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【レポート】市町村ゼミナール H27

H27.第1-12講

 

第1講 テーマ 「地方創生戦略のポイント」


2015年6月11日(木)14:00~16:00 名古屋栄ビル・特別会議室(12階)


「地方創生戦略のポイント」

東京農業大学生物産業学部教授・内閣官房シティマネージャー(自治体・特別参与)   木村 俊昭 氏

 地方創生を行うにあたり、①地域の産業・文化・歴史を徹底的に掘り起し、研き、地域から世界へ向け発信するキラリと光るまちづくり②未来を担う子どもたちを地域で愛着心あるよう育むひとづくり、を信条としています。①の活動では、まずまちの分析を十分に行い、地場産業(基幹産業)の支援→起業する人を支援→企業誘致、というプロセス(事業構想力)が重要です。行政は住民に対し、上から目線の「説得」でなく、「納得」してもらうために具体的な数値を示し、検証しなくてはなりません。その際、地域の住民自らがまちの魅力を知り、気付き行動することが必要不可欠です。そして地産地消だけでなく、地産外商することが出来れば、地方には大きな魅力があります。その成功例として、鹿児島県鹿屋市「やねだん」の取り組みがあげられます。

 また、②の活動では、現在、五感六育(食育・木育・遊育・知育・健育・職育)といった取り組みから子どもたちを育てることも行っています。

第2講 テーマ 「先を見越した風水害対策 ~ 事前防災行動計画(タイムライン)」


2015年6月25日(木)13:30~16:30 昭和ビル9階ホール


「先を見越した風水害対策 ~ 事前防災行動計画(タイムライン)」

環境防災総合政策研究機構、環境・防災研究所副所長   松尾 一郎 氏

 近年の台風、集中豪雨などの頻発、大型化に伴い、被害の甚大化が心配されています。2012年10月、米国東部を襲ったハリケーン・サンディは大きな高潮被害をもたらしましたが、準備された「タイムライン」従って、事前のリスク評価に基づいた数日前から防災対応に関わる全ての組織参加による避難対応の調整を行った結果、人的被害を最小限に抑えることができました。

 地域防災計画とタイムラインの相違点は、後者は災害でどんなことが起こるか頭に置いた上で、時間軸に沿って「誰が」、「いつ」、「何を」行動するのかを明らかにし、具体的な行動をとる計画です。計画に基づいて早めの避難行動、早期復旧のため資機材の退避などを行います。PDCAサイクルによる継続的な見直しを行い、教訓を次に活かす仕組みが必要です。タイムラインは行政だけでなく、企業にとっても生産の早期復旧は重要な課題です。地震のような突発的な災害と違い、水害は事前対応が可能です。

 わが国でも三重県紀宝町を始め、各地でタイムラインの動きが始まっています。先ずは地域の防災に関わる関係者の間で顔の見える日頃からの関係づくりが基本となります。


「三重県紀宝町における事前防災行動計画(タイムライン)の取組み」

三重県紀宝町特別参与・危機管理監   新元 明生 氏

 紀宝町では、平成23年9月の台風第12号に伴い、明治22年8月の十津川大水害以来の大災害を被りました。とくに平成になってから宅地化が進んだ低い土地において大きな被害を受けました。今回の大水害から、大自然の力に人間は敵わない、災害は必ず起きる、役場だけでは大災害に対応できない、行政と町民が連動した防災社会が必要、平時からの準備が大事、早めの防災行動や避難の必要性などの教訓を教えられました。

 教訓からタイムラインによる改善を目指し、紀宝町では、「人命を一番」に、防災・減災の基本方針としました。タイムライン策定には役場関係課を始め、消防団、区長会、医師会、警察、電力会社、NTT、国土交通省、気象庁、三重県などの参加を得て、「誰が」、「いつ」、「何を」、それぞれの役割を決めました。計画策定中の平成26年10月に襲来した台風第18号は試行の機会となりました。試行を通じて明らかになった課題を計画に反映、自助・共助・公助による紀宝町の防災・減災対策に生かしてまいります。

