H26.第1-12講
第1講 テーマ 「人口減少・大災害のリスクに備えた都市の未来戦略」
2014年5月20日(火)14:30~16:30 愛知芸術文化センター12階 アートスペースA
「人口減少・大災害のリスクに備えた都市の未来戦略」
豊橋技術科学大学学長・日本学術会議会長 大西 隆 氏
本日は、東日本大震災を始めとする大災害のリスクについて整理し、長期的な人口減少社会を見すえた中で都市の未来戦略をどう考えるかお話ししたい。最初に東日本大震災の教訓と減災思想について、我が国で従来からとられてきた防災という考え方について東日本大震災を通した検証が急務です。私は、減災という観点から人命は最優先に守るという観点から防潮堤、防波堤等の防災施設と合わせ、災害を前提としたまちづくり、避難、これら全部が必要であると考えます。また、懸念される南海トラフ巨大地震については、津波による被害と合わせ、揺れや倒壊に対する対策も怠ってはなりません。
次に、我が国が抱える大きな課題のひとつに、人口減少社会の流れが上げられます。推計によると、100年後には明治時代の終わり頃と同程度の人口規模が想定されるに止まらず、長期的には人口がゼロに向かって行きます。また、例え合計特殊出生率が回復したとしても、30~40年、人口減少社会は続きます。一方で、都市が拡散しているという都市政策に関連する課題があります。こうした中で富山市が進めているコンパクトシティが注目されています。富山がうまくいっているのは、一か所の拠点に集約するのではなく、鉄道駅周辺にいくつもの核をつくるという、選択肢をたくさん設けていることが大事です。
「人口減少に対してどう集約化していくか」、「安全なまちをどうつくるか」がこれからの都市政策の基本となると考えます。その切り口として、「還流する田園」、「地域の産業力」、「低炭素化」、「中心市街地の活性化」の4点を提起させてもらいます。
第2講 テーマ 「コミュニティを主体とした地域の防災力の強化~ 地区防災計画の策定を通じて」
2014年6月11日(水)13:30~16:30 愛知芸術文化センター12階 アートスペースA
「コミュニティを主体とした地域の防災力の強化~地区防災計画の策定を通じて」
兵庫県立大学防災教育センター長 室崎 益輝 氏
今日は自治体の地域防災計画と合わせて、日常生活圏をベースとする隣近所のコミュニティレベルの防災計画がなぜ重要なのかお話ししたいと思います。従来の防災は自治体が中心となって進めるものとされていましたが、阪神淡路大震災等において、場合によっては公助よりも自助、共助が大きなウエイトを占め、公助の限界が明らかになっています。公助、自助、共助が一体となった仕組みとして、トップダウンとボトムアップが連携した流れや計画(地区防災計画)を作ることが必要です。従来縦割りで取組まれてきた災害弱者対策、津波対策、消防団の役割など、いずれも最後はコミュニティに集約されます。
減災は、リスクを知った上でいかに人命を守るかという思想です。具体的には対策の足し算と被害の引き算の合わせ技として被害を最小化することだと考えます。一例として、ハードウエアは公共が主体となって対応するものの、ソフトウエアやヒューマンウエアなどは範囲が小さくなるほどコミュニティの役割が大きくなります。
地域での取組みとして、災害情報の収集と伝達を図るコミュニティ減災情報システムの整備、地域の各主体が連携した減災協働の仕組みづくり、地域レベルでの減災環境整備、減災教育の展開が必要です。また、地区防災計画を絵に描いた餅にしないため、訓練等を通じて習熟し、検証することが重要です。
市民が主体となって策定した地区津波防災まちづくり計画」
静岡県牧之原市政策協働部協働まちづくり専門監 加藤 彰 氏
牧之原市では、15㎞の海岸線に沿って立地する5地区に全市人口の約8割が居住しており、巨大地震では甚大な被害が想定されています。こうした背景の中、この5地区において市民が主体となって地区津波防災まちづくり計画を策定しました。
