H28.第1-12講
第1講 テーマ 「地域を変えるデザイン ― 市民の創造力で地域の課題を解決」
2016年4月22日 13:30~15:30 愛知芸術文化センター12階・アートスペースA
「地域を変えるデザイン ― 市民の創造力で地域の課題を解決」
issue+design代表 筧 裕介 氏
現在日本は、人口減少や超高齢化、景気の低迷などの複雑な問題が山積みであり、世界でも類を見ない課題先進国です。この問題を解決する上で、デザインの活用が有効です。まちづくりにおけるデザインとは、「論理的思考や分析だけでは読み解けない複雑な問題の本質を、直感的・推論的に捉え、そこに調和と秩序をもたらす行為」を指します。今後は、市民同士が協働しながら国や自治体は側面支援を行う自助・共助形社会への変化こそが求められています。これまでの行政サービスを維持することが困難となるため、住民自身が魅力ある地域の発信者になる仕組みが必要です。
今、地方で必要なことは、物質的にないものを嘆くのではなく、地域に当たり前にあるものに焦点を当てその魅力を外部へ発信して地域のファンを創り交流を促すことです。このことで地方の魅力は再発見され、その地域らしさもデザインされていきます。
第2講 テーマ 「東日本大震災から5年―復旧復興の現場から学ぶべきこと」
2016年5月18日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング
「岩手県宮古市の震災復興の取り組み」
岩手県宮古市都市計画課復興まちづくり推進室 花坂 真悟 氏
震災で津波の大きな影響を受けた岩手県田老地区では、復興まちづくり計画を住民と協議した上で策定し、復興に向けた取組みを進めています。この策定から学んだことは、日頃から都市計画図、道路、水道、下水道などの図面情報を役場内で共有することが必要だということです。行政が空き地や空き家などの低未利用地を把握することが、災害時の仮設住宅や仮設店舗などの迅速な用地確保に繋がります。
自治体内部の協力体制、復興に向けたまちづくりに必要な業務は常に変化し続け、住民との協働が必要不可欠であり、今後も日常的な協力体制を継続することが必要です。通常の条例では、大規模被災時に臨機の対応ができない場合があり、被災時を見据えた条例の整備も必要と考えられます。常に「災害」を「想像」しながら「対策」を「創造」するためには行政と住民、学者やシンクタンクなどの学識経験者との協働体制を日頃から構築していくことも重要です。
「岩手県釜石市の震災復興の取り組み」
岩手県釜石市社会福祉協議会生活ご安心センター 副センター長 菊池 亮 氏
釜石市生活ご安心センターが設置されたのは、制度や仕組みになっていないサービスを提供する個別援助と地域援助を総合的に展開するソーシャルワークの構築が目的です。個別支援だけでなく地域支援を実施し、「社会資源の開発」が求められている役割です。
震災直後は物資支援が主な活動でしたが、避難生活(仮設暮らし)の弊害のケアや集合住宅におけるコミュニティの構築などへ課題が変化してきています。
現在では、見守りの充実(孤立防止)と被災者支援情報の一元化を行っており、被災世帯の見守り訪問に係る社会福祉協議会との連携と個人情報の共有を含む見守り訪問活動等に関する包括協定を締結しています。
復興公営住宅におけるコミュニティ形成を図るために、自治会立ち上げの支援、コミュニティ形成支援のマニュアル化を実施しています。物質的な支援だけでなく住民による支え合いができるコミュニティ構築が、今後重要な社会資源と考えています。
第3講 テーマ 「地方創生のための新たな資金調達の方法と可能性~ふるさと納税制度・クラウドファンディングの活用」
2016年6月18日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング
「FAAVO 地域の「らしさ」を誰もが楽しめる社会をつくる」
㈱サーチフィールド取締役・FAAVO事業部責任者 斉藤 隆太 氏
FAAVOは「地域を盛り上げるプロジェクト」の支援に特化した、購入型クラウドファンディングサイトです。クラウドファンディングには、寄付型(リターンなし)、購入型(リターンはモノ/サービス/権利)、金融型(金利、配当など)に分けられます。現在普及してきている背景には、インターネットを通じて個人が大多数の人から少額の資金調達が可能になったこと挙げられます。