第3講 テーマ 「公共施設再編の戦略と実践 ~ まちづくりとともに」


2015年7月31日(金)13:30~16:30 名古屋商工会議所5階ABC会議室


「公共施設経営改革 ~ キーワードはまちづくり」

東京大学公共政策大学院客員教授   内藤 伸浩 氏

 2032年には、社会資本の多くが建設後50年以上を経過することとなります。限られた財源下において、道路や橋梁などのインフラの全量更新は困難であり、公共施設(ハコモノ)の更新は一層厳しいものとなります。少子高齢化、財政難、拡散した市街地などの社会的背景の中でまちづくりと一体となった公共施設の再編・統廃合を進めるとともに、まちづくりにおいて多心型コンパクトシティ、さらには都市圏を前提とした視点が必要です。

公的不動産についても、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営戦略(PRE/FM戦略)が着目されています。時価ベースの不動産利用を行い、コスト意識を持つなど行政の意識改革と同時に、利用者市民には負担者市民としての自覚を促し、人口減少時代の新しいまちづくり(まちの構造改革)を進めることが政策の柱となります。

集約化したまちづくりの核となる複合型公共施設の試みが各地で始まっています。これらの事業において、PPP、PFIなど民間の知恵と資金の活用は、公共施設を新しく造ることから、賢く使うことへの転換をめざすPRE/FM戦略の要と言えます。


「西尾市が新たなまちづくりの出発点として進める公共施設再配置」

愛知県西尾市総務部資産経営課 主幹   鈴木 貴之 氏

 西尾市では、平成23年の幡豆3町との合併を機に取組みを始めた公共施設再配置は、新たなまちづくりの出発点と位置づけています。少子化・超高齢化、合併に伴う重複施設、施設の老朽化、厳しい財政状況などが背景にあります。公共施設白書やFM戦略など体系的な公共施設再配置のロードマップを示し、積極的な官民連携手法(PPP)のほか産・官・学など様々な連携を活用しています。施設重視から機能優先のハコモノに依存しない行政サービスの提供、公共施設機能の更新優先度などの基本理念、スクラップ&ビルドによる公共施設の総量規制などの基本方針に基づいて再配置を進めています。

 公共施設の現状をデータ化した公共施設白書を平成23年より作成、公表しているほか、行政のほか専門家、市民などが協働して、平成26年には8つの再配置プロジェクトをまとめた第一次実施計画を作成。市民理解を深めるため、4地区での市民説明会、8回にわたる「にしお未来まちづくり塾」、名古屋大学との官学連携によるワークショップなどを行うとともに、その内容は市のホームページで公開しています。

第4講 テーマ 「まちの魅力を創造・発信する! シティプロモーション」


2015年8月19日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階・特別会議室


「まちの魅力を創造・発信する! シティプロモーション」

ビズデザイン㈱代表取締役、明治大学商学部特任准教授   木村 乃 氏

 地域の時代におけるまちづくり政策はどうあるべきか。かつて、個性ある地方づくりと言いながら、リゾート整備で経験したように実際には規格化されたモデル事業をやってきました。定住人口から交流人口が注目されていますが、寂れたまちに人はやって来ません。テレビのバラエティ番組で人気のあるのは、観光地や文化財ではなく、まちの中の当たり前の暮らしの姿です。

 行政は住民が幸せになることを目指すべきです。ご当地愛が強く、中身が充実している地域が、他所から訪ねたくなるところです。まちの人たちが盛り上がっていることがポイントです。商品にブランド依存しすぎると時代の変化についていけなくなります。文化にブランド価値を持たせることが重要です。自らが最大の顧客としての視点を持ち、ベクトルを内向きにすることが、地域の活性化につながります。はやりの地産地消も疑ってみることが必要です。背景に地域の住民の普段の暮らしの存在が不可欠です。

 地域住民が幸せと感じるまちづくりを進めることが、シティプロモーションの原点だと考えます。


「みうらシティセールスプロモーション~三浦ファンの獲得をめざして~」

神奈川県三浦市経済部営業開発課 課長   大澤 克也 氏

 三浦市では、観光入込客の減少による地域経済の衰退、定住意識の低下、一体感の喪失などの課題に取り組むため、2004年に地域資源の「人・まち・自然」を生かした商品開発と営業を行う「営業開発課」を設置しました。営業開発課の役割は、三浦市民にわが町を再認識してもらう内向きの活動と、対外的にシティセールスを行う外向きの活動の2本立てからなります。

