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見た・聞いた・考えた

バックナンバー VOL.81

まちづくり人の養成はじっくり腰を据えて  (2012 DEC. ちもんけん VOL.81)

 2~3年前から、自治体や大学の社会人講座などで、まちづくりの担い手を養成するための研修をお手伝いする機会を頂くようになりました。いずれの講座も、自分が生まれ育った地域に貢献し、生きがいや楽しみも得たいと考えているシニア層が主なターゲットになっています。

 しかし、研修から実践へ短期間にステップアップし、彼らの豊かな知識や経験を地域づくりにつなげていくのは容易ではありません。そこで、いくつかの講座から学んだまちづくり研修の留意点やちょっとした工夫についてご紹介したいと思います。

 

■ねらいやステップアップのシナリオを描く

 まちづくり研修と一口にいっても、対象となる方々の関心事や活動経験、受講生に期待する役割、コミュニティの状況などによって実施すべき内容や進め方は異なります。講座のねらいや到達目標(ゴール)を明確にした上で、そこに至るステップを段階的・戦略的に組み立てる必要があります。

 

■学び合いを通じて「対話の作法」を見つめ直す

 いわゆるトップダウン型の会社組織と、多様な主体が異なる価値観を持ち寄っているまちづくりの現場とでは、組織内部の合意形成やコミュニケーションのあり方はおのずと異なってきます。様々な声に耳を傾け、柔軟に自分の“ものさし”を見つめ直すことの必要性について、対話を通じて自ら気づくことができるような学びが重要となってきます。

 

■思いをカタチにするためのノウハウを伝える

 地域社会に役に立ちたいという熱い思いを具現化するためには、その思いを自らが掘り下げるとともに、周囲にわかりやすいメッセージとして伝えることが不可欠です。そのために、目的や対象、活用可能な資源、周囲との連携のあり方など最低限のポイントを押さえながら、漠然とした思いを、少しずつ具体的なカタチにしていくための「企画づくり」のノウハウを伝えることが重要になります。

 

■現場での体験活動を通じた“生きた学び”に触れる

 講義形式の座学だけでなく、NPOやボランティアグループ、自治会などのまちづくりの現場にインターンシップ(現場体験)に行き、現場の悩みや課題、地域のニーズなどを直接見聞きすることは、自分の考え方や思いを見つめ直し、実践活動にステップアップさせるための“生きた学び”を得ることができる、とても貴重なプログラムです。

 

■まちづくりの「やりがい」や「魅力」を伝える

 個人の趣味などの活動とは違い、多様な関係者と一緒に取り組むまちづくり活動には、様々な衝突やトラブルはつきものです。しかし、自分らしく地域と関わり、仲間とともに新たな価値を創り上げる喜びは、何物にも代えがたいものです。それは、ある意味で「エンターテイメント」と言えるような魅力があることを、受講生に感じてもらうことが大切であると思います。

 

■ともに悩み支え合える仲間づくりを応援

 まちづくり活動を実践し継続していくうえで、地域への想いや価値観を共有できる仲間の存在は、とても大きな支えになります。そして、明確な問題意識を持った意欲的な受講生が集まる研修という場は、こうした仲間と出会える絶好のチャンスであると言えます。受講生同志がお互いの思いや価値観を分かり合えるような対話型のプロセスを通じて参加者同士の仲間づくりを促すことが大切です。

 

■コミュニティや各種団体との出会いを提供

 講座修了後に、受講生に地域活動に参画してもらえるようにするために、講座を通じて受講生と地組織や市民活動団体等との接点をつくるための様々な工夫が求められます。例えば自治会・町内会のリーダーにオブザーバとして講座に参加・協力して頂く、受講生が地域課題把握の演習としてコミュニティの役員にヒアリングに行く、講座の成果報告会に地域のリーダーを招待するなどの方法が考えられます。

  近年、様々な自治体でまちづくりの研修が行われる一方で、こうした事業が他の行政サービスと同様に単年度ごとの短期的スパンで評価され、その価値が正しく評価されていないと感じることも少なくありません。研修修了後すぐに即戦力として現場で活躍されている方よりは、むしろ数年後に何かのきっかけで活躍の機会が与えられて、そこで初めて研修成果を活動に役立てている方のほうがむしろ多いのではないでしょうか。

 そういう意味では、こうした人づくりの取り組みは、受講生のフォローアップや追跡調査なども行いながら、中長期的なスタンスでじっくり腰を据えて取り組むことが求められると思います。

 

 

 

(文責:主任研究員 池田 哲也)