■2023年11月～2025年10月（2年間）
（１）プロジェクト概要
地域問題研究所では、多様化する地域の課題解決を目的として、ボーダー（国境）を越えて学び合う「地域学び合いプロジェクト」に取り組んでいます。
弊所が実施する「市町村ゼミナール」などを通じで国内の先進取組の学びについて深めつつ、国内だけでは同質性が高く気づきにくい「新たな視点」を、文化や社会制度といったバックグラウンドの異なる世界の国々（他者）から学び合い、今後のまちづくりにおける新たなビジョンを獲得することを狙いとしています。
この学び合いプロジェクトでは、「支援する／支援される」といった関係を越え、対等な立場で互いの経験・ノウハウを地域（国）を越えて共有し、そこから内発的な問いを交わしあうことで、これからの地域づくりに向けた、新たなビジョンを創造していきます。
マルチパートナーシップで「観光」のその先を考える
「地域学び合いプロジェクト」は、以下のようなアクターがマルチパートナーシップを結び、協働で取り組みを進めています。
国際協力分野で功績を積み上げてきた、公益財団法人国際開発救援財団（FIDR）、そのFIDRさんと長年一緒に、住民が主体となった観光まちづくりや特産品開発などに取り組んでいるベトナム中部のダナン市ベンヤン社（旧名：クァンナム省ナムザン郡）の少数民族の方々で構成されるカトゥー族少数民族観光協会。暮らしに焦点を当てた観光まちづくりに取り組む一般社団法人東栄町観光まちづくり協会、ベンヤン社および東栄町の住民のみなさん、国際協力分野の経験を有しながら国内でフリーファシリテーターとして活躍する稲葉久之氏、そして地域問題研究所など、多様なアクターです。
テーマは「地域力の向上に資する観光」
単なる経済・産業活動として「観光」を捉えるのではなく、観光を「地域住民が観光を“合言葉”につながり、協働する営み」と捉え、地域力向上を目指す２地域間（愛知県東栄町とベトナムベンヤン社）で学び合いを進めてきました。
トヨタ財団さんの国際助成プログラムの助成を受けて実施しました。
当取組は、2023年度から、「公益財団法人トヨタ財団 国際助成プログラム」の助成を受けて実施しました。
企画の詳細はこちらから以下よりご覧ください。
「『地域力』向上に向けた観光まちづくり」の相互学習と経験共有
（２）活動報告書・活動動画
■「２０２３-２０２５ 日越地域学びあいプロジェクト活動報告書」を発行しました。
2023年に開始した「日越 学びあいプロジェクト」では、東栄町とベンヤン社が、２年間をかけて互いの経験や知恵を持ち寄り、文化や暮らしの違いを越えた学びあいを続けてきました。
その過程では、地域の強みや資源を活かした観光まちづくりを通じて多様な立場の人々がつながり、さらには、新しい活動や協働の形が芽生えています。
この２年間の振り返りとして、報告書「２０２３-２０２５ 日越地域学びあいプロジェクト活動報告書」を作成しました。この報告書では、これまでの活動の歩みとともに、両地域の実践から得られた気づきや学びを整理しています。
私たちの経験が、同じ思いをもつ方々の参考となり、新たなつながりや協働のきっかけとなることを願っています。
■以下よりダウンロードいただけます。
※ベトナム語版は掲載準備中です。
■東栄町訪問（2024年11月）の活動まとめ動画
動画はこちら（YouTube)
（３）活動地域
（４）これまでの主な取組
●2023年10月1日
■「地域学び合いプロジェクト 国際オンライン トークイベント」開催
プロジェクトのキックオフイベントとして、トークイベントを開催しました。
東栄町のまちのみなさんや、ベトナムのクァンナム省のナムザン郡（現ベンヤン社）を中心とした村から少数民族の方を含め多くの方にご参加いただきました。
●2024年2月10日〜11日
■ベトナム地域代表のFIDR・大槻修子氏が東栄町を視察されました。
2024年２月10日〜11日、ベトナム地域代表のFIDR・大槻修子氏に東栄町へ初めてお越しいただきました。
東栄町サイドのプロジェクトメンバーと初めて対面での顔合わせを実施するとともに、今後のプロジェクトの展開について議論を行いました。
また、大槻氏には、自転車で東栄町のまちの暮らしを見てまわる“ぽたび”に参加していただき、町民とコミュニケーションを取りながら現地を見てもらうことで、今後の学び合いにおいて、ベトナムチーム側のメンバーに「見てほしいポイント」を整理してもらいました。
2024年11月、2025年2月に予定している相互訪問・交流での学び合いのイメージをより具体化させることができました。
＜大槻さんからのコメント＞
◆東栄町への視察訪問では、東栄町の様々な地域の宝を感じ、発見、体験することができ、大変貴重な機会となりました。ベトナムに戻った後、その発見や体験をナムザン郡観光協会のメンバーや地域リーダーらに写真とともに共有しました。ナムザン郡側の人々は、好奇心をもって、東栄町の伝統文化をはじめ、地域資源の活用方法や他地域から移住された新世代の人々の活躍の様子に耳を傾けていました。
