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その57 地域、社会と大学をつなぐ要に (2017 JAN.ちもんけん VOL.97)

名城大学社会連携センター開設準備室

山本 剛毅 さん 

 2016年春、名城大学の新しいキャンパスがナゴヤドーム前矢田にオープンしました。

 新キャンパスのコンセプトは「キャンパスから地域へ。キャンパスから世界へ。」このキャンパスに、誰もが使える、地域、社会と大学をつなぐ場「社会連携ゾーンshake」があります。この場の企画担当者である山本剛毅さんに、この場に込めた想いとビジョンを伺いました。

 

■「社会連携ゾーンshake」ができた背景

 「社会連携ゾーンshake」はこれまで出会えなかった個人や団体間の交流を生み出し、社会課題の解決に取り組むプロジェクトの創出を設置目的としています。

 現在、地域における大学の存在意義が改めて問い直されています。これまで大学は地域の中の大事な資源として位置づけられながら、双方向につながる機会が少なく大学の持つ資源を十分に活かすことができずにいたのではないかと思います。そこでキャンパス内に誰もが気軽に利用でき、多様な人とフラットにつながることができる場をつくることで、地域・社会と大学の新しいつながりを生み出すことができるのではないかと考えました。

 

■「社会連携ゾーンshake」とは

 キャンパス内にありながら、学生・教職員だけでなく、年齢・職業を超えて誰でもフラットに交流・活動ができるパブリックスペースです。ポスターセッションができるアイデアエクスチェンジスペース、個人ワークからグループワークまでできるワーキングスペース、一人の休憩にもグループでの団らんにも利用できるダイアログスペース、産官学が連携したプロジェクトの活動拠点として活用できる半個室の秘密基地プロジェクトルームがあります。原則として学休日を除き、平日、土日祝日問わず9時から21時ならいつでも誰でも無料で利用していただけます。

 

■これまでの使われ方

 日常的には小さな交流会や個人利用がされており、土日祝日には学会などのポスターセッション、全国的に開催されているアイデアソンやハッカソンの会場、NPOや社会人サークルの交流や勉強会の会場として活用して頂いています。さらに社会連携ゾーンshakeのコンセプトに共感して頂いた社会人有志による団体AKTさんの「名古屋フューチャーセンター」という活動が2016年8月からスタートしました。写真の撮り方やファシリテーション、心理学や数学、お金に関する講座など、学生や社会人が趣味や仕事で得た知識やスキルを活かして平日19時から21時まで毎日交流会や勉強会が開催されています。

 オープンから8か月が経ちましたが、「社会連携ゾーンshake」という場を設け「地域、企業、自治体等多様なセクターとつながり、社会課題に取り組むプロジェクトを創出する」というフラグを立ち上げたことで、愛知県内に限らず幅広い分野の個人・団体に利用していただいており、中部圏における多様な分野での活動量を高める場になっているのではないかと感じています。

 

■自治体との連携の可能性

 現在、社会連携ゾーンshakeでは多様な個人、団体による多様な活動が展開されているとともに、設置目的に共感して頂いた34の団体さんにパートナーシップ団体として登録いただいています。ここでうまれたつながりと大学の持つ資源を県内外問わず様々な自治体とつなぎ、新しい動きを生み出す一助を担っていきたいと考えています。名古屋駅から最短20分と利便性のよい場所にあるので、shakeを中部エリア/名古屋での情報発信や活動拠点と位置づけて頂き、中部の若者や多様な人材とつながれる場として活用してもらえるとうれしいです。すでに岐阜県下呂市と本学の理工学部建築学科のコラボレーションによる下呂市の地方創生プロジェクトの拠点として利用して頂いております。

 

■「社会連携ゾーンshake」のビジョン

 セクターを超えて多様な人材が集まり、新たな動きを生み出し社会課題を解決していく流れは今後さらに一般的になるのではないでしょうか。その中で「社会連携ゾーンshake」を多様な人材の交流から新しい価値を生み出すプロジェクトが生まれる場所に育てていきたいと考えています。また在学生にとっては社会とつながりが持てる場となり、あこがれの社会人や社会課題と出会い、自分も何かやってみたいという想いにつながる場所にしたいと思います。