 主な活動として、明治大学と連携したシティセールの拠点、三浦市東京支店(なごみま鮮果)の運営、地域資源を活用した教育旅行誘致事業、トップセールスによるインバウンド事業、国内誘客を拡大するためのマグロ等を使ったオリジナルメニュー開発、鉄道会社・道路会社・船会社等と連携した誘客の取り組み、三浦国際市民マラソン上位完走者のホノルルマラソンへの派遣、フィルムコミッション活動、みうら夜市の開催などを行っています。三浦市のシティセールスにおいては、YESからのスタート、現場主義、“WIN WIN”の関係構築、スピード感、まずは目的を見つけること、などを大事にしています。


第5講 テーマ 「地域の企業と若者をつなぐ、若者の定住・UIJターンの促進」


2015年9月15日(火)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング12階・特別会議室


「地域の企業と若者をつなぐ、若者の定住・UIJターンの促進」~地域人材育成力を育む「地域人材コーディネート」機能構築へ~

NPO法人ETIC.チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト事業部 マネージャー   伊藤 淳司 氏

 地域の中小企業が抱える課題と、若者をつなぐ理由はどこにあるか。インターンシップには、短期の見学、体験的なものから、長期間にわたる実践的インターンシップまで多様です。注目されている実践型インターンシップは、学生が企業の中に入って、新しいプロジェクトを社長と一緒に立ち上げ、実践することで会社の役に立つと同時に自分も成長しようというものです。その際、大切なのは学生が積極的にチャレンジできる環境を用意、学生のポジティブなマインドを醸成することです。

 新しい事業に参入するための人材不足も企業側の課題です。地方の中小企業では、一緒に経営革新に挑む若者が求められています。インターンシップを通じて、今まで出会えなかった人材と、質の高いトライアルが可能です。新規事業の立ち上げ、優秀な人材との接点、自社組織に変化が見え始めた企業など成果が見られます。そこで企業と学生をつなぐ「まちの人事部」とも言える地域コーディネート機関の役割は大きく、各地で地域の実情を踏まえた組織化が進んでいます。


「若者と中小企業をつなぎ、挑戦でつながるコミュニティを育む」

NPO法人G-net 共同代表・理事   南田 修司 氏

 G-netは岐阜を拠点に設立15年、地域コーディネート機関として主に岐阜の企業と岐阜や名古屋の若者をつなぐ活動をしています。背景として、就学、就職、結婚に伴う若者の岐阜県から県外への流出があります。チャレンジする若者の育成と合わせ、魅力ある中小企業育成を通じて地域の活性化につなげることを活動の柱としています。

 主要な取り組みとして、①中長期の実践型インターンシップ、②「みぎうで」に特化した就職採用支援サービスを行っています。実践型インターンシップを通じて、新たな事業の仮説検証も可能です。地域の中小企業、若者の双方にとって、厳しい経営環境や価値観の変化する中で、ミスマッチの多い現状を改善したいと考えています。若者目線での中小企業の魅力発掘、同時に若者を採用できるような企業活動のアドバイス等を通じて、若者×地域をつなぎたい。また、企業のみならず、大学や行政など多様な機関と連携して異文化をつなぐ役割を果たし、県外からのUIJターンもめざしたい。若者の採用による地域の多くの中小企業の経営革新、若者のUIJターンなど、着実な実績を上げています。


第6講 テーマ 「稼げる地域、稼げる自治体をつくる」


2015年10月2日(金)13:30~16:30 愛知芸術文化センター12階・アートスペースA


「産業振興とは何か、稼げる自治体を創る ~地方創生:人口減少時代の地域経営」

(株)ローカルファースト研究所代表取締役   関  幸子 氏

 社会構造の変化の中で地域経営をどう進めるか問われています。人口減少が顕著な地方と、高齢者が急増する都市部では課題も異なります。取り組みにおいて全国同一の基準は不合理であるほか、地域特性を踏まえた施設の複合化・融合化、サービスの融合化と民間との連携などが求められます。地域の特性を生かした産業政策、子ども・子育て支援の充実、新しい人の流れの創出、小さな拠点づくりやコンパクトシティの推進などが必要です。地方版総合戦略が基本的な方向を示すもの、地域再生計画は実施計画といえます。

