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H25.第7.8.9講

第7講 テーマ 「農業イノベーション-総合6次産業化に向けた戦略」       (2014 JAN. ちもんけん VOL.86)

2013年10月23日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング・特別会議室(12階)

 「農業イノベーション-総合6次産業化に向けた戦略」

明星大学経済学部 教授 関 満博 氏

 農業分野における近年の大きな変化に米生産の比率の激減があります。こうした中で、大潟村あきたこまち生産者協会(秋田県)、株式会社輝楽里(江別市)、各地の大規模受託経営などの例に見られるように従来の米作中心農業の枠を超えたユニークな農業経営が始まっています。また、兼業の進展と米作を背景にして各地に広がってきた集落営農も高齢化の進展に伴って転機を迎えています。

各地における取り組みの注目点として、生産規模の拡大や集落営農とあわせ、6次産業化と言われる付加価値を高める農業であることがあげられます。一例として、10aの農地でそばを栽培した場合、玄そばの価格が1万5000円前後であるのに対し、製粉して販売すれば7万円ほど、手打ちそばにして宅配で売れば17万円、さらにそば屋を開業し飲食させれば48万円になります。それぞれの過程での雇用も増えます。農産物をJA経由で販売するだけの立場から、農産物直売所で消費者への直接販売、農産物加工所における高付加価値化、さらには農村レストランの経営等により、年間を通した雇用機会の創出、所得の拡大も図られます。こうした農業の6次産業化は、農村女性の自立、起業を促す側面からも注目されています。

「西条農業革新都市に向けて」

愛媛県西条市農業革新都市推進室 大久保 武 氏

 西条市の農業産出額は150億円/年で愛媛県下2位ながら、工業出荷額の8000億円余に比べて小規模です。また農家1戸当たりの経営規模も小さく、農業を「業」として成り立たせることが課題です。

西条市では、商工連携の視点から様々な農業の6次産業化施策に取り組んできました。平成23年3月、日本経団連の「未来都市モデルプロジェクト」実証地域として「西条農業革新都市」が選定され、住友化学㈱が中心となってプロジェクトの中核を担う農業法人「㈱サンライズファーム西条」が同年8月に設立されました。12月には、国の地域活性化総合特区にも指定され、平成27年度までに10億円の販売額拡大、食関連企業への立地奨励交付金交付件数10件、年間農業販売額2千万円以上の経営体数80の実現を目標に掲げています。プロジェクトのキーポイントは、地域の農業者を含めた加工・流通・販売を中心に据えたマーケットインの仕組みづくりを通じて付加価値の高い産地化をめざすことにあります。中核となる加工・流通センターの整備を進めるなど、食産業の集積拠点とした総合6次産業都市の実現に向けて取り組んでいます。

第8講 テーマ 「デマンド型交通の特性と課題― 最適な地域交通体系の構築をめざして」(2014 JAN. ちもんけん VOL.86)

2013年11月13日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング・特別会議室(12階)

「『電話で予約バス』について」

岐阜県可児市総合政策課 課長 牛江 宏 氏

 様々な課題を抱える公共交通について、可児市が取り組んでいるデマンド型コミュニティ交通の事例を報告します。可児市にはJR、名鉄線の2路線の鉄道、東濃鉄道の路線バスのほか、市の自主運行バスとして、路線型のさつきバス5路線、八百津線廃線代替バスYAOバス、電話で予約バス7系統を運行しています。電話で予約バスは、定時定路線型の限界、高齢者がマイカーから公共交通へ転換できるコミュニティ交通確保の観点から生まれたものです。特徴としては、タクシー事業者の車両を使って決められたエリア内を最短距離で結ぶ区域運行方式、予約に応じて運行する基本ダイヤ型、予約に応じて設定されているバス停なら発着可能な方式をとっており、平成24年度に21,800人が利用しています。利用者数、利用者アンケート、運行事業者ヒアリング等を通じて有効性を確認できています。一方、利用者数の増加に伴って、運行車両数の限界などの課題もあり、今後は市による車両購入の検討などが必要となっています。

「『元気バス』について

三重県玉城町総務課 中西 司 氏

 玉城町においても従来は路線型バスを運行していましたが1台当たりの利用者が限られ、効率的なバス運行が求められていました。そこで取り入れたのが、ICTを活用したオンデマンド型の元気バスです。一般的なオンデマンドバスは、オペレータが電話予約を受け付け、経路を考え、運転者に配車を伝えるという高度な能力が求められます。玉城町が導入した元気バスは、オペレータに頼っていた経路作成や配車指示をクラウド型コンピュータで行うことで、サーバ費用も安く抑えられます。予約は電話のほか、パソコン、スマートホン、公共施設等に設置のタッチパネルなどで行うことができます。バス側はタブレット型車載器を用い使い勝手は簡便となっています。バス停数は従来の53か所から157か所に増え、年間利用者数は約30,000人。また予約システムにはゆとり時間を設定し、予約時間の範囲内で対応可能な乗車を認め、乗合効率を高めています。また、希望者に携帯型簡易予約端末を配布し、外出支援のほか緊急通報、安否確認等、福祉面にも活用しています。