＜少数民族のみなさんからのコメント＞
◆日本の農村地域の大きな課題である過疎化の問題等は、ベトナムの対象地域ではまだ大きな課題とはなっていないものの、当地においても今後には充分に起きる可能性が高い課題であることを認識しました。その中で、東栄町とナムザン郡が相互に学び合える機会は大変興味深いプロジェクトであるとの意見がでてきています。
●2024年5月18日
■ナムザン郡を知るオンラインツアー開催！
愛知県東栄町とベトムナムザン郡が国を超えて「観光まちづくり」を学び合う国際プロジェクトのキックオフ！日本側からは、東栄町の関係者6名をはじめ、全国各地から10名程度、事務局の地域問題研究所関係者が7名が参加。
ベトナム側からも、ナムザン郡の少数民族の方が総勢40名超、現地パートナーであるFIDRの関係者が５名など、大勢の方にご参加頂きました。
オンラインツアーでは、ベトナム中部の山岳地帯にあるクァンナム省ナムザン郡へ訪問。ここには、たくさんの少数民族の人々が暮らしているとのこと。現地のツアーガイドさんのみなさんのご案内のもと、大勢の地元の方から腰織りでつくる伝統織物の作業の様子や、昔ながらの道具でつくる地産地消の美味しい食べ物のことなど、現地の暮らしの魅力を画面越しにリアルタイムで体験させて頂きました。
ツアー全体を通じて、ベトナムの村の様子がいきいきと伝わってきました。村の人の手仕事の様子やかまどの様子、村の風景などから、みなさんの暮らしぶりが想像され、直接行きたいという想いが強くなりました。カトゥー族の織物の様子からは、一本ずつ編み込んでいく機織りの大変さや繊細さが伝わりました。
●2024年6月4日
■東栄町を知るオンラインツアー開催！
愛知県東栄町とベトナム ナムザン郡が国を超えて「観光まちづくり」を学び合う国際プロジェクトの一環で、6/4（火）15：00～東栄町をオンライン（Zoom）で巡る『キックオフ オンラインツアー』を開催しました。ナムザンの住民や関係者が約35名、東栄町の関係者が約10名参加。
東栄町観光まちづくり協会の堀尾さんや伊藤さんから、東栄町のまちや暮らし、食べ物、伝統文化、さらに観光まちづくり協会の活動や事務所の様子などを映像も使いながら紹介。
さらに、花祭の舞や和太鼓演奏グループ「志多ら」の和太鼓のライブ中継もあり、その迫力のある実演を、ナムザンの方々も熱心に聞き入る様子が印象的でした。
その後の意見交換では、ナムザン郡の方の質問に応える形で、東栄町に移住し活躍されている堀尾さんや和太鼓志多らのメンバーのみなさんから、東栄町に移り住んだきっかけや動機、東栄町の暮らしの魅力などを語って頂きました。また、宿泊施設の状況に関するご質問もありました。
ナムザンの皆さんからは、「ぜひ東栄町を訪問したい！」「志多らさんに、ベトナムで公演してほしい！」「古民家に泊まってみたい」といった声も聞かれました。
●2024年11月1日〜6日
■ベンヤン社および周辺地域の少数民族のみなさんが、東栄町を訪問されました！
2024年11月には、ベンヤン社や周辺の郡で暮らす少数民族の方々が、東栄町を訪問されました！
約１週間寝食をともにしながら、東栄町の「観光まちづくり」についてともに体験し、学び合いました。
詳細は、以下の「地域学び合い交流プロジェクト 活動レポート（PDF）」をご覧ください。
（関連リンク）
■東栄町役場HP
「ナムザン郡の少数民族のみなさんが表敬訪問されました」
■東日新聞でとりあげていただきました。
「山間部の観光学び合う／日本の暮らしや食文化通じて交流」
●2025年2月17日〜22日
■東栄町メンバーが、ナムザン郡および周辺郡を訪問しました！
2025年2月に、東栄町観光まちづくり協会を中心とする「観光まちづくり」に取り組むメンバーとちもんけんのメンバーが、ナムザン郡および周辺の郡を訪問させていただきました。
この地域では、FIDRさんの長年の支援のもと、少数民族の方々が中心となって、暮らしや伝統文化の保存・継承に取り組む「観光まちづくり」に取り組まれています。
数カ所の村を回らせていただき、村ごとに異なる多様性豊かな暮らしの様子を肌で感じながら、各村ならではの特色を生かした観光まちづくりを見学・体験させていただきました。
最終日には、各村のみなさんと一緒に、これからのまちのビジョンや自分たちのアクションを考えるワークショップを行いました。
東栄チーム、少数民族チームのみなさんともに、多くの気づきを得ながら、学び合いの時間を過ごしていました。
訪問の様子をまとめた活動レポートは、以下よりご覧いただけます。
●2025年3月16日
■ベトナム現地訪問 プチ報告会 〜ぽたび ベトナムTIME〜
2025年2月、「観光まちづくり」に取り組むのメンバーとちもんけんメンバーが、ベトナム中部の都市クァンナム省にて、少数民族のみなさんが取り組む「観光まちづくり」を見学・体験させていただきました。プチ報告会では、 現地の様子や見てきたもの、感じたことなどをありのままに報告させていただきました。
