です。

 自治体の自殺対策の一例として足立区の取り組みを紹介しましょう。①関連団体とのネットワーク強化、②「気づき」のための人材育成、③ハイリスク群に対するアプローチ、④区民への啓発・周知の4本柱で問題解決へ導く活動を行っています。自殺対策(生きる支援)が、地域づくりの絶好の切り口になります。新しいつながりが、新しい解決力を生みます。生き心地のよい社会づくりが目標です。

「東京都荒川区における自殺対策」

東京都荒川区福祉部障害者福祉課こころの健康推進係   与儀 恵子 氏

 荒川区の自殺予防事業は、①ゲートキーパー研修を始めとする人材養成、②庁内部課長連絡会・精神保健福祉連絡協議会などネットワーク連携、③自殺予防講演会・ホームページ充実など普及啓発、④救急医療機関と連携した自殺未遂者支援、⑤若年世代の自殺予防相談など若年層への支援を行っています。とくに自殺未遂者支援において、地元医療機関と情報共有を行うと共に、就労支援・居場所の紹介、障害者福祉サービスの利用、医療・生活保護・弁護士などによる寄り添い型支援、こころの健康相談、訪問・面接など、関係機関と連携し、ネットワークで支援。また、若年世代への支援として、教員向けゲートキーパー研修、インターネットによる情報提供、NPO法人Bond Projectによるパトロール・声掛け・日暮里相談室での相談を行うなど、区では全庁的に自殺予防に向けた「生きる支援」に取り組んでいます。ンなど、着実な実績を上げています。

第6講 テーマ 「地域をつくる人をつくる! 地域課題解決型キャリア教育」

2016年9月29日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)

「地域をつくる人をつくる! 域学連携の可能性と今後の展開」

慶應義塾大学SFC研究所所長・総合政策学部教授   飯盛 義徳 氏

 地域づくりにおいて大切なのは、人づくりです。私のゼミでは、「地域の元気の処方箋」(効果的なプラットフォーム設計)を探求しています。毎年、全国各地を訪ね、地域の課題発見、元気プロジェクト活動を展開、最終成果としてまとめ、多くの地域で活動が引き継がれています。地域イノベーションで大きな役割を果たしているのがファミリービジネスであることに着目、その地域貢献、持続性などを主な研究テーマとしています。

 地域づくりの要点は、効果的なプラットフォーム設計にあり、そのための地域資源(能力)の結集、新しいつながりを生む環境づくり、参加のインセンティブづくり、自発性の醸成、機動的な対応ができるオープンなインフラ整備などへの工夫が必要です。域学連携は、柔軟な境界設定による外部の視点、自由な発想や思考、多様な資源の結合などを通じ、実践の萌芽、地方創生への可能性を秘めています。

 

「まちにつなぐ、まちで育つ、まちが変わる」

岐阜県立可児高等学校教諭   浦崎 太郎 氏

 今、地域と高校との連携が問われています。社会の高度分業化は、子どもたちの主体性の低下、学力の低下、地域との分離、ひいては地域・地方の衰退につながる危険性をはらんでいます。高校・大学を通じ、地域課題を発見・解決する学習活動へ参加することで、社会形成指向を高め、地元に対する愛着や当事者意識や地元で生きるためのスキルを深めることで、社会人となって地元に戻っての活動を通じて地域の再生につながることが期待されます。高校にとって地域が必要だけでなく、地域が生きる上でも高校は必要であり、高校と地域をつなぐ仕組みづくりを通じて、地域の5年後を変えることができます。

 可児高校では、市役所を始め地元関係機関との協働による、多文化共生、子育て支援、防災、地域医療、金融・地域経済など、具体的な地域課題解決プロジェクトを用意しています。継続性を保つため、プロジェクトは地域主体による連携が必要です。