地方に特化したプロジェクトを支援することで、地元を離れた都市部に在住する「地元好き」の人々がオンラインで新しい地元のつながりを生み出しています。現地での綿密なサポートを行う「エリアオーナー制度」を設け、全国59エリアに広がっています。今後より活動を広げるために、ストーリーに沿ったリターン設定、地域の人がみんな知っている場所でのイベント、まちの小さなアイデアを拾っていくことなどが必要だと考えています。
「ふるさと納税を活用した地域支援」
株式会社トラストバンク 田村 悠揮 氏
ふるさと納税の特徴は、①寄付先の自治体が選べる②複数の自治体に寄付ができる③寄付の使い道を選べる④お礼の品がもらえる⑤税金が控除される、などが挙げられます。平成27年度の実績は、約1653億円(前年度比約4.3倍)、約726万件(同約3.8倍)と年々増えています。この結果、生産者の販売販路の変化を生み出すきっかけとなり、お礼品でのまちでPR活用や、寄付地域への新たなファンを獲得することにも繋がっています。
ふるさと納税で集まった資金を地域に活用する取り組みとして、「ガバメントクラウドファンディング」という寄付したお金の使われ方が見える仕組みも作っています。取り組みの一例として、お礼品をモノで返す形ではなく、熊本地震の寄付金として新たな復興支援にも活用されるものもあります。今後の課題として、お礼品競争だけに終わらせず、地域と人を持続的に結びつける取り組みが重要であると考えています。
第4講 テーマ 「ストック活用によるまちの価値の創造」
2016年7月5日(火)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)
「まちに暮らしとしごとの未来を埋め込む ―リノベーションの世界― 」
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授 松村 秀一 氏
人口一人当たりの住宅は、米国0.42戸/人に対して、日本は0.48戸/人と、日本は今や住宅ストック大国です。これまで、建築は住宅と言うハコを生産する産業(ハコの産業)であったものが、より望ましい生活の場を構成・提供する「場の産業」と変わりつつあります。あり余る余剰空間を利用者とどう結び付けるか、建築の可能性は大きく広がろうとしています。建築の新しい仕事のかたちとして、①生活する場からの発想、②空間資源の発見、③資源の短所を補い長所を伸ばす、④空間資源の「場」化、⑤人と場を出会わせる、⑥経済活動に埋め込む、⑦生活の場として評価すること、この7つの視点をリノベーションの軸に据えることが重要です。まちに暮らしとしごとの未来を埋め込むことと=リノベーションは、生活者の組織化とスモールビジネスの集積、職域のクロスオーバーから生まれる付加価値、まちで暮らすことが仕事・自身の仕事の拡張と言えます。
「豊島区リノベーションまちづくり ~ママとパパになりたくなるまち、なれるまち~ 」
東京都豊島区都市整備部住宅課長 小池 章一 氏
日本創生会議による人口推計で、人口構成などから豊島区は、東京23区中、唯一消滅可能性のある都市とされました。消滅可能性都市から持続発展都市への転換を目指す取り組みが、「豊島区リノベーションまちづくり」です。豊島区の住宅の多くは小規模かつ老朽化の比率が高く、空き家も多い状況です。豊島区のリノベーションまちづくりは、①単なるリフォームや空き家対策でない、②民間事業者による自立的な経営、③地域を巻き込み、地域の課題を解決し、地域の価値を高めることを基本としています。子育てしやすく住み続けられるまち、アーティストや起業家が活動しやすいまち、外国人も楽しめるまちを目指しています。まちを変える仕組みや暮らしづくりの担い手を支えるため、まちづくりの各段階において、官民学ネットワーク、遊休不動産情報提供、家守会社の育成・認定、規制緩和・各種支援制度などを戦略的に実施しています。
第5講 テーマ 「自殺対策について、自治体ができること、すべきこと」
2016年7月22日(金)13:30~16:30 オフィスパーク名駅プレミアホール403ABC
「誰も自殺に追い込まれることのない社会へ ~自治体の責務と役割~ 」
NPO法人ライフリンク 代表 清水 康之 氏