 地域の産業振興において、自らの地域の分析を通じ成長分野や意欲的に取り組む成長可能企業を徹底的に支援することが肝要です。

 自治体は、仕事や資金の地域還流を念頭に、事業廃止を含む公共サービスの見直し、税金を2回転、3回転するビジネスチャンスの創造・誘導、公共施設・空間の有効活用などコーディネートすることが求められます。


「地域の未来を担う“高校を核としたひとづくり”」

島根県立島前高校魅力化コーディネーター   豊田 庄吾 氏

 島根県海士町では、人口減少が続き、生徒数減により島唯一の島前高校廃校の瀬戸際に。高校の存続を目指すだけでは存続しない、存続には高校に魅力をつけることが不可欠ととらえ、魅力化プロジェクトがスタート。高校の存続は学校の存続にとどまらず、地域の存続ともつながります。魅力化構想とは、魅力的で持続可能な高校と地域をつくることが目標です。かつての教育的リソース・ゼロ状態を改善するため、公立の塾(夢ゼミ)をつくって島前高校から大学進学者を増やすほか、まちづくりコースの設置、島全体を「学校」ととらえ、地域の人づくりニーズに応え地域の担い手育成による人材の自給自足を目指しています。現在、島留学制度により全国から生徒が集まっています。地方で活躍する人材を育てるため、多文化共生、地域課題を自分事として考える時間をつくっています。国公立大学への進学だけでなく、成果は着実に上がりつつあります。地方の活性化には、産業振興や観光だけでなく、教育という切り口のブランド化があってもよいと思います。

第7講 テーマ 「地域と共に変革を起こす、行政チームのつくり方」


2015年10月23日(金)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)


「地域と共に変革を起こす、行政チームのつくり方 ~ 地域に眠る力を掘り起し、自走型地域を実現する『地域コ・クリエーション(共創)研究』」より」

(株)リクルートライフスタイル事業創造部じゃらんリサーチセンター   三田  愛 氏

 人口減少の中、地域の連携を拡大、イノベーションを生み出すため、「自分ゴト・みんなゴト化」と「地域イノベーション」による「地域コ・クリエーション(コクリ、共創)」が重要です。キーワードは、「関係の質」、「やりたいサイクル」、「北極星=未来思考」。関係の質の変化が結果の質をもたらします。やりたいサイクルとは、ポジティブアプローチによる創造です。北極星とは、ありたい未来に向けた「想い」の力の呼び覚まといえます。

 コクリは、時代や前提となる構造が変わって過去の延長線上では解決できない今日的課題を、組織全員が縦割りでなく、前例踏襲にこだわらない「土作り」から取り組みことに意義があります。コクリ5年目を迎え、熊本県黒川温泉を始め、現在、全国15地域チームが都市・国・企業・大学・NPO等、日本中の垣根を越えたコクリを実践中。「コアチーム」創り→「火起こし」(留意点:風(刺激)、薪の組み方(仕組み)、水(やる気)が必要)。これまれでの事例から、最初は変化が見えにくいが、ある時から急激に変化が始まります。


「地域と共に変革を起こす、行政の「変革チーム創り」研究」

(株)地域のチカラ代表取締役   北岡 敦広 氏

 中央集権国家体制が終焉し、自分たちで課題を発見・解決する能力、地域独自の政策展開が必要。行政運営から地域経営の時代に入った。新たな企画立案の欠如、市民との距離感、乏しい自主財源などを背景に、民間的人材マネジメント、職員の意識改革が求められてきました。しかし、旧態依然とした組織、縦割り行政、外部との連携不足、行政まかせ、など、行政、地域双方に課題が存在しています。そのため、地域と共に変革を起こす「行政変革コアチーム創り」をスタート。そこでは、関係の質→思考の質→行動の質→結果の質を循環させる「組織の成功循環モデル」を基本とし、地域巻き込みセッションでは、未来みんなゴト会議を開催、主役は市民、行政は力を引き出すファシリテーターとして、未来思考の化学反応、うねりを生み出すよう動き始めました。