牧之原市では、町村合併後の自治会組織のあり方が議論され、10小学校区ごとの地区自治推進協議会が発足、うち沿岸5地区で地区津波防災まちづくり計画が策定されました。地区自治推進協議会は地域の絆づくりを念頭に幅広い住民層の参加によって発足したものであり(牧之原市自治基本条例)、計画づくりを住民の主体的参加のもとに策定できたと評価しています。計画づくりの当初は避難タワーなどハード施設の整備を行政に求める声が大きかったものの、住民だからできることについて検討をしてもらうよう方向を変えていきました。計画づくりを通して、地域の専門家たる市民が主体的に計画づくりにかかわることによって、施策の多くを行政に頼るという、従来の行政と住民の関係を住民側が再考する転機となったと思います。
第3講 テーマ 「地方自治体の業務継続計画の策定と運用 ~ BCPからBCMへ」
2014年6月30日(月)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室
「地方自治体の業務継続計画の策定と運用 ~ BCPからBCMへ」
東北大学災害科学国際研究所(人間・社会対応研究分野)教授 丸谷 浩明 氏
突発災害の発災時に行政機関の業務の継続をどのように図るかが行政機関のBCPのポイントです。行政機関が被災すれば、平常時の業務を継続することは困難であり、優先業務の選定、発災直後の業務レベルの向上と業務立ち上げ時間の短縮等を受援も含めて対応が必要となります。
従来の防災計画は、応急・復旧業務や復興期の業務などを定めたものであるのに対して、BCPでは、行政機関自らが被災した時に災害後優先すべき業務、継続・早期復旧が必要な業務を定めます。このため、重要な業務を絞り込んで優先的に復旧するために不可欠な人材、設備などの供給元の二重化を始め、発災後に実施すべき対応・手順を決め、重要業務を許容期限までに復旧するのがBCM(業務継続マネジメント)です。業務拠点が防災対策の想定を超える大きなダメージを受けた場合、何も対応できなくなってしまう事態を防ぐため、防災対策に加えてBCMが必要です。
東日本大震災等の教訓を踏まえた有効なBCMとして、業務の継続を図るため代替拠点の確保、代替の人材確保、情報のバックアップ、代替調達先の確保などが指摘されます。そのためには、地域内だけでなく広域の連携、必要な参集人員の確保と安全対策、ICTの活用、業務継続の対応や対策を簡潔な文書にまとめること、訓練の実施と評価・継続的改善が必要です。
「藤沢市におけるICT-BCPの取組みについて」
神奈川県藤沢市総務部参事兼IT推進課長 大高 利夫 氏
総務省では東日本大震災の経験を踏まえ、災害に強い電子自治体に関する研究会を立ち上げています。自治体の業務継続に初動対応の重要性にかんがみ、ICT-BCPの作成により地域防災計画を始めとする防災対策を含め、業務の継続力を高めることが必要です。
藤沢市のICT-BCPは、セキュリティ対策として情報資産を守ることです。藤沢市ではセキュリティの対策を進めた結果、BCPになったといえます。多くの自治体では、災害時は地域防災計画に基づいて、大半の職員は災害対策本部にはりつき、自治体の業務継続は残余の人員で対応することとなっていないでしょうか。藤沢市では、BCPを作成し、災害対応業務に先んじて継続する業務を決めています。藤沢市におけるICT-BCPは、地域防災や市のBCP全体を支えるものであり、IT部門のBCPとは別物です。藤沢市ICT-BCPでは、実際の災害時においても機能するよう、確認、対策を立てるためのチェックシートを重視しています。
BCP、BCM、BCMSの違いについて、BCPは計画書、BCMはPDCAを含む行動、BCMSは有効性の評価といえ、藤沢市では3つをセットのものと考えています。従来から情報セキュリティポリシーを立てていたため、BCPの認証まで一連の流れの中で位置づけています。
第4講 テーマ 「自治体におけるオープンデータの戦略的活用 ~ 公共データの可能性と課題」
2014年7月11日(金)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室
「自治体におけるオープンデータの戦略的活用 ~ 公共データの可能性と課題」
国際大学グローバルコミュニケーションセンター客員研究員 林 雅之 氏
オープンデータとは、政府や自治体などの公共機関がオープンに提供可能な行政情報で、機械判読に適したデータ形式で提供される二次可能なデータのことを指します。オープンデータが、民間開放されることで巨大な経済効果が期待されています。海外では、国、自治体の各レベルで多様なオープンデータの提供、活用が進んでいます。