我が国の自殺率は世界8位、アメリカの2倍、イギリスやイタリアの3倍と多く、現代日本社会において、自殺は国民的リスクと言えます。国民の社会的立場や職業などにより、自殺に至る要因は様々であり、多くの要因が複雑に連鎖しています。自殺を減らすための有効な方策とは、当事者本位の生きることの支援であり、人がそうした状況に陥ることのない社会を創ること。自殺対策は、地域・社会づくりでもあります。こうした背景で生まれたのが、自殺対策基本法です。
自治体の自殺対策の一例として足立区の取り組みを紹介しましょう。①関連団体とのネットワーク強化、②「気づき」のための人材育成、③ハイリスク群に対するアプローチ、④区民への啓発・周知の4本柱で問題解決へ導く活動を行っています。自殺対策(生きる支援)が、地域づくりの絶好の切り口になります。新しいつながりが、新しい解決力を生みます。生き心地のよい社会づくりが目標です。
「東京都荒川区における自殺対策」
東京都荒川区福祉部障害者福祉課こころの健康推進係 与儀 恵子 氏
荒川区の自殺予防事業は、①ゲートキーパー研修を始めとする人材養成、②庁内部課長連絡会・精神保健福祉連絡協議会などネットワーク連携、③自殺予防講演会・ホームページ充実など普及啓発、④救急医療機関と連携した自殺未遂者支援、⑤若年世代の自殺予防相談など若年層への支援を行っています。とくに自殺未遂者支援において、地元医療機関と情報共有を行うと共に、就労支援・居場所の紹介、障害者福祉サービスの利用、医療・生活保護・弁護士などによる寄り添い型支援、こころの健康相談、訪問・面接など、関係機関と連携し、ネットワークで支援。また、若年世代への支援として、教員向けゲートキーパー研修、インターネットによる情報提供、NPO法人Bond Projectによるパトロール・声掛け・日暮里相談室での相談を行うなど、区では全庁的に自殺予防に向けた「生きる支援」に取り組んでいます。ンなど、着実な実績を上げています。
第6講 テーマ 「地域をつくる人をつくる! 地域課題解決型キャリア教育」
2016年9月29日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)
「地域をつくる人をつくる! 域学連携の可能性と今後の展開」
慶應義塾大学SFC研究所所長・総合政策学部教授 飯盛 義徳 氏
地域づくりにおいて大切なのは、人づくりです。私のゼミでは、「地域の元気の処方箋」(効果的なプラットフォーム設計)を探求しています。毎年、全国各地を訪ね、地域の課題発見、元気プロジェクト活動を展開、最終成果としてまとめ、多くの地域で活動が引き継がれています。地域イノベーションで大きな役割を果たしているのがファミリービジネスであることに着目、その地域貢献、持続性などを主な研究テーマとしています。
地域づくりの要点は、効果的なプラットフォーム設計にあり、そのための地域資源(能力)の結集、新しいつながりを生む環境づくり、参加のインセンティブづくり、自発性の醸成、機動的な対応ができるオープンなインフラ整備などへの工夫が必要です。域学連携は、柔軟な境界設定による外部の視点、自由な発想や思考、多様な資源の結合などを通じ、実践の萌芽、地方創生への可能性を秘めています。
「まちにつなぐ、まちで育つ、まちが変わる」
岐阜県立可児高等学校教諭 浦崎 太郎 氏
今、地域と高校との連携が問われています。社会の高度分業化は、子どもたちの主体性の低下、学力の低下、地域との分離、ひいては地域・地方の衰退につながる危険性をはらんでいます。高校・大学を通じ、地域課題を発見・解決する学習活動へ参加することで、社会形成指向を高め、地元に対する愛着や当事者意識や地元で生きるためのスキルを深めることで、社会人となって地元に戻っての活動を通じて地域の再生につながることが期待されます。高校にとって地域が必要だけでなく、地域が生きる上でも高校は必要であり、高校と地域をつなぐ仕組みづくりを通じて、地域の5年後を変えることができます。
可児高校では、市役所を始め地元関係機関との協働による、多文化共生、子育て支援、防災、地域医療、金融・地域経済など、具体的な地域課題解決プロジェクトを用意しています。継続性を保つため、プロジェクトは地域主体による連携が必要です。
第7講 テーマ 「子育て家族への切れ目ない支援『ネウボラ』 ― 子育て世代包括支援の展望」
