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バックナンバー VOL.87~89

河合幸男著『鎌倉街道』を手にして

 鎌倉街道や古道に興味がある方、地域の歴史・往時の様子を楽しむ方、ウォーキングを楽しむ方、観光ガイドなど地域を紹介する活動に取り組む方にお勧めの名著・ガイド

 

■歴史を探り目で確かめる楽しみ

 過去の歴史の跡を掘り起こして情報発信することや、それを楽しむ行為そのものは、地域を再発見して資源化することにつながる。

 今から15年程前、名古屋市立北図書館に今も設けられている「街道」本のコーナーで、「鎌倉街道」とタイトルがある本をいくつか手に取ってみて、「一宮の鎌倉街道跡を探しみよう」と思いついて、河合さんにご相談した。具体的な取組みに際しては、河合さんにお骨折りいただいて、仲間に声をかけた。玉ノ井(名鉄尾西線)から木曽川駅(JR)までを歩く催し、真清田神社で開催された市民イベント「杜の宮市」に合わせたボーイスカウトとウォーキングなど、古道探しと交流に参画したことはなつかしい。

 その時、たいした発見ではなかったが、寺社を結んでいる道が古道の可能性が高く、また、耕地整理や土地区画整理事業が行われた時にはおそらく古道は忘れられており、跡形もなくなった部分が多い。

 それから5年程度で、私は鎌倉街道という謎が多い歴史の池の中から抜け出したが、河合さんはホームページ「まちもよう」を開設して、地元一宮市のまちづくりや、鎌倉街道について情報発信を重ねてきた。河合さんは昨年ぐらいから猛烈な勢いで、今までの蓄積を世に知らせるため、書籍『鎌倉街道』を出版なさったのである。

 本書は地域に埋もれたり、時代ごとにばらばらに紹介されていた「時の宝」の紹介、分りやすい情報発信を行う試みである。写真も豊富に掲載されており、気軽に出かける時に楽しめるガイドである。また、「十六夜日記」、や「海道記」、「東関紀行」と、中世の紀行文が道々で紹介されている。私はこれらの紀行文については名称程度しか知らず恥ずかしい限りであるが、古文にふれながら、当時の旅人の想いを楽しむこともできる書である。

 『鎌倉街道』で紹介されている地域は、米原市柏原の「近江と美濃国境は小さな溝だった」という「寝物語の里」から始まり、「熱田神宮」まで「下る」ものである。河合さんのお住まいの一宮市を真ん中にして、往時では旅をすれば2~3日の旅程の地域である。

 

■寝物語の里を初めて訪ね

 さっそく、「鎌倉街道」を片手に、「寝物語の里」がある関ヶ原町今須に向かった。『鎌倉街道』で紹介されている通り、旧国境と岐阜・滋賀県境を示す道標の脇、旧国境は本当に小さな溝である。(なぜここが国境になったのか)と想像してみるのは楽しい。

 次に不破の関跡に向かい、不破関資料館を訪ねた。関は、東山道あるいは鎌倉街道、中山道という古道の左右一帯に砦さながらに土塁がめぐらされて、建物が多く建っていたらしい。関は、壬申の乱の以降に設けられた。この資料館からわずかに下った藤古川が、壬申の乱の激戦地であったようである。『鎌倉街道』で紹介されている壬申の乱の遺構は関付近に多く、全て確かめるには余裕をもって歩くか、史跡ガイドさんをお願いする必要があろう。

 不破の関を描いた小説の場面では、吉川英治「私本太平記」の名場面を思い起こす。足利高氏が幕府の命令で西上しながらも反乱を決意し、不破の関で佐々木道誉に足止めをくらった。そして、道誉の館に単身乗り込み、反乱への加担を誘う直談判に及ぶ。

 不破の関のゾーンと少し重なっているはずだが、鎌倉街道を下ると関ヶ原の古戦場が広がる。『鎌倉街道』には、徳川家康が最初に陣を敷いた桃配山が紹介されている。桃配山に対峙して石田三成が陣を構えた笹尾山へ寄り道をしてしまった。笹尾山は歴史小説などで描かれ尽くされている古戦場を見渡すことができ、西上軍を迎え撃つには絶好の位置であったのだが……。

 夢物語の里、不破の関跡、笹尾山と車で移動して少し歩くだけでも、歴史の宝庫に出くわして2時間を要した。おそらく、河合さんは著作のために、夢物語の里から熱田神宮までと沿道の確認のために、延べ1~2ヶ月は費やされたはずである。

 

■地域の時間軸をどう楽しむか

 『鎌倉街道』には、小栗判官物語を伝えていく「をぐりサミット活動」、伊冨利部神社の「鎮守の杜サマーコンサート」(旧木曽川町)など現在の活動や、竹中半兵衛が黒田官兵衛の子息(長政)を信長から隠して救ったことなどの逸話、稲沢操車場跡地のかつての様子など、近世、現代の紹介も随所に見られる。古代の継体天皇、天武天皇(大海人皇子)という謎に満ちた天皇に因む遺構や場所も興味深い。