わが国でもオープンデータカタログサイトが公開されていますが、多くのデータがPDFであるなど、多様な活用には課題があります。
一方、経団連が民間企業にどこのデータを使いたいかアンケートをとったところ、自治体の保有するデータに一番多く期待が寄せられているものの、自治体のオープンデータへの取り組みは十分とは言えません。こうした中で、横浜市、鯖江市、流山市、千葉市など先進的自治体でオープンデータへの取り組みが始まっており、需要と供給が相俟って可能性が幅広いデータ活用が広がります。
「データシティ鯖江=Linked オープンデータの町」
福井県鯖江市政策経営部情報統括監 牧田 泰一 氏
鯖江市では、市民主役、市民協働のまちづくりを進め、市民主役事業として鯖江市地域活性化プランコンテストやJK課など33事業を進めています。最終的には、ITを活用した街づくりを位置づけ、ITをめがね、繊維、漆器に続く鯖江の4番目の産業に育てようと取組んでいます。
市民主役のまちづくりの基本となる鯖江市民主役条例は、新しい公共の考え方に基づいていますが、行政と市民の情報共有化を重視しています。オープンデータについて、有識者より2010年にウェブによる行政情報のあり方としてデータシティの提案がありました。現在、統計情報のほか、避難所、駐車場情報、バスロケーション等、46種類の行政情報が公開され、これを利用した民間アプリが90種類ほど開発されています。ITは、自治体の課題解決に有効であり、オープンデータはそのきっかけになると思います。
第5講 テーマ 「防犯まちづくりのデザイン~安全な都市環境の設計」
2014年8月19日(火)13:30~16:30 昭和ビル 9階ホール
「防犯まちづくりのデザイン~安全な都市環境の設計」
東京大学大学院工学研究科都市工学専攻 准教授 樋野 公宏 氏
防犯に関する我が国の対策について、これまで主に住宅や公共施設など単体を対象とした指針が策定されてきました。一方、防犯性の高い住環境を求める国民ニーズの高まりを背景に、地区レベルでの防犯まちづくり指針が必要となってきました。このため、道路や公園等の基盤整備、民有地の建築コントロール、エリアマネジメントなどを通して防犯性の高いまちづくりを実現するための手法をまとめた「防犯まちづくりデザインガイド」を作成しました。
防犯まちづくりデザインガイドでは、従来の「閉じた防犯」から「開いた防犯」の考えを提唱しています。積極的に住民の活動や交流を促すことで、地域全体の防犯意識を高めるという考えです。一例として、習志野市等では住民が花の水やりをすることで登下校時の子どもを見守るなど、新旧住民の交流の契機にもなっています。
「開いた防犯」による防犯まちづくりの取組みは各地で始まっており、地域の実情を踏まえ、デザインガイドの活用を期待しています。
「足立区における『防犯まちづくり』の取り組みについて」
東京都足立区都市建設部ユニバーサルデザイン担当課長 須藤 純二 氏
足立区の世論調査では、治安が悪いと思う人の割合は治安がよいと思う割合より多く、実際に、刑法犯認知件数では東京都23区でワースト1位でした。そこで、足立区は警視庁と協定を結び、「足立区総ぐるみの対策」「防犯環境による対策」「社会における規範意識上場対策」を3つの基本とした「ビューティフル・ウィンドウズ運動」をはじめました。防犯カメラの設置の拡大や自転車盗難防止のための活動そしてまちの美化推進を行っています。さらに、新開発事業地には既存住宅地よりもより深い防犯基準である防犯設計タウン認定制度を取り入れ、住宅だけでなく道路や公園とその周辺の環境防犯にも取り組み、既存住宅地には防犯まちづくり推進地区認定制度も取り入れ、地区のパトロールや照明の点灯運動など住宅への防犯まちづくりを強化していきました。
こういった取組によって刑法犯認知件数が平成24年から減り、平成25年にはワースト3位圏外となり、成果がみられています。
第6講 テーマ 「健『幸』社会の実現を目指すスマートウエルネスシティ」
2014年9月5日(金)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 大会議室
「健『幸』社会の実現を目指すスマートウエルネスシティ」
筑波大学大学院人間総合科学研究科 教授 久野 譜也 氏
