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まちづくりの考察

  地域が抱えるまちづくりの課題解決に向けた様々な取組みを実施しています。その取組みを少し紹介します。

空き家対策についての取り組み

.我が国の空き家の状況

令和2年1月1日現在の外国住民も含む我が国の人口は12,7138,033人で、前年に比べても30万人以上減少しています。その一方、世帯数は5,9071,519世帯と前年に比べて55万世帯ほど増加しており、核家族化、単身世帯化が進んでいることがうかがえます。

また、平成30101日現在の我が国の総住宅数は6,242万戸で、そのうち空き家率は13.6%と5年前に比べて増加しています。このように空き家は増えているものの、我が国では新たな住宅が年80万戸建設されるという状況にもあり、今後の人口減少、さらには世帯数減を考えると今後、ますます空き家が増加することになります。 

空き家は適正に管理をしないと、雨漏りや白蟻などの影響もあり、老朽化して倒れそうになったり、庭の草木が生い茂り、隣地や道路にまではみ出したり、空き家にごみが捨てられたり、放火される危険性があるなど、近隣住民等の生活を脅かす存在になってきます。

 

.空家等対策の推進に関する特別措置法の制定

このような状況の中、全国の地方自治体において、増えてくる空き家によって発生する様々な問題への対策を講じなければならなくなりました。そのため、平成2611月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立し、地方自治体で、空き家の実態調査、空き家の所有者へ適切な管理の指導、適切に管理されていない空き家を「特定空家」に指定し、助言・指導・勧告・命令、さらには罰金や行政代執行を行うことができるようになりました。空き家を適正管理する義務は所有者にあり、空き家であっても、所有者の許可なしに敷地内に立ち入ることは不法侵入にあたるためできません。しかし、「空家等対策特別措置法」では、管理不全な空き家の場合、自治体による敷地内への立ち入り調査を行うことができ、所有者の確認をするための個人情報なども取得しやすくなりました。しかも適正管理をしない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告といった行政指導、そして勧告しても状況が改善されなかった場合は命令を出すことができるようになりました。

 

.空き家対策に向けて

空き家は「解体・除却」するか、「利活用・流通化」するかになります。しかし空き家に何らかの手を付けようとしても、「相続登記がされていないことから、相続手続きから行わなければならないこと」、「相続人間での区分所有などにより活用等するにも調整ができないこと」、「相続放棄をしているため、所有者が定まっていない」など、相続等トラブルで空き家の解体や活用ができないケースも少なくなりません。

こうした中、地方自治体では空家対策計画を策定するとともに、計画に基づいて特定空家の解体・除却などに力を入れてきていますが、「公費を投入して行政代執行をしても所有者から費用を回収できない」、「除却補助制度を創設したために特定空家になるまで管理を放棄する」、「遠方に住んでいることや高齢化していることから管理ができない」、「相続した空き家の場所すらわからない」、「解体・除却に充てるお金がない」などの理由から所有者の管理義務が果たせない状況も多いと思われます。

そのため、所有者への意識・啓発を図りながら、空き家の解体・除却や利活用等を図っていく動きをつくることが重要であり、「住民や所有者向けのセミナー」、「空き家バンク制度の創設」などを市町村や宅建協会、弁護士などの仕業団体などが実施し、空き家の利活用や流通化なども含め、地方自治体の創意工夫で空き家対策を進めています。

 

4.地域問題研究所における空き家の取組み

当研究所では、2008年から愛知県の三河山間地域(豊田市、岡崎市、新城市、設楽町、東栄町、豊根村)の6市町村への移住促進を図るため、愛知県や大学、NPOが中心となって設立した「愛知県交流居住センター」の事務局となり、市町村と連携して空き家の情報提供やマッチング、移住を受け入れる集落への支援などを行ってきました。