 2016年は多様な団体、個人の皆さまとつながることができ、shakeを一緒に育てていただきました。2017年は、この多様なつながりを学生につなぐこと、多様な団体間のコラボレーションを支援すること、そして文系から理系まで学部学科がバランスよく揃う本学の教育・研究・学生活動につなげ、学生・大学・地域の活動量を高めていきます。

 

 

名城大学経営本部社会連携センター開設準備室(天白キャンパス 本部棟 4 渉外部内)

担当:山本

TEL052-838-2006 FAX052-833-9494

HP:https://www.meijo-u.ac.jp/social/shake/

E-mailshake@ccml.meijo-u.ac.jp

名城大学社会連携ゾーンshake(ナゴヤドーム前キャンパス 西館2階)

461-8534 名古屋市東区矢田南 4-102-9

TEL052-832-1151(代)

 

 

 

(文責:主任研究員 宮原知沙)

 

その58 誰かのためになることを楽しめるまちづくりを目指して (2017 JUN.ちもんけん VOL.98)

                           あま市市民活動センタースタッフ 

             NPO法人大ナゴヤ・ユニバーシティ・ネットワーク理事 小林 優太 さん

 今回は、あま市市民活動センターのスタッフとして、また大ナゴヤ大学のスタッフとして、市民が中心のまちづくり活動を様々な立場で現場で支えている小林優太さんをご紹介します。地域問題研究所としては、平成28年度に大口町でプロモーション講座を開催した際に、写真撮影、取材、まち歩きの講座を、住民目線で楽しく優しく実施していただき、とても評価を頂きました。以下、小林さんのまちづくりに対する想いを寄稿していただきました。

 

<昨日よりほんの少しボランティアが楽しくなるように>

 地域で活動するとあるボランティア団体で、チラシづくりを任せられた人がいました。パソコンが得意な訳でもないし、デザインの勉強をしてきたわけでもない。いつも「よろしくね」ってお願いされるけど、自分のつくったチラシが、良いのか悪いのかもよく分からない。そんな人が、地元で開かれた「チラシづくりセミナー」へ行ってみたら、見やすくて、伝わりやすい、チラシづくりのコツをいくつも知ることができた。そうしたら、チラシづくりが前よりちょっと楽しくなった。これは、私がはたらくあま市市民活動センターで実際にいただいた、嬉しいお言葉です。「誰かのためになることを、もっと楽しめるように」。センター開設から2年半、運営のコンセプトのひとつとして掲げてきた言葉です。

 市民活動は、誰かのためになる取り組みを“ずっと”続けていくこと。継続的な活動であるがゆえに、人手やお金など色々な悩みがあり、疲れてしまう団体が出てくるのは、皆さんご存知の通りです。長く続けるものだからこそ、楽しく活動できるお手伝いがしたい。できれば、“ほんの少し楽しくなる”が積み重ねられるように。

「見やすいチラシのコツを知ったら、もっと良いチラシが作りたくなった」

「取り組みを取材して、広報紙に載せてもらえたのが嬉しかった」

「難しいと思っていた助成金の申請も、サポートしてもらい挑戦できた」

「団体同士の交流会で、活動の話ができる友達が増えた」

 別に目新しいことではなく、どこの市民活動センター、中間支援組織でもやられていることだと思います。でも、そんな日々のお手伝いが、やっぱり一番大切だと思っています。市民活動センターもずっとそこにあるものだから。団体さんがいつも笑って活動できるよう寄り添っていきたいです。

 