2016年10月13日(木)13:30~16:30 名古屋商工会議所 第5会議室(3階)
「子育て家族へのひとつながりの支援『ネウボラ』 ~ 子育て支援の新たなステージ ~ 」
吉備国際大学大学院社会福祉学研究科長・教授 髙橋 睦子 氏
フィンランドでは、1944年にネウボラがスタート、1980年代半ばから90年代末にかけて、多様な子育てを支援するため、子育ての方法、働き方に応じた支援制度の多元化が図られ、メニュー選択の幅が広がっています。ネウボラは、利用者中心のひとつながりの出産・子育て支援であり、全国で約800か所のネウボラでは、全員・個別のワンストップでの支援をかかりつけの担当者・専門職が妊娠期から就学前まで、妊娠・出産・子育て情報などをサポートするほか、家族のコミュニケーション、様々なリスクの予防、早期発見、早期支援などのサポートを行っています。ネウボラに完成形はなく、サービス内容について実践+調査研究/検証+政策を繰り返し、自治体ごとの新しい工夫が続いています。我が国にフィンランドの制度を直輸入できるものではなく、他国の制度の優れたエッセンスを見失うことなく、日本なりの強みを活かした「よりよい仕組み」を工夫して欲しい。
「浦安版ネウボラの構築 ~切れ目ない支援を目指して~ 」
千葉県浦安市こども部こども課少子化対策室長 並木 美砂子 氏
浦安市では、合計特殊出生率が低いこと(1.09)、子育て世帯の9割が核家族、ひとり親世帯の増加、晩婚・晩産傾向、高い未婚率などの現状に対して、子育てについて相談すべき身近な人がいない、親の肉体的不安・精神的不安定、子育ての経済的負担感などが「浦安版ネウボラ」導入の背景です。少子化対策として、適婚・適産情報周知、婚活支援、妊娠・出産から子育てにわたる切れ目のない支援を行うため、庁内各部門横断的な少子化対策基金事業(平成28年度・20事業)を実施(基金30億円)。このうち、こどもプロジェクト事業として、子育てケアプラン作成(全3回)、2回目のケアプラン作成時に「こんにちはあかちゃんギフト」「こんにちはあかちゃんチケット」、3回目のケアプラン作成時に「ファーストアニバーサリーチケット」を配布しています。利用者からは、子育ての不安軽減、市のサポートへの安心感のほか、あかちゃんギフトへの好評の声をいただいています。
第8講 テーマ 「財政シミュレーションゲーム“SIMふくおか2030”が開く私たちの未来」
2016年11月25日(木)13:30~17:00 名古屋栄ビルディング大会議室(12階)
「財政シミュレーションゲーム“SIMふくおか2030”が開く私たちの未来」
福岡県福岡市経済観光文化局 創業・立地推進部長 今村 寛 氏
本講は、いつもの市町村ゼミナールとは進め方を変え、ゼミナール前半で「財政出前講座」の資料を基に、福岡市を例に人口・税収とも増加傾向にあるにも関わらず、それ以上に義務的経費の増大により財政はひっ迫という、今日の自治体が直面する厳しい環境を参加者が共有します。
次にいよいよ財政シミュレーションゲームの開始です。ゲームでは、各テーブルの参加者6名が各部門の局長となるチームを組み、それぞれの所管する事業について、義務的経費増大や新しい政策課題への対応のため、他の局長との対話によって事業の取捨選択を行い理想のまちづくりを進めます。必要経費のねん出方法は、事業の廃止か借金のどちらかに限られます。事業の見直しに当たっては、「お金がない」ことを理由にするのではなく、事業の必要性や効果、他の事業との優先順位、事業廃止後の影響を考慮した代替策についても市民に分かりやすく説明、理解を求めることが必要です。
2020年~25年の政策判断の選択は社会保障費増への対応、大型バス駐車場と免税店整備、公園遊具の緊急総点検、2025年~29年は社会保障費増への対応、アセットマネジメント経費増への対応、ドーム球場建て替えへの対応、イースト区分区への対応、2030年では世界の都市の住みよさランキングに高評価を得るため、2020年以降に借り入れた借金の繰り上げ償還による健全財政の実現、財源ねん出のために削減する事業、政策の取捨選択によって実現したまちの強みは何か、みんなが住みたくなる新たな「市の名前」を考えます。