我が国は世界最高水準の長寿化を達成しているが、かなりの寝たきり期間(男7年、女12年)が副産物としてあります。70歳を超すと人間の老化は加速、有効な手を打たなければ平均寿命が延びれば延びるほど寝たきり期間が増えることとなります。70歳以上では、外出回数と健康度に一定の関係があります。外に出てもらうことをサポートするスマートウエルネスシティ(SWC)は歩いて暮らせるまちづくりを目指しています。
WHOの資料で死因の上位に運動不足が挙げられ、運動を通じて健康度を高め医療費を減らせます。公共交通の充実など都市の構造を変えて乗換などトータルで歩く量を増やすこと、あわせて街の魅力を高め、行ってみたくなる街をつくることも健康政策といえます。SWCは、医療、健康分野にとどまらず、施策の総合化により実現できるものであり、全国7市が総合特区として歩いて暮らせるまちづくりを始めました。理想とするSWCに向け、平成21年に9市でスタートしたSWCの取組みは現在57市に広がっています。
「『スマートウエルネスぎふ』の取組み」
岐阜県岐阜市副市長 佐藤 哲也 氏
岐阜市では平成24年に「スマートウエルネスぎふ推進本部」を設置、「歩く」ことをキーワードに全庁的な取組みとして、健康施策とまちづくり施策を一体とした、まちづくりを進めています。歩きやすい道の整備、自転車の利用しやすい環境の整備、公共交通の利便性向上を通じて、暮らすうちに健康になれるまちを目指しています。人がまちを歩けば、まちがにぎわう、人が健康になれば、まちも健康になります。「スマートウエルネスぎふ」は、車依存社会から「歩くまち」への転換を目標としています。
「スマートウエルネスぎふ」では、具体的な数値目標を掲げ、思わず歩きたくなるまち、健康寿命が延びるまち、「歩く」ことを楽しむまちの3本柱に沿ったソフト、ハード施策を総合的に推進しています。成果の検証については、「健幸クラウドシステム」の導入により、地区ごとの健康状態を可視化、それぞれの課題を把握できるようにしています。
第7講 テーマ 「企業誘致から地元企業育成へ」
2014年10月16日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室
「企業誘致から地元企業育成へ」
拓殖大学政経学部教授 経済学科長 山本 尚史 氏
我が国の人口が2005年に対して2050年には25%余減少する中で、地方部ほど減少幅は大きくなります。その結果、地域企業と地域経済の悪循環が想定されます。低成長時代に地域が栄えるためには、地域の中小企業の内発的発展、自らを高付加価値化、地域内資金循環など、進取の精神が旺盛な中小企業が繁栄するようなビジネス環境を構築することが必要であり、エコノミックガーデニング(EG)のポイントといえます。
EGは、1990年代に米国で始まった企業誘致に頼らない取組みで、全米各州に広がっています。EGに取り組む多くの自治体で就業者数や税収の大幅な増加という成果を見ています。現在、我が国でも多くの自治体で取組まれています。地元中小企業が成長する環境整備として、キーパーソンのほか、多様なコネクション開拓、企業認証などのネットワーク形成、ビジネスセンスのある人材によるコーチング、多様なメディア活用による情報発信力の強化など、地域の実態を踏まえた環境整備が必要です。そのため、産学公民金、各分野の人的資源の連携が重要となります。
「Oka-Bizを拠点とする地元企業育成の取組み」
愛知県岡崎市経済振興部商工労政課 加藤 史朗 氏
Oka-Biz誕生の背景として、岡崎市では商業、工業とも売上や出荷額は変わらないものの、企業数、とくに中小規模事業所の減少が大きくなっています。企業主は売上を伸ばし、新分野への販路開拓を望んでいるものの、どこにも相談していない企業主が多いことが明となりました。
Oka-Bizの事業内容として、ビジネスコーディネーターによる売り上げを伸ばすための各種相談、相談内容に応じて必要な専門的指導や支援機関へのマッチング、中小企業の課題解決、起業・創業支援等に関する情報収集や発信などを行っています。平成25年12月の開設からこれまでに1,404件の相談を受け、リピート割合も73%と高くなっています。
Oka-Bizがめざすミッションとは、地域の中小企業のビジネスにおける挑戦を応援するところにあります。ソーシャルビジネス支援から産業支援全体を支える市、金融機関、商工会議所を巻き込んだ産学官民の連携体制が動きつつあります。