<「伝える」「教える」「仕掛けをする」経験を活かして>

 私は、市民活動センターではたらく傍ら、フリーランスのコピーライターや大学の非常勤講師の仕事もしています。誰かの話を聞き、編集して他者に伝えること。情報を整理して分かりやすく教えること。まだまだ未熟ですが、社会に出てから一貫してこうしたスキルを磨いてきました。また、名古屋では大ナゴヤ大学という団体にも所属し、そこではまちの面白いヒトモノコトを、「授業」カタチでイベント化し、参加者さんに楽しみながら学んでもらう場づくりにも取り組んでいます。他にも、ご当地キャラのお世話をしてまちを盛り上げる活動、小学生と地域の狂言をつくりあげる「子ども狂言プロジェクト」、地元の神社やお寺の魅力をPRする活動、歴史好きな人が自由に語り合うイベントの企画などなど、関わってきた活動はバラエティ豊かです。「面白い」と感じたものにはついつい足が向いてしまう性分なんですよね。仕事にボランティアに、小学生から企業の社長さんまで、老若男女問わずたくさんの人たちとふれ合い、言葉を交わしてきました。その経験のひとつひとつが、「伝える」「教える」「仕掛けをする」ための基礎になっています。

“誰に”“何をつかって”“どんな言葉で”伝えたら、メッセージは届くのか?

“あの人たちに”“こんな遊び心を盛り込んだら”楽しく学んでもらえるかな?

そんな問いに頭をひねる日々です。

 「面白くこともなき世を面白く 住みなすものは心なりけり」。幕末の志士 高杉晋作はこんな言葉を残したと言います。捉え方次第で世の中は面白くなる。まちや社会の課題は、難しいことも悩むことも多いけれど、そんな難題とも前向きに向き合えるように。時には文章で、時にはイベントで、積み上げてきたものを活かせればと思っています。例えば、地域の中高生にもまちを考えるきっかけを持ってもらおうと、市長と車座でワイワイガヤガヤと意見交換ができる公開トークイベントを企画しました。「こんなに楽しく話せると思わなかった」。高校生から、そんな嬉しい感想もいただきました。真剣な話題を楽しく語り合える場を、まちにもっと増やしていきたいです。

 

<誰かのためになることを、人生のハリにできる社会に>

 とてもありがたいことに、私の周りにはお手本にしたい人がたくさんいました。遊び心たっぷりに市民活動をしている人。自分の強みを活かして、やりがいをもって市民活動をしている人。市民活動を通して、自分らしい生き方を見つけている人。学校や会社だけでは絶対に出会えない。そんな人たちとの出会いが、人生を豊かにしてくれることを、若い世代にも伝えたい。

 裁縫が得意な人が、ボランティアでご当地キャラグッズづくりに関わって「面白くてしかたない!」と笑っている。バルーンアートの得意な人が、地域の高齢者サロンから引っ張りダコで「必要とされるのが嬉しい」と笑っている。学期の得意な高校生たちが、まちの音楽会で演奏して「楽しかったです!」と笑っている。そんなキラキラしている人の姿を情報として広めながら、同じような場面をまちにもっと増やしていけたらと思っています。まちに関わることが、「たいへん」ではなく「楽しい」と思えるのが当たり前。そんな、まちづくり、ひとづくりを目指しています。

 

(寄稿:小林優太さん、文責:春日俊夫)

 

その59 大阪からの移住者が築120年の古民家で民宿開業「民宿 まほろば」 (2017 AUG.ちもんけん VOL.99)

民宿 まほろば

小西 忠信 さん

真紀 さん

 

 平成26年4月に大阪から愛知県設楽町に移住し、同年9月に「民宿 まほろば」を開業した小西夫妻にお話をうかがってきました。

 

■民宿をはじめた理由は? 縁もゆかりも無い土地に移り住み、知り合いもいないので、色々な人が気軽に立ち寄れる場所、大阪時代の友達も遊びに来られる場所を作り、立ち寄った人が旅の話など、色々な話をしてもらえれば寂しくないだろうということから、民宿を始めようと考えました。また、その以前にも、長野県松本市内に家を借りていましたが、その当時も大阪の友達がツーリングで良く遊びに来ていましたが、その際に手料理を提供し、みんなから好評をいただいていたので、これなら民宿もできるのではないかと思っていました。

 屋号の「まほろば」は、住みよい場所、人が集まる場所という意味があるので付けました。

 

■設楽町津具地区に移住した理由は?