シミュレーションゲームを通じて、政策の取捨選択を財政部門に委ねるのではなく、全庁協働による自立経営を実現すること、とくに理想のまちづくりを進めるためにビルド&スクラップの考え方に立って実施すべき政策を進めるためには現在やっていることを自治体の各部門が認識することの重要性を学びました。
第9講 テーマ 「観光地経営に必要な推進組織 ― 日本型DMO成功のポイント」
2016年12月15日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)
「観光地経営に必要な推進組織 -日本型DMO成功のポイント-」
近畿大学経営学部商学科 教授 高橋 一夫 氏
訪日外国人観光客の増加は著しいが、更なる増加・拡大には、民間の観光イノベーションが欠かせません。担い手のひとつとなるDMOは、権限と責任を持った組織となることが必要です。国においても、まち・ひと・しごと創生総合戦略や日本再興戦略において、地域の観光振興を戦略的に推進する専門的組織、世界に通用する観光地づくりとマーケティングを行う官民一体の観光地経営体(日本版DMO)確立が急務とされています。
観光地経営とは、持続的・計画的に意思決定を行い、様々な主体と調整を行いながら観光事業を管理・遂行することです。とくに外国人観光客への対応として、ITを活用し、旅行会社(発地型)とDMO(着地型)が連携した観光地づくり、観光振興を図ることが重要です。我が国の従来型の脆弱な観光協会から脱皮するため、欧米のDMOの組織運営、ガバナンス、運営経費確保策、行政とDMOの連携など、学ぶところは多い。
「豊岡版DMOについて 事例紹介 」
一般社団法人豊岡観光イノベーション 川角 洋祐 氏
豊岡市は市内に多くの特色ある観光資源を持ち、観光が最も大きな産業となっています。2015年の観光客入込者数は約430万人、うち宿泊者数は約120万人と横ばい状態です。こうした中で、外国人観光客は2011年の約1,000人が15年には約34,000人と30倍以上の急増を見ています。市では2020年の外国人観光客を10万人に増やす目標を持っています。
観光地のマーケティング機能、地域・事業者をそれぞれつなぐ機能、地域の素材や営みを体験する商品づくりを進めるため、専門知識を持った人材を民間企業からの起用、宿泊予約サイトの運営、意欲ある事業者との連携などを行う、豊岡版DMO「豊岡観光イノベーション」を高速バス会社、地域のバス会社、地元金融機関、豊岡市の出資で16年6月に設立。DMOでは、観光客の行動分析、着地型ツアーの企画・販売、旅行博への出展、海外モニターツアーなどに取り組んでいます。
第10講 テーマ 「地域包括ケアの地域づくり」
2017年2月7日(火)13:30~16:30 オフィスパーク名駅プレミアホール403ABC(大一名駅ビル4階)
「地域包括ケアの地域づくり」
藤田保健衛生大学 地域包括ケア中核センター 講師 都築 晃 氏
地域包括ケアは、医療・介護・保健・生活支援・住まいの各分野が連携する幅広い取り組みに、自助・互助も組み合わせて進めるものです。しかし、今日の医療・介護の学校教育で包括ケアに関するカリキュラムは存在しません。学校法人が包括ケアを担う人材育成の介護保険事業所を持つのは本学が全国初。大学病院が介護保険事業所を持つことで、訪問診療との連携を円滑にするほか、地域との連携を高めるため、豊明市地域包括ケア連絡協議会に本大学の地域包括ケア中核センターが参加、包括ケアに関わる様々な職能団体との連携や介護予防の専門的な支援などを行っています。
豊明市、UR都市機構、大学の3者による「けやきいきいきプロジェクト」の一環として、健康づくり、地域の交流、相談などを担う「まちかど保健室」を大学が豊明団地内に設置。また、高齢化の著しい豊明団地に学生が居住し、居住者の買物運搬支援、防災訓練、交流などに参加、地域の現状を理解し、まちづくりができる人材育成をめざしています。
「基礎自治体職員に求められる役割 『地域包括ケア“豊明モデル”から』」
愛知県豊明市健康福祉部高齢者福祉課地域ケア推進担当係長 松本 小牧 氏
豊明市では、豊明団地をモデルとした「けやきいきいきプロジェクト(愛知県地域包括ケアモデル事業)」(平成26年度)を契機に、地域包括ケアを全市に拡大して展開中です。