「地域公共交通におけるデマンド交通の役割 その特性と位置づけ」

公益財団法人豊田都市交通研究所

 主任研究員 福本 雅之 氏

 公共交通は共同で利用する交通という意味であり、公共が担うという意味ではない点を押えておくとデマンド交通を理解しやすい。デマンド交通は走らせ方の区分であり、公共交通云々とは異なるものです。日本では1970年代に民間バス事業者の路線維持の観点からスタート、2000年代に入ると市町村が費用効率的な移動手段として取り組むようになり、全国的に急増。これには路線バスの退潮、高齢化などの社会的背景、ICTや法的位置づけなどの技術・制度的背景があります。

 デマンド交通には様々な方式があるが、経路、時刻、停留所の自由度と車両の大きさの組み合わせと、制度上の位置づけから整理するとわかりやすい。路線バス代替、福祉輸送、それぞれのアプローチからもデマンド交通がめざす性格も異なってきます。また、ターゲットとする利用者、運行の目的によって、運行形態の選定が必要となります。他の交通手段との役割分担、総費用と一人当たり費用、利用者負担と公的負担の線引き、デマンド交通以外の選択肢やそれぞれの課題も含めて検討し、デマンド交通を選ぶ理由を明確にする必要があります。

第9講 テーマ 「団塊シニアの地域回帰支援」 (2014 JAN. ちもんけん VOL.86)

2013年12月12日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング・特別会議室(12階)

「団塊シニアの地域回帰支援」

NPO法人シニアわーくすRyoma21理事長

有限会社アリア代表取締役 松本 すみ子 氏

 今日の超高齢社会において、福祉施策を始め年齢で区切った対応はもはや困難となっています。まず、65歳以上を高齢者としてひとくくりにしないことが必要です。一般的な生涯労働時間10万時間に対し、60歳~80歳の自由時間も10万時間近くあります。こうした中で生涯現役志向が高まるなど、シニアの意識も大きく変わっています。どこに働きかければ地域の活性化に誘導できるか、ターゲットをどこに定めるかがポイントです。サービスの提供ではなく一緒に何かをやろうという企業の団塊世代向けの取り組みは行政にも参考になると思います。

 行政側のニーズを補完し、新しい公共の推進する上で、シニアが期待される時代です。年金兼業生活が一般化する時代、人生二毛作時代といえます。周囲の人も自分も幸せになる活動として、コミュニティビジネスが団塊世代の活躍の場として注目されています。地域デビューに当たって、趣味やボランティア活動が幅広い活動やコミュニティビジネスにつながっていきます。個人で取り組むこと、地域活性化につながること、行政の協働事業などシニアの活動分野は様々です。

「シニアが地域を活性化する “健康・いきがい”から“やりがい実践”シニアへ ~事例で考える『志事力』発揮3ヶ条~」

NPO法人シニアSOHOサロン・三鷹 前代表理事

好齢ビジネス・パートナーズ 世話人 堀池 喜一郎 氏

 表題に書いた「健康・いきがい」については「やりがい」に変えることが必要であるし、「志事力」ということばは、人に仕える必要のないリタイアした後の人にとっては、いちばんやりたいことをやるという意味で書きました。ただ、実際に実践している人は非常に少なく残念です。高齢者の知恵や人脈を活用して、楽しく活動しながらお金も稼ぐ活動を通じて、面白く暮らしながら、地域で活動し、地域につながり、能力・役割が発揮できます。

 受身の「ただのオジサン」から自分にできることを実践する「ただならぬ地域人」への脱皮が必要。「ただならぬ地域人」は「志事」人間といえます。冒頭でお話しした「やりがい」は「志」と「得意技」が結びついて実現します。シニアによるコミュニティビジネスの実践例として、ネットを駆使した「シニアSOHO」、芝生化を行う学校緑化プロジェクト、30代ママと70代母親の開発・製造・販売を行う「孫育てグッズ開発」起業など数多くあります。シニアが地域で信頼され、面白く仕事を継続するための3条件として、生きがい、やりがい、ナイスガイの「3ガイ主義」を掲げて活動しています。