 実は、河合さんから「鎌倉街道」の原稿を見せていただいた時、今のまちづくりの情報をもっと組み込んでいただきたいと思った。河合さんご自身が、「歌手・舟木一夫デビュー50周年記念展示会」など、一宮市を情報発信する企画を開催なさってきた。さらに河合さんのホームページ「まちもよう」では、各地の街道愛好家や、まちづくり活動についても紹介されている。河合さんは愛知県ご在職中には、商工行政を手がけられており、一宮の繊維産業はもちろん地域産業にもお詳しい。

 しかし、今回の著作は「十六夜日記」など中世の紀行文も楽しむというコンセプトである。未来に向けて躍動する地域の様子を描き、つくることは、読者自身に対して河合さんが楽しみとして残していただいたと思う。

 市民による手づくりの情報として、河合さんには、熱田神宮より南の鎌倉街道についても執筆いただけることを期待している。

 

 河合幸男「鎌倉街道 中世紀行文 海道記/東関紀行/十六夜日記の舞台を楽しむ」

交通新聞社,(平成26年3月自費出版。定価1,500円+税)

(問合せ先)HP「まちもよう」 

http://www5.ocn.ne.jp/~matimoyo/

メールアドレスkawai99@ruby.ocn.ne.jp

 

(文責:)

地域の進行に役立つ地域連携BCPを考える

◆地域の復興にとって重要な産業の復興

 南海トラフ巨大地震の発生が予想され、各地で防災対策の見直しが行われていますが、最近は大災害後のいち早い地域の復興を図るために、被害の最少化につながる事前復興のまちづくりや企業や自治体のBCPの重要性が認識されるようになっています。

 東日本でもみられるように、地域の復興を進めるうえで、産業を復興することが大きな原動力となります。したがって、特に企業が集積している地区においては、企業の防災対策は、企業自身の問題だけではなく、地域全体の復興を考える上でも重要な課題となります。

 現状の行政の防災対策は、地域住民の生命を守ることを主眼にしており、避難対策ももっぱら住民を対象にしています。企業の対策は、企業の自己責任で対応する問題という認識で、多くの自治体では行政の防災対策の対象になっていません。

 しかし、多数の企業が立地している地区で昼間に地震が発生し、しかも津波が予想され限られた時間内に避難しなくてはならない場合は、避難の対象者は住民よりも従業員の数の方が多くなります。また、企業の個々の判断に任せると、従業員の車や貨物車が集中して大混乱に陥る危険性もあり、その後の産業復興、さらには地域の復興の障害となる可能性があります。

 

◆企業のBCPの実態

 東日本大震災後、防災対策及びBCPに力を入れている企業が増えています。確かに、大企業ではBCPの策定が進んでいますが、中小企業では取り組んでいる企業は、まだまだ少ないのが実態です。さらに、BCPを策定している企業も、親会社や取引先から言われて形ばかりの計画を策定して、実際に役立つかわからない企業も少なくありません。

 また、大企業の場合、多くは本社レベルで策定しており、各地の工場・事業所単位のBCPを有している企業はほとんどみられません。BCPは、初めから完璧な計画を策定することは不可能です。現場レベルで、実際に動きながら試行錯誤を繰り返し、熟度を高めていることが重要になります。その意味では、複数の事業所で工場を持つ大企業では、本社レベルのBCPだけでは、各地の工場・事業所の事業継続の強化にどれだけ効果があるかは疑問であります。

 

◆個別企業の対応の限界

 産業団地等の企業が集積している地区では、従業員だけではなく、様々な取引企業の関係者等が出入りしており、災害が発生し避難が必要となった場合、各企業が持つ避難スペースだけでは収容できないこともあります。

 また、復興に必要ながれきの撤去用の車両及び仮置き場の確保、車両用の燃料の確保、復興に必要なアクセス道路の確保など、個別企業の対応では限界のある課題も多数あります。

 

◆企業間の横のつながりは弱い

 こうした課題に対応するためには、災害時における企業間の連絡・協力体制を整えることが不可欠であります。

 しかし、企業は秘密事項を多く抱えているために、同じ地区内にあっても企業間のつながりは極めて弱いのが実情です。日頃のつながりが弱ければ、災害時における協力体制をスムーズに構築することは難しいと考えられます。かと言って、独立性の強い企業間で、自発的に話し合い・協力の気運が生まれる可能性は少ないと言えます。

 

◆地域連携BCPと行政の役割

 各企業の迅速な事業再開を実現し、地域の産業復興を図るために、特定の地区単位で企業が連携して取組むことにより、個別企業のBCPを補完・強化し、企業の事業継続力を高め、地域の産業復興を迅速に進めるための取組を地域連携BCPと称し、経済産業省等が中心になって推進しようとしています。