第8講 テーマ 「若者の力がいきるまち~学生の力と感性の活用」
2014年11月14日(金)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室
「若者の力がいきるまち~学生の力と感性の活用に向けて」
愛知学院大学地域連携センター所長、経済学部教授 鵜飼 宏成 氏
私が進める起業家教育は、学生たちが問題を見つけ、アイデアを考え、プランを作って企業等に相談、商品化・システム化に結び付けるというプロセスがあります。起業家教育の目的として、地域再生、学生のキャリア形成、大学の特徴づくりなどがあります。
地域再生には、企業誘致、財政による所得移転、地元の産業振興などが考えられます。大学の役割として地域といかに向き合うかが重要であり、生活を支える現場づくりなどを通じ、大学が地域再生を担うため、地域連携センターの役割があります。どのように学生を教育し、社会に送り出していくかが問われます。その中で一番身近なものとして、まちづくりがあり、産業界も含めた地域振興人材をいかに育てるかと言えます。地域振興人材の能力を開発していく上で現場での経験が重要です。名東区藤が丘や北区柳原商店街においては、学生たちが地域の人々と一緒になって、まちづくり活動、商業振興活動、防災マップ・防災ラジオドラマづくりなどに携わらせてもらっています。
「『学生のまち・金沢』の推進」
石川県金沢市市民局市民協働推進課長 東 利裕 氏
金沢市には、金沢大学を始め9校の高等教育機関、隣接自治体を含めると18校、32,000人余の学生を擁し、学都といわれる所以です。しかし、キャンパスが手狭になったため、2校を残して郊外に移転しました。この結果、まちなかの若者の減少や住民との交流の希薄化などの課題が出て来ました。このため、「まち」をキャンパスとしてとらえる取り組みをスタートさせています。平成22年には「学生のまち推進条例」を制定、その中で金沢まちづくり学生会議が中心となって「まちなか学生交流街MAP」や「学生まちなか塾」、金沢に来た新入生に金沢を知ってもらう「OPENCITY in 金沢」などさまざまな活動を行っています。また、学生と市民の交流拠点「金沢学生のまち市民交流館」も整備しました。
金沢を外部に発信するため、全国の学生が参加する「歴史的空間再編学生コンペ」や慶応義塾大学と共同の「金沢×慶應 金沢元気プロジェクト」なども動き始めています。今後の課題として、活動の継続と成長、より多くの学生の参加を促すことなどがあります。
第9講 テーマ 「地域自治力の再構築 ~人口減少・高齢社会における地域自治のあり方」
2015年1月23日(金)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室
「地域自治力の再構築 ~人口減少・高齢社会における地域自治組織のあり方」
四日市大学副学長・教学部長・総合政策学部教授 岩崎 恭典 氏
日本の総人口は2005年をピークに減少時代に入りました。1950年の人口9000万人と、2050年に想定される9000万人の総数は同じでも、前者の高齢化率が5%に対して後者は35~40%と推計されます。生産年齢人口のピークは1995年であり、税収が減る中で増加する高齢者への施策など、人口減少社会を真正面に見据えた仕組みが必要です。
一例として、2022年には団塊世代が後期高齢者となります。厚労省が進めている地域包括ケアシステムの目標年次2025年では遅いと考えます。地域全体が高齢社会となったとき、多様な生活支援の全てを行政が担うことは困難です。行政が分担するセーフティネットを守るためにも活動の多くを住民にお願いすることが必要です。受け皿となる地域自治組織をつくり、必要な資金配分と責任ある仕事を行ってもらう。これは地域に新たな雇用や生きがいを生み出すことにもつながります。地域自治組織が担う役割は多様です。地域自治組織が機能を発揮するための課題は数多くあります。まずは住民が変わることが必要です。
「兵庫県朝来市のまちづくり ~地域自治の仕組みと自治体職員の役割」
兵庫県朝来市市長公室総合政策課副主幹 馬袋 真紀 氏