また、瀬戸市や刈谷市の空家等対策計画の策定に向けた業務を実施し、空家等の実態調査や空家等所有者へのアンケート調査等を実施しながら、空家等の適正管理や利活用に向けた施策・事業を盛り込んだ空家等対策計画の策定を支援しました。

このような中、当研究所では南知多町において、町のプロモーション事業の一環として空き家を借り、町内外の方々と一緒にDIYでリノベーションを行い、カドミナと呼ばれるレンタルスペースの立ち上げに協力しました。また、空き家活用による移住定住促進に向け、町民や空き家所有者向けに、空き家バンクへの登録、空き家の利活用を促すためのセミナーの開催、移住希望者等と一緒に空き家をはじめ、住まい、しごと、暮らしを体験できる移住交流体験プログラムの実施などを行い、数名ですが新たな移住者を増やしています。

 

5.今後に向けて

 人口減少に伴い、今後もますます空き家が増えていきます。空き家の管理は所有者の責務ですが、所有者だけでは限界もあります。また、行政が先導的に取り組むことも当初は必要ですが、今後も行政が対応していくことも限界があります。所有者、地域住民、民間事業者、行政等が連携し、それぞれが持っている力を発揮できる環境や仕組みを作っていくことが求められます。

例えば、行政としては毎年住宅所有者から徴収している固定資産税に将来の空き家解体・除去費用までを含めて納税してもらう新たな税の検討、民間事業者であれば所有者等が実施する空き家の管理や活用等をサポートするビジネスの検討など、空き家を取り巻く人々が持っているスキル、ノウハウ等を活かして空き家対策を進めていけるようにすることが必要です。

 そのため、当研究所においても空き家対策に向け、これまで培ったノウハウやネットワークを活かし、市町村等を伴走支援したいと考えています。

スマートシティの取り組み~スマートアイランドの実現~

.Society5.0で実現するスマートシティの取り組み

国では、地域におけるICT等の新技術を活用したマネジメント(計画、整備、管理・運営等)の高度化により、都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創出し続ける、持続可能な都市や地域を実現するスマートシティを推進しています。

多くの都市や地域では、まちづくりを進める上で、人口減少、高齢化、災害多発、感染症リスク等の様々な社会課題に直面しています。これらの社会課題は今後ますます深刻化するものと危惧されています。しかし、新型コロウイルス感染症の拡大を契機としてデジタル化が進行しています。新技術や各種のデータを活用したデジタル化の取組は、従来の発想にはないシステムの効率化、サービスの提供等を可能とし、各種の社会課題を解決する可能性を有しています。

Society5.0で実現する社会として、こうした新技術や各種データ活用をまちづくりに取り入れたスマートシティを推進していくことになっています。

 

. 地域問題研究所におけるスマートシティに向けた取り組み

 ICTなどの新技術を導入し、離島地域が抱える課題の解決を図るため、離島を有する地方公共団体と新技術等を有する民間企業や団体等が共同で実施する取組を公募し、現地実装に必要な実証調査を行う国土交通省国土政策局離島振興課が委託する「令和2年度スマートアイランド推進実証調査業務」に取り組みました。

 当研究所と南知多町、㈱NTTドコモ東海支社の3団体で「南知多スマートアイランド協議会」を設立し、連携・協力しながら遠隔授業の実証調査とグリーンスローモビリティの実証運行を行いました。

 

①遠隔授業の実証調査

 愛知県南知多町の日間賀島と篠島において、小規模校の課題である児童・生徒の多様な考えや意見によって高め合うグループワークを実施するための遠隔授業を実施しました。遠隔授業ではタブレットを使って両島の学校と県外の学校や町内の学校とのグループ学習を行い、ハードウエアやアプリケーション上の課題、グループ学習内容や指導方法での課題など、通常の授業とは異なる課題や成果が明らかになり、実装化に向けた運用体制や技術検証などを明らかにしました。

 