日時：2025年3月16日（日）15時〜16時30分
場所：東栄町 まちの縁側ぽたび
●2025年8月26日 成果共有シンポジウムの開催
■2年間の経験・成果を共有する成果共有シンポジウムの開催を訪問しました。
2025年8月、名古屋商工会議所において、成果共有シンポジウムを開催しました。
行政職員、研究者、NPO関係者、観光まちづくり実践者など約70名が参加し、これまでの活動の成果と今後の展望について広く共有しました。
前半では、東栄町とベンヤン社それぞれの観光まちづくりの取組や、相互訪問の様子、学びあいのプロセスを紹介。
地域住民やプロジェクト参加者自身の声を交えながら、活動を通して生まれた変化や気づきを振り返りました。
後半のパネルディスカッションでは、「地域づくり観光」をテーマに意見交換を行い、観光を通じて地域のつながりを育てていく意義や、学びを他地域にどう広げていくかといった点について活発な議論が交わされました。
参加者からは、「地域の力を育む観光のかたちを具体的に学べた」「ベトナムと日本の交流が地域の未来を考えるヒントになった」といった感想が寄せられ、プロジェクトの意義と広がりを感じる機会となりました。
シンポジウムの内容ついては、後日、弊所の会報誌に掲載予定です。
【プログラム】
１．プロジェクト紹介
地域紹介（愛知県東栄町・ベトナムナムザン郡）
プロジェクトの趣旨説明・活動報告
２．「地域づくり観光」をテーマとしたパネルディスカッション
相互訪問後の活動や変化、地域づくり観光に取り組む意義等について
＜登壇者＞
東栄町チーム…（一社）東栄町観光まちづくり協会 伊藤拓真氏、東栄町副町長 伊藤克明氏 他
ベトナムチーム…（公財）国際開発救援財団 ベトナム事務所長 大槻修子氏 他
主催：地域問題研究所
（５）広報・発信
■FIDRさんの広報誌（FIDR NEWS）及びHPでの記事掲載
本プロジェクトの経過をFIDRさんのHPや広報誌、SNS等を通じて定期的に発信していただきました。
〇2025.10.0 ベトナムと日本の「地域づくりのための観光開発」の学びあいの成果を報告しました
〇2025.06.20 農村の豊かな自然資源を活用したアドベンチャーツアーへの挑戦 〜クァンナム省で広がる、新しい冒険の可能性〜
〇2025.04.17 東栄町の人々がナムザン郡で感じた「共通の思い」
〇2024.11.29 東栄町での体験と学びで膨らむ、今後の「地域づくり」への期待
〇2024.07.19 東栄町とナムザン郡の交流が本格的に始まりました
〇2024.04.19 国境を越えた「地域学び合い交流プログラム」がはじまります
■トヨタ財団 広報誌『JOINT49号』（2025年10月号）への掲載
本プロジェクトの取組をトヨタ財団の広報誌で取り上げていただきました。鼎談企画として紹介いただきました。
トヨタ財団の「国内助成プログラム」のスキームで“防災ワーケーション”に取り組む島田由香さん、「特定課題 先端技術と共創する新たな人間社会」のスキームで“文化資源のデジタルプラットフォーム化”に取り組む楠瀬慶太さんに東栄町にお越しいただき、国内で地域づくりに取り組む皆さんと情報交換の機会ともなりました。
〇トヨタ財団 【JOINT49号】 LIFE:まもる／守る／護る「地域をまもる─持続可能な社会を次代につなぐ」
（６）連絡先・プラットフォーム加入について
■地域づくり観光 越境学びあいプラットフォーム
本プロジェクトにおける学びあいを今後も継続するため、「地域づくり観光 越境学びあいプラットフォーム」を作りました。今後は、私たち二つの地域以外にも、「地域づくり観光」を共に学びあう仲間の輪をどんどん広げていきたいと考えています。プロジェクトに関するご質問なども大歓迎です。以下の各コーディネーターの窓口よりお気軽にご連絡いただけますと
幸いです。
＜地域づくり観光 越境学びあいプラットフォーム窓口（地域学びあいプロジェクト事務局）＞
〇一般社団法人地域問題研究所 担当：鈴木瞳
〒460-0008 名古屋市中区栄二丁目2番31号ニュープラスビル４階
TEL：052-232-0022（土・日曜日休み）
E-mail: suzuki@chimonken.or.jp
〇一般社団法人東栄町観光まちづくり協会 担当：伊藤拓真
〒449-0206 愛知県北設楽郡東栄町大字下田字市場54-4
TEL：0536-76-1780（水曜日休み）
E-mail: touei.machi.kankou@gmail.com
〇公益財団法人国際開発救援財団（FIDR）／ベンヤン社観光協会 担当：大槻修子
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台2-1OCCビル3F
TEL：03-5282-5211
E-mail: fidr@fidr.or.jp