「普通に暮らせる幸せ」を支えるのが「地域包括ケア」。取り組みにおいて、①事業を縦割りでとらえない、②地域の既存データを活用する、③高齢者の生活課題からスタートする、④国が示す仕組みを新たにつくるより地域にあるものを活用する、などの視点が重要です。豊明市という地域が必要とする包括ケアとは何なのかを明確化した上で、地域の様々な既存の生活支援活動の組織化と支援・活用、民間事業者等による公的保険外サービスの掘出しと活用などを通じて、地域に根ざした各人の尊厳を尊重した自立や人生の支援、多職種の組織的連携と持続可能性をめざす取り組みなど、実践を積み重ねと検証を繰り返しながら、「豊明版地域包括ケア」の構築をめざしています。
第11講 テーマ 「地域イノベーションを創る ― 地域発、世界に通用するブランドづくり」
2017年2月 23日(木)14:00~16:00 名古屋栄ビルディング大会議室(12階)
「シリコンバレー流地域づくり ― 地域プロジェクトは“1勝99敗”、“早くたくさん失敗しよう”」
NPO法人「まちづくりGIFT」代表理事、地域プロデューサー、慶應義塾大学(非常勤講師)
齋藤 潤一 氏
本日は、地域ビジネスで社会を変えるためにはどうするか、皆さんと一緒に考えたいと思います。各地で地域ビジネスが取り組まれていますが、持続可能なものであることが重要です。地域の歴史や文化を次世代につなぐため、これらを支える地域経済が不可欠です。地域ビジネスとは、稼ぐ人材育成を通じた地域経済づくり、まちづくりと言えます。留意点として、補助金“漬け”を避け、ビジネスのための投資にしなくてはなりません。小さなビジネスのスタートには、クラウドファンディングなどを始め、多様な資金調達方法があります。
地域のイノベーションが求められていますが、社会が大きく変化する中で地域ビジネスには柔軟性と素早い判断、対応が必要です。地域ビジネスを通じた地域づくりは、①発見=顧客の声を聞き共通の課題を発見、②磨く=ワークショップで実現可能なビジネスプランを構築、③発信=テスト販売でお金を稼ぐ・結果の分析、①→②→③の取り組みを回すことを基本とします。顧客ニーズの読み間違い、ターゲットの間違いなどを発見した時は、直ちに改善する。時にはコンセプトごと変更することも必要。地域プロジェクトは、小さな失敗を早い段階で見つけ、早く改善する。
イノベーションは、1人の人間の想いから始まります。一人ひとりに想いを伝え、仲間が増え、地域が動き、地域がつながります。地域ビジネスが動き始めます。イノベーションの答えはひとつではありません。チームで役割分担しながらプロジェクトを進めることが必要です。そして、小さな成功を積み重ねながら大きく育てることが持続可能な地域づくりにつながります。
第12講 テーマ 「ないものはない ―離島からの挑戦 ~最後尾から最先端へ~」
2017年3月 21日(火)14:00~16:00 昭和ビル 9階ホール
「ないものはない ―離島からの挑戦 ~最後尾から最先端へ~」
島根県隠岐郡海士町 町長 山内 道雄 氏
私が町長に就任した平成14年には、昭和25年当時約7,000人近くいた海士町の人口は、1/3ほどに減少、超過疎化、少子高齢化、超財政悪化により財政再建団体へ転落寸前の状態でした。島が生き残るため、特別職、一般職員、議員の給料、歳費カットを始め行政と住民の間で危機意識の共有を図りました。
危機脱出をした後は、生き残りをかけた攻めの戦略に移ります。地域再生戦略の柱は、島まるごとブランド化、成長を島の外に求めることです。町政運営のキャッチフレーズとしている「ないものはない」とは、島の資源を始め大切なものはあることを意味します。私は「地産地商」と呼んでいます。役場は「住民総合サービス株式会社」であり、住民の立場に立ち、従来の補助金獲得型行政から提案型行政への転換が必要です。すなわち、これまでの補助金獲得から行政が稼ぐ構図へ行政の役割の転換、東京をマーケットにすること=全国に通用する、高学歴のIターン人材の積極的活用など、自立・挑戦・交流を町の経営指針として挑戦中です。
「まちづくり」の原点は「ひとづくり」にあります。人づくりとモノづくりの両輪によって持続可能な地域が生まれます。また、生徒数の減少で統廃合の危機が迫っていた島前高校も、同校魅力化プロジェクトにより、今や全国から生徒が集まる高校となっています。
ハンデをアドバンテージに、ピンチはチャンス。自立に向かい小さな島の挑戦に終わりはありません。