 まだこの取組は緒に就いたばかりですが、これを進めるためには、企業間の協議や情報の共有化に向けて、行政が積極的に働きかける必要があります。

 市町村の一定の地区の居住者及び事業者が行う自発的な防災活動に関する地区防災計画制度が新たに創設(平成26年4月施行)され、各地区で計画された内容を自治体の地域防災計画に反映する仕組みができました。こうした制度も活用しながら、企業が集積する産業団地等への地域連携BCPの策定を働きかけ、いち早い産業復興、そして地域の復興を果たせるようにする役割が、行政には期待されています。

 

(文責:研究所長 杉戸厚吉)

 

移り住むなら滋賀県・湖北 いざない湖北定住センターの取り組み

■我がふるさと 滋賀県・湖北

 滋賀県では、県内を地域区分する場合、琵琶湖を中心に湖南・湖東・湖北・湖西に4区分することが一般的です。私のふるさとである湖北は、今の行政区で示すと長浜市と米原市になります。

 人口は122,560人、世帯数は44,348世帯(平26年3月末)で、ご多分にもれず少子高齢化が進行しています。

 そうした滋賀県・湖北地域を対象とし、『移り住むなら滋賀県・湖北』を合い言葉に、都市から地方へ移り住みたい人へのお手伝いを行っているのが『いざない湖北定住センター』です。

 

■いざない湖北定住センター発足

 滋賀県地域振興課(現:市町振興課)が、平成19~2年度(2007~09)にかけて、『都市と地方の交流居住・移住促進事業』を実施しました。

 ちょうどそのころは、総務省が移住・交流推進機構(通称:JOIN)を設立して、移住・交流希望者への情報発信をはじめたころであり、また国土交通省では二地域居住推進のための「二地域倶楽部」を、農林水産省では「都市と農山漁村の共生・対流推進会議(通称:オーライ・ニッポン会議)」を設立したころで、都市から地方への移住・交流の取り組みが全国的に広がりをみせているころでもありました。

 滋賀県ではこうした全国的な流れを受けて、交流居住・移住促進のための受け入れ組織の設立を目標に同事業を展開していきました。

 この調査の一環で設立された「湖北移住交流支援研究会(平成20年8月設置)」を発展的に改組し、平成22年8月に新しく組織されたのが『いざない湖北定住センター』です。

 センターは会員制の任意団体で、個人会員、賛助会員(民間)、特別会員、利用会員で構成されています。

 

■センターの活動

 センターの活動を3点に絞り紹介します。

①空き家バンク

 空き家を持っている方と、移り住みたい方の橋渡しが仕事です。利用会員(年会費1,000円)になっていただくと、センターに登録されている空き家情報を提供し、随時相談に応じるというサービスです。なお、現在(平26年10月)の空き家登録数は20軒(のべ45軒)、成約数はのべ10件です。

 ちなみに、昨年度は長浜市から事業を受託し、市内全自治会を対象とした空き家調査を実施しました。それが縁で空き家バンクへの登録も少しずつ増えてきました。

 

②田舎暮らしフェスタの開催支援

 移り住みたいと考えている方々に実際に湖北に来ていただこうと、『移り住むなら滋賀県・湖北田舎暮らしフェスタin湖北』を毎年秋に開催しています。

 主催は、長浜市、米原市、滋賀県、地域づくり団体、民間企業等で組織する実行委員会ですが、いざない湖北定住センターがその事務局を引き受けて、開催を支援しています。

 今年(2014)で6回目となる田舎暮らしフェスタですが、地元の地域づくり団体や民間企業等が湖北への交流居住、移住促進をテーマに一つになる場として貴重な存在となっています。

 

③都市と地元の交流促進

 いざない湖北定住センターのもう一つの特長は、湖北で活動する様々な地域づくり団体とのネットワークです。空き家の活用は地域(とくに自治組織)との密接な関係づくりが欠かせません。

 ちなみに、センターの特別会員とは、これらの地域づくり団体のことで、特別会員は会費無料となっています。

 こうした地域づくり団体が行う様々な田舎体験イベントがあります。例えば、かやぶき屋根の葺き替え体験、茶摘み体験、そば刈り体験、雪堀り野菜の収穫体験など多種多彩です。センターは地域づくり団体が行う交流事業の事務局(=問い合わせ窓口)を引き受けて、地元住民の皆さんとともに湖北の魅力を情報発信しています。

 

 センターでは、『co*hok style ~コホクスタイル~』というブログを開設してタイムリーな情報発信を行っています。詳しくはそちらをご覧下さい。

 

■湖北の暮らし見学ツアー

 

滋賀県が主催する事業のお手伝いで、JR名古屋駅発で滋賀県湖北の暮らしを見学するバスツアーを2月1日に開催します。湖北に関心のある方は是非ともご参加下さい。私が案内役を担う予定です。

 

(文責:いざない湖北定住センター理事 押谷茂敏)