 その結果、個人の変化、チームの変化、外部との関係性の変化が大きく前向きとなり、行政も市全体の視点を持ち、市民と協働しながら強い市を創るプロデューサーとして成長。


第8講 テーマ 「高齢者を元気にするまちづくり」


2015年11月2日(月)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 大会議室(12階)


「和光市における地域包括ケアシステムの実践」

埼玉県和光市保健福祉部福祉政策課長   阿部  剛 氏

 超高齢社会における社会保障費の増大は大きな課題です。この問題への“特効薬”はなく、地道な地域包括ケアシステムの充実がポイント。高齢者個別の課題及び地域の課題等の見える化を通じて需要量を把握し、介護保険事業計画等へ反映させることが必要です。

 和光市では在宅医療を充実させ、自立した生活の支援を住み慣れた地域で続けることができるよう、認知症リスクなど各地域別の見える化を図っています。また、居住形態に合わせた的確なサービス内容を検討し、在宅介護・医療、病院とのICTの活用し相互が連携した医療サービスの提供、一般高齢者施策と合わせ市独自の特別給付、他制度・多職種の連携などを通じて、要介護者の自立支援を進めています。和光市では、ケアプランの調整・支援、ケアマネジメントの質の向上、関係者間の連携、資質向上を図る上で、コミュニティケア会議が重要な役割を果たしています。和光市では、平成30年度を目標に、高齢者、子ども等に関わる各種ケアマネジメントの一元化を目指しています。


「元気づくり」は「地域づくり」!~ 健康増進・介護予防事業から ~

三重県いなべ市福祉部長寿福祉課長   伊藤 俊樹 氏

 いなべ市では、地域の高齢者を対象に、「一般社団法人 元気クラブいなべ」を立ち上げ、「元気づくりシステム」を、実施しています。運動を地域のお年寄りに習慣化してもらうため、ゲームや体操などを講座として受講してもらう取り組みです。参加したお年寄りが仲間意識を深め「元気リーダー」となり各地域に持ち帰り普及してもらいます。

 元気づくりシステムの普及により、介護認定率、参加者一人当たりの国保医療費の低減などといった成果も出ています。また、高齢者の健康づくりは、地域の元気づくり、公助から互助、共助、自助の比重の高い社会への移行など、地域活性化にも寄与しています。元気づくりメニューをより幅広いものとするため、地域おこし協力隊制度など他事業・制度の活用も進めています。こうした多くの効果を踏まえ、公助だけでなく住民が主体的に参加し自らが担い手となる社会を目指し、地域包括ケアシステムの構築に元気づくりシステムを活用したいと考えています。


第9講 テーマ 「リノベーションによるまちづくり ~ まち再生手法としての可能性」


2015年11月19日(月)13:30~16:30 昭和ビル 9階ホール


「リノベーションによるまちづくり ~ まち再生手法としての可能性」

都市計画家 (株)サルトコラボレイティヴ代表   加藤 寛之 氏

 リノベーションを通じてまちをどのように変えていくかお話ししたい。まちに元気がない本当の理由は、行く用のないまちになってしまったからではないか。まちを元気にするには、まちの価値を再発見し、新しいチャレンジが生まれる仕組みが必要です。リノベーションまちづくりは、その仕掛けをつくること。まちに求められている価値がこの20年の間に変わっています。商圏という概念が消滅。中心街にいることに意味を持たせるため、エリアの価値をリ・ブランディングする。自分たちのまちの現在地を知り、ファンの目線でコンテンツを再評価する。まちづくりはファンづくり。ファンがファンを増やします。

 伊賀では、潜在的ファンのハートを掴むために、伊賀の日常を切り取ることから始めました。ある一定層が反応すれば普及は加速します。まちに新陳代謝=新しいチャレンジが生まれる空気感を創り、リスクテイクする人を増やします。新規顧客獲得体験を通じて、他の既存店舗への波及効果を狙っています。