②グリーンスローモビリティの実証調査

  公共交通が整備されていない日間賀島において、観光客と自家用車を運転できない高齢者への移動支援を行うためにグリーンスローモビリティの実証運行を行いました。異なる2種類のグリーンスローモビリティ車両を用意し、タクシー型運行、周遊バス型定時運行を行い、利用状況、利用ニーズを把握するとともに、事業採算性の検討を行いました。グリーンスローモビリティの実装化に向け、運賃設定、ICTを活用した予約受付、島民による送迎車両の配車マッチングシステム、自動運転などによる人件費コストの削減などを行うなど、実装化に向けた課題などを明らかにしました。

都市緑地の保全・再生・活用に向けて

1.都市緑地のあり方

 平成29年6月に都市緑地法、都市公園法、生産緑地法が改正され、公園の適切なメンテナンスに向けた官民連携によるパークマネジメント、都市公園の再生に向けたPark-PFI制度の創設、都市農地を活かした農的な施設の設置緩和など、都市を取り巻く公園・緑地を官民連携して有効に活用できるようになりました。

 しかし、これにより都市の緑が本来持つ生態系保全機能や防災機能、景観機能、レクリエーション機能が損なわれないようにしなくてはなりません。

 また、都市化に伴い、緑の量は減少するとともに、維持管理の低下などにより、特に民有林においては、生活や農業等での利用がされなくなり、竹の繁茂、外来種の増加、林内照度の低下により、林床植生の変化が起き、それに伴って生き物の減少、食物連鎖の低下など、生態系が乱れ、緑が持つ機能が低下しています。

 緑の持つ多様な機能を維持していくためには、土地所有者や行政のみに任せるのではなく、市民全体がその緑が持つ多様な価値を理解し、市民みんなで共有財産として守り、育てていく取組を持続的に行っていくことが必要です。

 そのため、「緑の量を減らさない」、「生物多様性の確保などに向け、適切な維持、保全を行う」、「緑への関心や理解、楽しさを感じられる機会や場を作る」、「緑の保全・管理に関わる人・組織を育てる」などの取組を市民、土地所有者、地域自治組織、活動団体、企業、大学、行政などが連携・協力しながら取り組んでいくことが重要だと考えています。

 

2.地域問題研究所における都市緑地に関わる取り組み

 当研究所では都市緑地に関わる業務として、桑名市、大府市での「緑の基本計画策定業務」、長久手市での「田園バレー基本計画」や「里山基本計画の策定業務」、名古屋市の「緑地基本計画策定に向けた検討業務」などに関わってきました。

 都市の緑とは、公園、緑地、街路樹などの公共緑地をはじめ、農地、山林、社寺林、家の庭などの民有緑地も含まれます。緑の保全、活用などを考えていくには、こうした公共の緑地、民間の緑地などに応じた適切な手法を考えています。

緑のあり方を検討していくには、地形や気候、植生、生息する生き物などの状況や特性を現地調査、専門家へのヒアリングなどをきめ細かく行い、緑の持つ価値を把握しています。

 市民、土地所有者、活動団体、地域住民、企業などから、緑の利用、活用、保全、管理など対するニーズをアンケート調査やワークショップを行いながら把握していますが、市民の緑への関心度は、緑での原体験、緑に関わる活動状況などによって大きく変わり、「緑に手を付けず保護したい人」から「維持管理活動をして保全したい人」、「整備した緑を利用したい人」、「緑が必要ない人」まで様々で、緑のあり方の合意を取っていくには時間がかかります。特に緑は生物であり、施設と違って一度失われると同じように再生することが難しいことや、緑は時間とともに成長すること、季節によって変化することなど、緑の持つ特性をもとに考える必要があります。

 当研究所では、専門家の意見も聞きながら、長期的な視点、環境、防災、生き物、レクリエーション、景観などの視点、多世代の視点などから緑の持つ価値を考え、緑の持つ機能が最大限に発揮できるようにするための方策を検討しています。

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