H25.第10.11.12講
第10講 テーマ 『地域に新たな風を吹き込むアートの力』
2014年1月31日(金)13:30~16:30 昭和ビル・ホール(9階)
「地域に新たな風を吹き込むアートの力」
東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科 教授 熊倉 純子 氏
アートプロジェクトは1990年代以降、日本各地で取り組まれている共創的芸術活動です。アートプロジェクトでの対象は絵画や彫刻に止まらず、空間全体を使った展示、ダンスや音楽、演劇、映像など幅広いです。また、出来上がった作品だけでなく、様々な人がいろいろな形で参加する制作プロセスも重視されます。
行政が関わるアートプロジェクトとして、経済波及効果をめざす新たな観光資源づくりとしての取り組みのほか、地道なまちづくりの一環としての取り組み事例などがあります。いずれも街や地域に飛び込み、様々な人々との関わり合いがコミュニケーションを誘発します。
このときプロジェクトをコーディネイトする仕掛け人の役割が重要となります。経済効果のほか、来訪者が増えることでまちの魅力が再発見され、シビックプライドが高まるといった効果もあります。
私が関わっている取手アートプロジェクトでは、1999年以来、行政、市民、大学が連携して取り組み、行政内では文化芸術課が中心となって予算措置、調整役を担っており、庁内の高齢福祉課、産業振興課、教育委員会、市民活動支援課などがそれぞれ役割分担しています。アートプロジェクトのきっかけやねらいは、まちづくりのほか、異業種分野との出会い、社会包摂的活動、防災、環境など幅広く、いずれも短期的な効果を求めるのではなく、長期的な取り組みが必要です。
「アートが街や社会にできることって? BEPPU PROJECTについて」
NPO法人BEPPU PROJECT 代表理事/アーティスト 山出 淳也 氏
BEPPU PROPJECTはアート体験を通じて魅力的な地域づくりに取り組むことを目的に大分県別府市を拠点に活動しているアートNPO法人です。アートによる地域の活性化には継続が必要であり、そのための活動拠点の整備、作品の発表の場としての芸術祭(「混浴温泉世界」「ベップ・アート・マンス」)やアートを巡る旅(「国東半島芸術祭」)など、様々なアート活動の支援や催しを行っています。
活動において留意すべきことは、アートは地域の問題を「解決」するものではなく、「問題提起」するものだということです。アート体験を通じて創造的な「気づき」を得た住民が地域を変えていくものと考えています。
行政は、アートやアーティストは住民に自由なものの見方や考え方を促す媒体であるということを自覚することが必要です。その際、より円滑に活動が展開されるためには行政・住民・アート(アーティスト)を繋ぐ中間的な存在が必要です。我々BEPPU PROPJECTはその一翼を担っています。
第11講 テーマ 『人口減少時代の定住対策』
2014年2月12日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング・特別会議室(12階 )
「住みたい街、住み続けたい街、流山」
千葉県流山市マーケティング課 シティセールス推進室 河尻 和佳子 氏
千葉県流山市マーケティング課は民間からの採用者3名を含む6名からなる組織です。自治体経営には都市が発展し続ける仕組み作りが必要との認識から、ブランドイメージを確立し、転入・定住促進を図っています。
マーケティングとは「売れる」仕組みを作ることです。街の強みを知り、売り込む対象を決め、その手段を考えることです。流山市では市民税のうち個人住民税の占める割合が大きく、高齢化と人口減少が自治体経営に及ぼす影響が非常に大きくなります。そのため、担税能力が高く、その子どもたちが住み続けることを期待できる共働きの子育て世代(DEWKS)をシティセールスのターゲットとしています。
流山市の魅力を市外の方に知ってもらい、訪れて、住み続けてもらうため、「都市イメージのPR、各種イベントの企画と開催、良質な街づくり」の3つを柱に事業を展開しています。シティセールス推進室設置から6年、流山市の人口は35~39歳が最大のボリュームゾーンとなり、子育て世代が大幅に増加、子どもの人口も順調に増加しています。
「ふるさと篠山に住もう帰ろう運動」
兵庫県篠山市政策部企画課篠山に住もう帰ろう室 室長 竹見 聖司 氏
兵庫県篠山市では、人口減少が続いており人口減少と少子高齢化が大きな課題となっています。このため、地域の弱みを強みに変えて、地域資源をつくる取り組み「都市から篠山への価値観の流れをいざなう取り組み」と、実際に人を篠山市へ呼び込む取り組み「都市から篠山への人の流れをいざなう取り組み」を進め、価値観、人の流れを変え、経済性、利便性からの転換をめざしています。
具体的には、空き家や耕作放棄地の増加、高齢化や担い手不足などの「弱み」を、歴史的なまちなみや美しい田園風景、コミュニティなどの「強み」として価値観を転換し、篠山暮らしの応援や情報発信、空き家バンク制度や婚活支援などによって転入・定住促進を図っています。
現在、転入も増加傾向となり、徐々に移住者が増加し社会減少に歯止めがかかりつつあります。今後、一定の人口減少はやむをえないものの、価値の転換によって篠山の良さを広め、転入・定住を促進していきたいと考えています。
「あまらぶ大作戦、実施中!」
兵庫県尼崎市シティプロモーション推進部都市魅力創造発信課 課長 吉田 淳史 氏