「北九州市のリノベーションまちづくり」~ 小倉家守構想でつくる官民連携プロジェクト ~」

福岡県北九州市産業経済局新成長戦略推進室サービス産業政策課   片山 二郎 氏

 北九州市のリノベーションまちづくりは、「小倉家守構想」に基づき、パブリック・マインドを持つ民間事業を公共がバックアップするものです。具体的には、まちの課題の再整理、「小倉家守構想」の策定、民間の担い手(家守)の発掘・育成、官民の連携・人材育成、民間が自走しやすい仕組みづくり等です。遊休不動産をリノベーションにより再生、産業振興、雇用創出、コミュニティ再生、エリア価値の向上などを目指しています。

 リノベーションスクールで56物件を扱い、うち17物件が事業化に至っています。小倉地区の一般的な賃貸物件(約40坪)の相場は、家賃、敷金・礼金等、改装費などを含めると300万円を超える初期投資が必要。リノベーション物件のシェアオフィス、ショップは、区画を小割することで月家賃3~5万円とし、安価に事業が始められるように。小倉北区魚町で店が持てることはステータスです。やる気のある若い人たちを中心に街の賑わいや雇用創出につながっており、この動きは北九州市の他地区にも広がっています。

第10講 テーマ 「図書館を核としたまちづくり~まちじゅう図書館の展開」


2015年12月3日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 大会議室(12階)


「図書館を核としたまちづくり~まちじゅう図書館の展開」

NPO法人オブセリズムCEO、演出家   花井 裕一郎 氏

 図書館運営は、まちを元気にするわくわく演出プロジェクトと捉えています。そのような空間を創るためには、既成概念を取っ払い、子育ての場、学びの場、交流の場、情報発信の場となることが大切です。この活動の基礎として、民間主役の図書館建設を行うために、図書館建設運営員会18回、幹事会13回、運営部会6回、電算化部会10回を行いました。 

 また、予算の関係上に引っ越しボランティアとして近隣小学校の生徒が手伝ってくれたことにが、図書館や本自体に愛着を持ってくれるきっかけともなりました。館内は飲食、おしゃべり、スキップ、年末年始の開館、BGMを許可しました。その他にも、子供達を対象に、聞く力養成講座を行ったところ、交流の場として互いの悩みなどを共有できる場となりました。その結果として、平成19年度から平成27年度にかけて、利用者が約7倍になりました。他にも中学生が図書館運営に関わる福智町図書館についても運営をお手伝いしています。


「まちじゅう図書館 伊那図書館の挑戦」

長野県伊那市立図書館長   酒井 淳一 氏

 伊那図書館では、地域の図書館が「知る」行為の起点として、情報と人、人と人とがつながる場所となるように地域の人々と共に図書館運営を行っています。図書館という「ハコ」や仕組みにとらわれない新鮮な取り組み、新しい公共空間を創ろうという活動が、地域資源の再生につながると考えています。その中でも特徴的な取り組みである、まちじゅう図書館は、平成22年にはじまりました。この取り組みは地域の図書館が地域の方々の持つ本を活用して、まちあるきイベントなどを通じて本と人、人と人を結びつける場所となることを目指したものです。本のリサイクルや、参加加盟店が地域通貨を活用したまちあるきなど、体験型・参加型のプログラムの提案や実践に重点を置いています。

 これは、様々な地域課題を図書館業際課題であると捉え、住民に活動する場所を提供してくことが、行政が行うべき支援サービスの一つであると考えています。

第11講 テーマ 「地域包括ケアにおける家族介護者の位置づけと支援」


2016年1月25日(月)13:30~16:30 昭和ビル9階


「地域包括ケアにおける家族介護者の位置づけと支援」

高齢社会をよくする女性の会・広島代表   春日 キスヨ 氏

 介護とは、介護者と要介護者間の相互作用であり、①ケア・ニーズの認知、②ケア・ニーズ充足の方策決定、③ケア・ニーズの直接的充足、④ケアを受けること、の4フェーズからなります。

