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H29.第10.11.12講

第10講 テーマ 「シティプロモーション・失敗しないための戦略」

2018年1月22日(月)13:3016:30 昭和ビル 9階ホール

「シティプロモーションの新たな展開」

東海大学文学部広報メディア学科教授  河合 孝仁 氏

 

 まちづくりは、行政だけが頑張ってできるものではありません。自分事として、まちに関われる人を増やすことが重要です。地域推奨量+地域参加量+地域活動感謝量の総和を私は「地域参画総量」と呼んでいます。耳触りのよいロゴづくりや参加者数ではなく、地域(まち)にマジになる人をどれだけ増やせるかが、シティプロモーションの目的だと思います。行政は、誰が幸せになれるまちか的確なデザインを行い、域内外の住民(関係人口)が自発的に動きたくなる地域の土台、仕組みをつくることが大事です。

 地域の魅力を語ることのできる人の多くは、自分は意味のある人間だと思っています。彼らが地域の魅力を発信、共有、編集、磨き上げてブランド化する地域魅力創造サイクルと合わせ、各段階に応じたメディア活用を行いながら、認知獲得、関心惹起、着地点整備、行動促進へ展開します。我々が求めるのは、顧客としての住民ではなく、このまちを一緒につくろうとする参画者であり、行政は信頼性やマネジメント力で支える役割があります。

「じっくり市民を巻き込む富士市のシティプロモーション」

静岡県富士市総務部シティプロモーション課 上席主事 大道 和哉 氏

 

 平成25年策定の都市活力再生ビジョンにおいてシティセールス強化が取り上げられたが、当時の担当者の認識は、富士市のメディアでの取り上げ回数等にあったように思う。28年4月、市民参画総量を増やすブランドメッセージ大作戦を開始。キャッチコピーづくりではなく、「発散」→「共有」→「編集」の地域魅力創造サイクルワークショップを通じて、富士市がめざすまち、オンリーワンの強みを活かす経営理念を作る姿勢で臨みました。

 さまざまなレイヤーの議論を経て決まったブランドメッセージが「いただきへの、はじまり 富士市」。富士市の魅力を知ってもらう「認知」、富士市を好きになってもらう「信頼」、シビックプライドを醸成し魅力を語れる市民の増加「愛着」という3つのステップで、市民参画総量の増加を図っています。市民の信頼、共感を得るためには、じっくり(焦らない)、巻き込む(役所だけでは完結しない)ことがポイント。まちの魅力を語る職員、中学・高校生対象のワークショップ、フェイスブックの活用等も実施しています。

第11講 テーマ 『女性の視点を生かす地域づくり~多様な人々に暮らしやすいダイバーシティ都市を目ざして』

2018年2月5日(月)14:001630 TKPガーデンシティ栄駅前 バンケットホール

「女性の視点を生かす地域づくり~多様な人々に暮らしやすいダイバーシティ都市を目ざして」

  名古屋芸術大学芸術学部芸術学科 准教授 萩原 なつ子 氏

 

 

今日、地域活性化・地方創生を進めるための重要なキーワードとして、新しい公共(共助社会)、連携・協働、男女共同参画が挙げられます。背景として、社会的課題の多様化があります。しかし現実は、同質のものが余りにも多い社会です。ダイバーシティとは、同質の社会から多様性のある(認める)社会への転換を図ること。一方、国や市町村による公共サービスの質と量の拡大も困難な状況です。多様なサービスには、多様な主体が参加・参画して地域の課題に取り組むことが必要です。

 

 地域づくりにおいて、女性のニーズに合うこととは、社会の皆に優しく、ユニバーサル化することとも共通します。

 

 平成265月、日本創生会議が発表した「消滅可能性都市」として、東京23区で唯一指摘されたのが東京都豊島区。暮らしやすい、住み続けたいまちであるためには、区が進めてきた女性に優しいまちづくり施策と重なる部分が多いようです。このため、女性の視点から豊島区の未来を考えるワールド・カフェ方式の「としま100人女子会」を開催(同年7月)。これを受け、女性の意見やニーズをまちづくりのプランとして区に提案する、2030歳代の女性を主体とする「としまF1会議」を設置。6チームに分かれた会議からは、子育て、まちづくり、ワークライフバランス、豊島ブランドなどについて、具体的な施策案が同年8月から5ヶ月間の短い間に提案され、次年度の区の施策として予算化、動き出した。

 

 消滅可能性都市からの脱却は容易ではないが、F1会議の提案は、区役所だけに委ねるのでなく、区民や区内の事業者もともに「住みやすい、暮らしやすい」地域づくりの担い手、主体という当事者目線がダイバーシティ都市づくりに大切です。

第12講 テーマ 「人口をV字回復させた都市戦略」

2018年月16日(金)14:001630 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)

「 地域の魅力づくりと文化・アートの役割 ~ これからの文化行政の可能性」

 兵庫県明石市 市長 泉 房穂 氏

 

 明石市では、人口を始めさまざまな指標のV字回復が続いています。今日の自治体経営には発想の転換が必要です。時代の変化を読むこと、まちの特性を知ること、市民ニーズに応えること、市民目線からの施策展開などがポイントです。地域の特性や都市機能を把握し、どんなまちにするか明確なビジョンが必要です。明石市は、産業や遊びなど全ての機能を備えた都市を目指すことなく、「暮らすこと」、「育てること」に特化し、子どもを核とし、セーフティネットの充実を重視したまちづくりを選択しました。人口30万人、赤ちゃん出生年間3,000人、市立図書館の貸出し年間300万冊という「明石のトリプルスリー」をまちづくりの目標として設定、その具体化の取組みとして、子どもを育てやすい、暮らしやすいまちづくり、納税者となる中間層の転入促進、市民ニーズに応える施策等に取り組んでいます。

 明石市では、3つのことに重点的に取り組んでいます。①頑張るこどもたちをまち全体で応援」し、「ひとりひとりの子どもに寄り添う」ことを重視しています。こども医療費の無料化、第2子以降の保育料の無料化、教育環境の充実、図書館の駅前立地など本のまちの推進、児童扶養手当の毎月支給、全小学校区へのこども食堂の設置、児童相談所の設置などに取り組んでいます。②「障がい者が暮らしやすいまち」づくりは行政の責務と考え、手話言語・障がい者コミュニケーション条例、障がい者配慮条例、筆談ツールやスロープなどに対する公的助成制度の整備など、「誰もが暮らしやすいまち」を実現する取組みを進めています。③「被害者支援と更生支援は車の両輪」であり市民に近い自治体が担うとの考えのもと、犯罪被害者等総合支援条例や更生支援ネットワーク会議などを設置し、自治体が寄り添って支援しています。

 お互いに助け合い支え合うことが“あたりまえ”の社会づくりを、明石から発信していきたい。明石市でできることは、他の自治体でもできます。市町村職員の皆さんには、真摯に聴く姿勢、本質を見抜く力、諦めない勇気を期待します。