 もともと定年退職したら田舎暮らしをはじめようと、西は島根県、東は新潟県の妙高など、10数年間で全国各地100軒近くの物件を見て回っていました。本命は長野県。信州への憧れがありました。しかし長野県の物件は金額も高く、建物もあまり良いものがありませんでした。

 色々と探している中、平成25年9月に雑誌「田舎暮らしの本」でこの物件を見つけました。この物件は明治時代の木造2階建ての建物で、13DKと土蔵2棟、畑付きの物件。値段も手ごろで、早速、不動産屋さんに案内してもらったり、役場の方、地区の方、近所の方などからも話しを聞いたりしました。本当に一目ぼれでした。特に隣のご主人から今なら農業を教えることができるという言葉が効きました。本来なら定年退職してから移住しようかと考えていましたが、早期退職をして翌年4月に移住しました。

 移住後に地元の大工さんに頼んでリフォーム。自分達もできるフローリングの床張り作業などは大工さんの指導のもとで行ったりしました。また家財道具の片付けでかなり手間取りましたが、なんとか8月には保健所の検査も終わり、同年9月3日に「民宿 まほろば」をオープンできました。

 

■民宿の開業にあたって困ったことは?

 この民宿は旅館業法の簡易宿泊で許可を取っていますが、やはり保健所の認可で色々と手こずりました。キッチンも、洗面所も2か所が必要になったのです。その後、外にピザ窯も設置したのですが、キッチンと一体化していないという理由で、保健所から使用許可が下りず、ピザ窯を使った飲食が提供できないことになるなど、保健所の認可は厳しいと実感しました。飲食店の少ない津具地区なので、将来的にはケーキの持ち帰りやジャムづくりなどもできると良いと思っていますが、これを実現するには別のキッチンが必要と言うことを保健所から言われているので断念しています。若い人が起業をしたいと思っても、規制ばかりではやる気が無くなってしまいます。特区などで起業に向けてやる気になってもらえるベースを作ってもらえるよう、行政も考えてほしいと思います。

 また、食事のメニューを考えるのに頭を使います。ここは一日一組限定で10人までの宿泊が可能です。料金は1泊2食で6,000円。また、周囲に飲食店が無いので、予約制でランチも1食1,500円から提供しています。そのため、地元の田舎の人、宿泊で訪れる都会の人にあわせてメニューも少し変えています。事前に年齢や好みなども聞いてメニューを考え、食材は自分たちの畑で栽培した野菜を極力使うよう心掛けています。

 

■宿泊客はどのような方が多いですか?

 お客さんは基本口コミで広がっています。開業当初は友人からの紹介もあり、大阪の人が多かったのですが、最近は東海3県、愛知や三重の人が多くなっています。また、三遠南信自動車道の開通で静岡県の袋井市や掛川市などからも来られます。特に今年の4月にテレビ朝日の「人生の楽園」に取り上げられたこともあり、それ以来、予約も一杯で、先日は埼玉県から電車とバスを乗り継いで来たという人までいます。

 宿泊客の7割は女性ですが、最近は夫婦で来る方も増えたかなと思います。また、ベルギーやアメリカの女性が泊まったこともあります。

 宿泊客は1泊か2泊の方が多く、夕方にチェックインされ、入浴は隣の豊根村にある温泉、その後、宿で晩御飯を食べ、翌日は近くの白鳥山を登りにいくということを薦めています。ここから南アルプスを一望できる景色は私のおすすめスポットです。

 

■移住にあたって気を付けたことは?

 特に挨拶に心掛けています。村の人は私達のことを知っていただいていると思うのですが、私達は全員を覚えきれていませんので、遠くからでも挨拶をしたり、通り過ぎる車には必ず頭を下げるようにしています。

 また、地域の行事などにも積極的に参加したり、近所の方から漬物の漬け方を教わるなど、地域の方とのふれあいを大切にしています。

 

■今後の夢は?

 保健所の問題もありますが、ケーキやパンを作ってほしいと地元の人から言われているのでやってみたいと思っています。

 今後も多くの方に来ていただき、来て良かったと思われるように、背伸びをせずに頑張っていき、そしてここに宿泊したことをきっかけに移住する人が増えればと考えています。

 

民宿 まほろば

〒441-2601 愛知県北設楽郡設楽町津具字下下留6-1

電話&ファックス0536-83-2280

メール:rabbit90@ivory.plala.or.jp

 

(文責 主席研究員 藤 正三)