 近年、介護を担う家族において大きな状況の変化が見られます。別居介護の場合は、女性の加重負担、一方同居介護の場合は、夫や息子による介護の増大などです。特に老老介護や、増加するシングル子世代の仕事と介護の両立問題のほか、介護家族において介護に専念可能な家族の不在という深刻な課題が顕在化しています。これは、国が描く家族介護像とのかい離です。家族介護に困難を持つ家族の増大は、要介護者のみならず介護者にも支援が求められています。つまり、支援の受け手側に求められる一定の能力や地域特性を踏まえた対応は、高齢化などをはじめとする支援提供側が抱える課題です。これらを克服した地域包括ケア体制の構築が急務です。

 


「家族介護者支援の実際」

NPO法人てとりん 代表理事   岩月 万季代 氏

 ケアラーズ・カフェで家族介護者をサポートする活動を行っています。活動で大切なことは、アセスメント・シートを活用して、一人ひとり異なる介護者の置かれた状況を正しく見立てることをしっかりと行い、介護者の悩みや不安を解消し、前向きに取り組むきっかけを作ることです。在宅で介護を行っている人は、「家族だから自分で介護したい」という責任感が大きな負担となるケースが多くあります。カフェを中心とする活動を通して、介護者の心身の健康・経済・生活が続けられるよう、人々のつながりを作り、適切な助言、支援を通し、地域社会で人々が支え合える街づくりを実現したいと思います。


「家族介護者の対話の場 オレンジカフェみずほ」

名古屋市瑞穂区西部いきいき支援センター センター長   岡野 智彦  氏

名古屋市瑞穂区西部いきいき支援センター 主任介護支援専門員   居相 富美子 氏

 瑞穂区社協地域福祉活動計画、同地域包括ケア推進計画に基づき、社会的孤立から新たなつながりを創る場として、①孤立死防止、②家族介護者支援、③認知症ケア体制、④担い手発掘・育成、⑤階層別地域ケア会議などのサポート体制を進めています。

 オレンジカフェみずほは、家族介護者が参加しやすい時間帯に配慮し、多様な場所(施設・喫茶店等)で開催する、参加者同士の仲間づくり、相談し合える関係づくりを目的とした場です。施設と一緒になって運営する協力体制を意識して実施しているほか、地域との連携では喫茶店を会場にして気軽に参加できる場や仕組みづくりを作る活動を進めています。

 

第12講 テーマ 「世界にはばたく地域ブランド『めがねのまちさばえ』」


2016年3月23日(水)14:00~16:00 昭和ビル ホール(9階)


「世界にはばたく地域ブランド『めがねのまちさばえ』」

福井県鯖江市長   牧野 百男 氏

 鯖江市は、眼鏡、繊維、漆器の地場産業が盛んなものづくり産業のまちです。鯖江を代表する産業である「めがね」を地域ブランドとして確立すべく、スマートグラス開発や世界を視野に入れた見本市開催などを進めています。漆器産業では、国内外の若手デザイナーによるデザインコンテストや商品化を進め、伝統工芸とITを融合した取り組みを進めた成果として、鯖江にIターンUターンする若者も増えています。

 鯖江市では、政策の三本の矢として、「学生連携のまちづくり」「市民主役のまちづくり」「オープンデータによるITのまちづくり」を掲げています。「学生連携のまちづくり」では、古民家を活用したアートキャンプを行い、県外から多くの大学生を受け入れている河和田アートキャンプの取り組みが評価され「第6回地域再生大賞」の東海・北陸ブロック賞を受賞しました。

 2008年からは、鯖江市地域活性化プランコンテストをスタート、毎年20事業ほどが学生たちから提案され、7割程度が実際の行政計画に反映されています。他にも「鯖江市役所JK課」という女子高生が所属する部署も発足させ、行政への新しい視点を反映させています。この取組みをきっかけに「OC課」という主婦が所属する部署も発足し、婚活イベントやカフェを開催、平成27年度にはふるさとづくり大賞の地方自治体表彰(総務大臣賞)を受賞しました。

 また、オープンデータによるITのまちづくりでは、観光や、文化などのデータを民間企業がアプリなどを開発し市民に積極的に公開しています。

「地方から国を変える」という高い志のもと、住民参加型のまちづくりを今後も進めていきます。