朝来市では集落ごとに区が設けられ、それぞれ自治会運営が行われています。これまで、区長を始め役員は何年も同じ人が担当、さまざまな行事、道路や山林の管理、子供会の運営等もままならない状態となっていました。
平成17年の合併後、朝来市に相応しい地域自治の仕組みを検討してきました。地域の情報共有、役割分担、誰もがまちづくりの主体となる地域自治組織を立ち上げ、地域自治組織が有効に機能するよう、地域支援職員の配置、自治基本条例の制定、地域自治包括交付金の交付等の制度的、財政的支援策を整え、公共を担う地域自治組織として自治の確立、持続可能な朝来市づくりを進めています。
地域自治システムの活動事例として、買物支援活動、地域学童保育、自主運行バス、農家レストラン運営、指定管理・受託業務等多岐にわたります。あわせて、自治体職員として地域活動に積極的に関わるほか、それぞれの地域での地域課題の解決や自身のノウハウの地域還元など職員としての役割も期待されています。
第10講 テーマ 「空き家問題の見通しと対策 ~空き家の有効活用策」
2015年2月4日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階 特別会議室
「空き家問題の見通しと対策 ~空き家の有効活用策」
富士通総研経済研究所 上席主任研究員 米山 秀隆 氏
2013年の全国の空き家率は13.5%(8,196千戸)、戦後一貫して増え続けています。戦後の住宅絶対数の不足から、近年の地方都市における人口減少を背景とするなど、内容は変化しています。空き家のうち、売却用、賃貸用でない、その他の住宅の空き家(3,184千戸)の増加が大きな課題となっています。
空き家対策には、①危険な空き家の撤去促進、②ストックとしての利用促進策 の二つがあります。撤去促進のため、撤去費用の補助、公費撤去、特定空き家に対する固定資産税の住宅用地特例の解除などがあります。また、空き家の利活用促進策として、空き家バンク、定住支援策、公的活用など各地で取組まれています。①、②とも空き家を巡る課題も多く、所期の成果を上げているところは少ない。
とりわけ地方都市において人口減少、高齢化が進む中で、コンパクトシティによる中心市街地活性化という、まちづくりを視野に入れた取組みが重要です。
「江津市の定住促進と空き家対策」
島根県江津市政策企画課 森脇 淳 氏
江津市においても人口減少と高齢化は大きな課題です。このため、平成19年に江津市定住促進ビジョンを策定し、定住促進と、江津市に住み続けるための産業振興を施策の2本柱としています。江津市では、空き家は定住促進を図るための地域資源と考えています。
田舎暮らしや空き家を利用したいというニーズは大きいものの、具体的な成約にまで結び付かないことが多い。宅建業者、地域・NPO、行政の役割分担と組織連携による情報提供、移住相談、地域のコミュニティを含めた入居後の支援などにより定住を促しています。空き家バンクの大原則として、あっせんするのはU・Iターン者とし、江津市民や近隣市町村居住者は対象としない。状態のよい住宅の登録、空き家バンクを通じた情報提供、無料職業紹介、起業・創業支援、空き家バンク登録住宅の改修費用の補助などを行っています。江津市の空き家対策は、当初の空き家あっせんから、創業支援を通じた人材誘致、まちの活性化にシフトしています。
「尾道式空き家再生術」
NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事 豊田 雅子 氏
海外ツアー添乗員の経験から、歴史を居間に活かすというヨーロッパのまちづくりが活動の原点にあります。尾道には駅から2キロ圏内の町の中心に500軒以上の空き家が点在しています。再建築できない非接道の建物が多く、今ある建物を活用することとなります。市に空き家バンクはあっても、物件の登録はなく自分で空き家を探した。1軒の空き家との出会いをきっかけに2007年に「尾道空き家再生プロジェクト」が発足。
空き家に関する情報がないところからNPO活動は始まります。このため、尾道建築塾、尾道空き家談義、空き家再生蚤の市、尾道まちづくり発表会、空き家再生ピクニック、尾道空き家再生!夏合宿などを開催しています。これまでに多くの空き家再生を実施しています。空き家再生は、多様な人とのネットワークとも言えます。