兵庫県尼崎市は、昭和45年の55万人をピークに人口減少が続いています(現在45万人)。このままでは更なる人口減少、少子高齢化が想定されます。このため、子育てファミリー世帯を中心にした現役世代の転入・定住の拡大による、交流人口増→活動人口増→定住人口増をめざしています。
まずは魅力の再発見と創出を効果的に発信し、交流人口を増やし、まちの魅力を増進することを尼崎版シティプロモーションの柱としています。ポイントは尼崎を好きな人(「あまらぶ」な人)を増やすことです。職員を対象にしたシティプロモーション研修のほか、スタンプラリー、尼崎出身の有名人のトークショー、あまらぶウェルカムムービー作成など、数多くのイベントの企画・開催を行っています。
定住人口の増加には息の長い取り組みが必要ですが、観光客入込客数、ホテル宿泊者数などの増加など、成果が出つつあります。
第12講 テーマ 『「ニッポンの日本」をデザインする ― 南信州・飯田の戦略的地域づくり』
2014年3月18日(火)14:30~16:30 名古屋栄ビル・特別会議室(12階)
「『ニッポンの日本』をデザインする ― 南信州・飯田の戦略的地域づくり」
長野県飯田市長 牧野 光朗 氏
飯田市の特徴はモノづくり、まちづくりなどにおける多様性にあります。多様性とアイデンティティを備えた持続可能な地域づくりのために、「環境」と「人」の2つを視点に置いています。
「環境」では、市民や産業界など多様な主体の協働によって「おひさま」と「もり」が育む低炭素な地域づくりを推進しています。
「人」については、地域に帰ってきたいと思う人づくり、地域の価値と実力に自信を持つ人づくりを進め、「地育力」を高めるために、グリーンツーリズムやワーキングホリディなどのほか、大学連携会議「学輪IIDA」により全国の大学と連携して地域課題の解決に取り組んでいます。
また、地域の人々が暮らす上で産業振興は前提となるものです。地域の外から取り込む財貨を増やし、流出を抑えて地域内で循環させる定住自立圏構築をめざすのが、経済活性化プログラムです。「南信州・飯田産業センター」を中心に、食農、航空宇宙、環境などの地域産業クラスターの形成を進めています。
右肩下がりの時代において持続可能な地域づくりを進めるためには、型にはまった既成概念を打破する事業構想(プロジェクト・デザイン)が不可欠と考えます。
バックナンバー
H25.第7.8.9講
H25.第7講 テーマ 『農業イノベーション-総合6次産業化に向けた戦略』
・「農業イノベーション-総合6次産業化に向けた戦略」
明星大学経済学部 教授 関 満博 氏
・「西条農業革新都市に向けて」
愛媛県西条市農業革新都市推進室 大久保 武 氏
H25.第8講 テーマ 『デマンド型交通の特性と課題-最適な地域交通体系の構築をめざして』
・「『電話で予約バス』について」
岐阜県可児市総合政策課 課長 牛江 宏 氏
・「『元気バス』について」
三重県玉城町総務課 中西 司 氏
・「地域公共交通におけるデマンド交通の役割 その特性と位置づけ」
公益財団法人豊田都市交通研究所
主任研究員 福本 雅之 氏
H25.第9講 テーマ 『団塊シニアの地域回帰支援』
・「団塊シニアの地域回帰支援」
NPO法人シニアわーくすRyoma21 理事長
有限会社アリア代表取締役 松本 すみ子 氏
・「シニアが地域を活性化する “健康・いきがい”から“やりがい実践”シニアへ
~事例で考える『志事力』発揮3ヶ条~」
NPO法人シニアSOHOサロン・三鷹 前代表理事
好齢ビジネス・パートナーズ 世話人 堀池 喜一郎 氏
H25.第4.5.6講
H25.第4講 テーマ 『シッビクプライドの醸成から始まる地域の再生』
・「シッビクプライドの醸成から始まる地域の再生」
東京理科大学理工学部建築学科 准教授 伊藤 香織 氏
・「みなと再生から始まる“賑わい”と“ときめき”の中心市街地づくり」
今治シビックプライドセンター 事務局 三谷 秀樹 氏
H25.第5講 テーマ 『民間事業を原動力としたまちづくり ― 新たな官民連携の形態』
・「民間事業を原動力としたまちづくり ― 新たな官民連携の形態」
㈱ハクヨプロデュースシステム代表取締役
いなり寿司で豊川市をもりあげ隊隊長 笠原 盛泰 氏
・「おだわら無尽蔵プロジェクト ― 新しい公共の実践」
神奈川県小田原市企画政策課 副課長 早川 潔 氏
H25.第6講 テーマ 『子ども・若者が生きやすい社会の構築 ― 子ども・若者支援の課題と方策』
・「子ども・若者が生きやすい社会の構築 ― 子ども・若者支援の課題と方策」
東京大学大学院教育学研究科 教授 本田 由紀 氏
・「三条市の子育て支援施策について」
新潟県三条市教育委員会子育て支援課
課長 久住 とも子 氏
H25.第1.2.3講
H25.第1講 テーマ 『国土の将来と地域の自立』
・「国土の将来と地域の自立 ー 先進国に相応しい安定感ある社会の構築」
中京大学理事・総合政策学部教授 奥野 信宏 氏
H25.第2講 テーマ 『大地震の備えた住民参加による事前復興まちづくり』
・「大地震に備えた住民参加による事前復興まちづくり」
首都大学東京 都市環境科学研究科
都市システム科学域 准教授 市古 太郎 氏
・「東京都豊島区の復興対策のついて」
東京都豊島区都市整備部都市計画課
係長 高橋 公喜 氏
橋田 真 氏
H25.第3講 テーマ 『地域の安全を守る防犯まちづくり』
・「地域の安全を守る防犯まちづくり」
明治大学理工学部 教授 山本 俊哉 氏
・「厚木市におけるセーフコミュニティの取り組み」
神奈川県厚木市危機管理部
部長 倉持 隆雄 氏