H28.第7.8.9講
第7講 テーマ 「子育て家族への切れ目ない支援『ネウボラ』 ― 子育て世代包括支援の展望」
2016年10月13日(木)13:30~16:30 名古屋商工会議所 第5会議室(3階)
「子育て家族へのひとつながりの支援『ネウボラ』 ~ 子育て支援の新たなステージ ~ 」
吉備国際大学大学院社会福祉学研究科長・教授 髙橋 睦子 氏
フィンランドでは、1944年にネウボラがスタート、1980年代半ばから90年代末にかけて、多様な子育てを支援するため、子育ての方法、働き方に応じた支援制度の多元化が図られ、メニュー選択の幅が広がっています。ネウボラは、利用者中心のひとつながりの出産・子育て支援であり、全国で約800か所のネウボラでは、全員・個別のワンストップでの支援をかかりつけの担当者・専門職が妊娠期から就学前まで、妊娠・出産・子育て情報などをサポートするほか、家族のコミュニケーション、様々なリスクの予防、早期発見、早期支援などのサポートを行っています。ネウボラに完成形はなく、サービス内容について実践+調査研究/検証+政策を繰り返し、自治体ごとの新しい工夫が続いています。我が国にフィンランドの制度を直輸入できるものではなく、他国の制度の優れたエッセンスを見失うことなく、日本なりの強みを活かした「よりよい仕組み」を工夫して欲しい。
「浦安版ネウボラの構築 ~切れ目ない支援を目指して~ 」
千葉県浦安市こども部こども課少子化対策室長 並木 美砂子 氏
浦安市では、合計特殊出生率が低いこと(1.09)、子育て世帯の9割が核家族、ひとり親世帯の増加、晩婚・晩産傾向、高い未婚率などの現状に対して、子育てについて相談すべき身近な人がいない、親の肉体的不安・精神的不安定、子育ての経済的負担感などが「浦安版ネウボラ」導入の背景です。少子化対策として、適婚・適産情報周知、婚活支援、妊娠・出産から子育てにわたる切れ目のない支援を行うため、庁内各部門横断的な少子化対策基金事業(平成28年度・20事業)を実施(基金30億円)。このうち、こどもプロジェクト事業として、子育てケアプラン作成(全3回)、2回目のケアプラン作成時に「こんにちはあかちゃんギフト」「こんにちはあかちゃんチケット」、3回目のケアプラン作成時に「ファーストアニバーサリーチケット」を配布しています。利用者からは、子育ての不安軽減、市のサポートへの安心感のほか、あかちゃんギフトへの好評の声をいただいています。
第8講 テーマ 「財政シミュレーションゲーム“SIMふくおか2030”が開く私たちの未来」
2016年11月25日(木)13:30~17:00 名古屋栄ビルディング大会議室(12階)
「財政シミュレーションゲーム“SIMふくおか2030”が開く私たちの未来」
福岡県福岡市経済観光文化局 創業・立地推進部長 今村 寛 氏
本講は、いつもの市町村ゼミナールとは進め方を変え、ゼミナール前半で「財政出前講座」の資料を基に、福岡市を例に人口・税収とも増加傾向にあるにも関わらず、それ以上に義務的経費の増大により財政はひっ迫という、今日の自治体が直面する厳しい環境を参加者が共有します。
次にいよいよ財政シミュレーションゲームの開始です。ゲームでは、各テーブルの参加者6名が各部門の局長となるチームを組み、それぞれの所管する事業について、義務的経費増大や新しい政策課題への対応のため、他の局長との対話によって事業の取捨選択を行い理想のまちづくりを進めます。必要経費のねん出方法は、事業の廃止か借金のどちらかに限られます。事業の見直しに当たっては、「お金がない」ことを理由にするのではなく、事業の必要性や効果、他の事業との優先順位、事業廃止後の影響を考慮した代替策についても市民に分かりやすく説明、理解を求めることが必要です。
2020年~25年の政策判断の選択は社会保障費増への対応、大型バス駐車場と免税店整備、公園遊具の緊急総点検、2025年~29年は社会保障費増への対応、アセットマネジメント経費増への対応、ドーム球場建て替えへの対応、イースト区分区への対応、2030年では世界の都市の住みよさランキングに高評価を得るため、2020年以降に借り入れた借金の繰り上げ償還による健全財政の実現、財源ねん出のために削減する事業、政策の取捨選択によって実現したまちの強みは何か、みんなが住みたくなる新たな「市の名前」を考えます。
シミュレーションゲームを通じて、政策の取捨選択を財政部門に委ねるのではなく、全庁協働による自立経営を実現すること、とくに理想のまちづくりを進めるためにビルド&スクラップの考え方に立って実施すべき政策を進めるためには現在やっていることを自治体の各部門が認識することの重要性を学びました。
第9講 テーマ 「観光地経営に必要な推進組織 ― 日本型DMO成功のポイント」
2016年12月15日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)
「観光地経営に必要な推進組織 -日本型DMO成功のポイント-」
近畿大学経営学部商学科 教授 高橋 一夫 氏
訪日外国人観光客の増加は著しいが、更なる増加・拡大には、民間の観光イノベーションが欠かせません。担い手のひとつとなるDMOは、権限と責任を持った組織となることが必要です。国においても、まち・ひと・しごと創生総合戦略や日本再興戦略において、地域の観光振興を戦略的に推進する専門的組織、世界に通用する観光地づくりとマーケティングを行う官民一体の観光地経営体(日本版DMO)確立が急務とされています。
観光地経営とは、持続的・計画的に意思決定を行い、様々な主体と調整を行いながら観光事業を管理・遂行することです。とくに外国人観光客への対応として、ITを活用し、旅行会社(発地型)とDMO(着地型)が連携した観光地づくり、観光振興を図ることが重要です。我が国の従来型の脆弱な観光協会から脱皮するため、欧米のDMOの組織運営、ガバナンス、運営経費確保策、行政とDMOの連携など、学ぶところは多い。
「豊岡版DMOについて 事例紹介 」
一般社団法人豊岡観光イノベーション 川角 洋祐 氏
豊岡市は市内に多くの特色ある観光資源を持ち、観光が最も大きな産業となっています。2015年の観光客入込者数は約430万人、うち宿泊者数は約120万人と横ばい状態です。こうした中で、外国人観光客は2011年の約1,000人が15年には約34,000人と30倍以上の急増を見ています。市では2020年の外国人観光客を10万人に増やす目標を持っています。
観光地のマーケティング機能、地域・事業者をそれぞれつなぐ機能、地域の素材や営みを体験する商品づくりを進めるため、専門知識を持った人材を民間企業からの起用、宿泊予約サイトの運営、意欲ある事業者との連携などを行う、豊岡版DMO「豊岡観光イノベーション」を高速バス会社、地域のバス会社、地元金融機関、豊岡市の出資で16年6月に設立。DMOでは、観光客の行動分析、着地型ツアーの企画・販売、旅行博への出展、海外モニターツアーなどに取り組んでいます。