現在、尾道市空き家バンク事業を受託、尾道暮らしのための手引書作成、空き家巡りツアー開催、定住支援、観光分野への活用など展開しています。尾道の空き家はまだまだあります。
第11講 テーマ 「生活困窮者自立支援法と自治体の役割」
2015年3月13日(金)13:30~16:30 名古屋商工会議所 第5会議室(3階)
「生活困窮者自立支援法と自治体の役割」
首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻 教授 岡部 卓 氏
近年の経済・雇用環境を反映して、ワーキングプア、無年金・低年金高齢者層が増加しています。こうした人々の中には、地域の中でネットワークを持つことなく孤立した失業者・高齢者・障害者・ひとり親世帯なども多く、生活保護制度を活用せざるを得ない人たちが増えています。生活保護の前段階で第2のセーフテイネットである低所得者対策の充実強化が要請されています。
生活保護に至る前の自立支援の強化を図るため、生活困窮者自立支援法が成立、2015年4月より実施されます。本法では、必須事業として、①自立相談支援事業、②住居確保給付金の支給、任意事業として、①就労準備支援事業、②一時生活支援事業、③家計相談支援事業、④学習支援事業などがあります。
生活困窮者自立支援が有効に機能するため、行政を基点としつつ、地域住民、社会福祉法人、NPO、企業等の連携・協働により、生活困窮者・貧困者の多様な生活課題への緩和・解決に向けて取り組むことが必要です。
「名古屋市における生活困窮者自立支援の取組み」
名古屋市仕事・暮らし自立サポートセンター センター長 大熊 宗麿 氏
名古屋市では、生活困窮者を経済的理由だけでとらえることなく、個別的、包括的、継続的な支援により、就労による経済的自立に止まらない日常生活、社会生活における自立を目指しています。生活困窮者自立支援法に基づいて2014年7月から始めた生活困窮者自立促進支援モデル事業では、自立相談支援事業、就労準備支援事業、家計相談支援事業、就労訓練事業、住宅支援給付金事業、学習支援事業を行っています。
名古屋市仕事・暮らし自立サポートセンターは、多くの関係機関と連携して相談窓口は広くし、相談者の様々な問題を解決することを目指しています。昨年7月の開設から1月までに来所226件、電話・メール等437件の相談を受けています。相談内容は、生活費、住居、就労に関するものが多く、背景として病気、障害、精神疾患、コミュニケーション、成育歴、家族関係などがあります。
多様な背景に対応するため、市内の支援機関とも連携して対応したい。都市部の自立相談支援機関の役割として、窓口となるハブ機能と支援機能を担うことが考えられます。
第12講 テーマ 「おもろいな やってみなはれ~自治体なんやさかい何でもやったらよろしいねん」
2015年3月26日(木)14:30~16:30 昭和ビル 9階ホール
「おもろいな やってみなはれ ~自治体なんやさかい何でもやったらよろしいねん」
滋賀県湖南市 市長 谷畑 英吾 氏
地方分権を阻む要因が地方の側にあるのではないか、反証として分権型社会とは住民自らが自治を楽しむものだと思います。地域に飛び出す公務員も、現場では思いっきり弾けてもいい。湖南市での取組みを大きく6つに要約して紹介したいと思います。
①湖南市の障がい福祉を担保するために、発達支援システムを条例化して乳幼児期から就労まで一貫して支援。基礎的自治体には社会のインフラ整備だけでなく、心のインフラづくりが求められます。先手の小さな福祉が大きな力を発揮します。②地域で学校を包み込む「学校支援地域本部(地域が学校の教育活動を支援)」と「地域運営学校(コミュニティ・スクール)」を設け、多様な実習活動が行われています。③地域福祉や防災、環境などに取り組む7つの地域まちづくり協議会を設置、各地域でユニークな活動が取組まれています。④エネルギー、経済の地域内循環。⑤既存の地域資源をくっつける、ないものをでっちあげる。⑥よそもの若者馬鹿者と(湖南市地域おこし協力隊と市長)。など、湖南市では、分権型社会ならではの取組みを行っています。
まとめとして、地域協働の主体は、行政、市民活動団体、地域団体、企業などさまざま。連携の形態もテーマによりさまざま。協働には持続可能となる仕組みが不可欠。協働政策の枠組みは、自治立法により担保される必要がある。自覚者が責任者(糸賀一雄)。