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R01.第1.2.3講

第1講 テーマ『選ばれるまち・沈むまちの分岐点』

2019年5月13日(月)14:00~16:00

選ばれるまち・沈むまちの分岐点

株式会社東京情報堂 代表取締役 中川 寛子 氏

 皆さんが一喜一憂される各種「住みたいまちランキング」等の順位は、まちのイメージや期待値が反映しがちです。つまり、多くのプラス情報が発信されるまちが選ばれやすい。医療費助成制度の充実による子育てしやすいまちの情報発信などがその一例です。しかし、限りなく多様化する住民のニーズに対して、行政サービスの拡充は困難だと思います。今後は行政のほか、住民や民間事業者の主体的な取り組みも求められます。

 住みたくなるような面白いことが起きているまちと、そうでないまちの違いを出す上で、以下のような取り組みの有無がこれからのまちづくり求められています。①まちが好きな巻き込み型のキーパーソンたる公務員の活動、②公園や水辺など公共空間を上手に使うこと、③地域が栄えていた頃を知っている30代~40代の若い人を巻き込むこと、④伝えようとするものを視覚化するソーシャルデザインの意味を理解していること、⑤大きな開発と合わせ小さな箱や隙間を作り活用すること、⑥単一な機能のまちに多くの機能をひとつの場に用意すること、⑦小さな取り組みの経験をまちに広げること、などの取り組みがキーポイントです。

 

第2講 テーマ『都市における農地と空き地の活かし方』

2019年6月5日(水)13:00~16:30

都市における農地と空き地と空き地の活かし方

東京大学大学院新領域創成科学研究科 講師 寺田 徹 氏

 都市における農地と空き地は同じ土地資産ですが、法制度上の扱い、農地・住宅地として求められる性能、土地所有の特性、代替性などが異なります。それぞれの特性を踏まえた対応が必要です。

 市街化区域内の農地(生産緑地)は、その多くが2022年に30年の期限を迎える生産緑地の年問題を控えています。都市農地は市街地における緑地機能を補うほか、食糧生産の上からもその価値を再評価し、生産緑地法等の指定面積要件の緩和や特定生産緑地の30年から10年の見直しへ変更、所有と営農の分離などの改正が行われています。市街地外縁部に分布する都市農地の役割が変わろうとしています。

 一方、市街地人口が減少する中で、そのコンパクト化は、スプロールした市街地の乱開発を防止し残された空き地や樹林地の適正管理と利用が課題です。地主に代わって、市民団体等が空閑地等の暫定利用を行う千葉県柏市の取り組みはその一例です。

 

『カシニワ』から『空き地』を活かすまちづくりへ

千葉県柏市都市部住環境再生室 茶野木 昌 氏

 千葉県柏市は、少子高齢化、地域間人口の偏在、柏駅の集客力低下、公共交通不便地域などの課題を抱えています。立地適正化計画では、「地域間の人口構成の偏在を改善し、持続性あるまち」をまちづくり方針とし、市街化区域で個別開発が連鎖する地域では、地域の空き地や樹林地などを活かしたまちの空間、道路空間の創出を目指しています。

  「カシニワ制度」は、市民団体等が手入れ、利用しているオープンスペース(樹林地、空き地等)、一般公開可能な個人の庭を「カシニワ」と位置づけ、みどりの保全・創出、人々の交流の増進、地域の魅力アップを目的に市がマッチングや助成する制度です。平成30年度現在281件が登録されています。

 また、平成29年には都市緑地法改正に伴いNPOや企業等の民間が主体となって空き地等を利用して公園と同等の空間づくりを促進する「市民緑地認定制度」を創設しました。

第3講 テーマ『自治体におけるAIの活用~今後の発展と導入可能性分野

2019年7月3日(水)13:30~16:30

自治体におけるAIの活用~今後の発展と導入可能性分野

早稲田大学政治経済学院 教授 稲継 裕昭 氏

 コールセンターでのワトソン導入、新聞社のAI利用による決算短信作成など、民間企業におけるAIの活用が急速に進んでいます。とくに2010年代に入ってからのCPUの飛躍的向上、機械学習の進化の進展などが顕著です。

 我が国の自治体でも住民移動や地方税、保健・医療、児童福祉・子育て、高齢者福祉・介護、財務・会計、組織・職員などの分野でAIやRPAの導入を始める事例が増え始めています。具体的な活用例としては、住民問合せチャットポット、議事録等の作成、定型業務でのAI・RPA活用、災害情報要約システム、道路損傷度自動判定、保育所マッチングAIなどがあります。自治体業務におけるAI・RPAは、人間から機械への代替(時間短縮)、人間ではできなかったことを機会がやる(付加価値)があります。このため、ベテラン職員の定型的な仕事や低レベルの知的作業はAIに置き換えるなどして、住民福祉の増進を図るべく、職員の能力を最大限発揮して、最小経費で最大効果を上げることが必要です。

対話型人工知能による自治体用「問合せ対応サービス」の実証実験ー成果と今後の対応

静岡県掛川市企画政策部企画政策課  縣 直弥 氏

 掛川市は、多様な働き方実現による人材確保、勤務時間・業務削減によるコスト低減を働き方改革の目標としています。業務の可視化を行いAIにより効率化できる業務、人でなくてはできない業務に整理。現状は、多様な市民の問合せニーズに市の広報誌、ホームページSNS等では十分伝わっていません。職員の負担軽減やベテラン職員のノウハウ継承、外国語対応、分野横断的な情報提供などを行うため、対話型「AIスタッフ総合案内」の実証実験を2016年9月(子育て分野18年3月(行政情報全般)に行いました。

 実証実験の結果、作業軽減効果の定量的な検証の不十分、市ホームページとの繋がりの改善などの課題はあるものの、約90%の市民(N=111)、行政職員(N=3642)が本サービスの継続を希望しています。今後、チャットポットの内容を高めるため、Q&Aデータの質と数を高めること、ホームページなど既存の仕組みを活かすことなどが必要です。

AIを活用した自立支援促進事業

愛知県豊橋市福祉部福祉事務所長長寿介護課 戸崎 真孝 氏

 豊橋市では2010年から2025年までに総人口が2万人減に対し65歳以上人口は2万人増と推計しています。とくに団塊世代の高齢化に伴う後期高齢者の増加は、要介護、要支援者の増加=介護費用の増加を意味します。

 2017年度から、健康寿命延伸、介護人材確保、介護給付費抑制を目的にAIを活用した実証研究を始めました。自立支援の普及啓発とAIケアプラン作成支援システム(MAIA)によるケアプラン作成からなります。過去8年分の要介護認定申請に関するデータ及び給付実績に関するデータを提供、状態の改善したケースをAIに学ばせた一次のケアプラン作成、これに本人の意向や経済力などを加味してプランを作成します。MAIAはプランの提案だけでなく1年後のADL・IADL・認知症状等の変化予測も可能。状態変化実績は、実証研究でのサンプル数は少ないものの、要介護2まではAIの方に一定の改善効果がみられた。一方、経験の少ないケアマネは、MAIAを十分使いこなせないことが今後の課題です。