H29.第4.5.6講
第4講 テーマ 「地公共施設の更新・再編をどう進めるか」
2017年8月2日(水)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)
「公共施設の更新・再編をどう進めるか ~ まちづくりとしての公共施設マネジメント」
名古屋大学大学院工学研究科 准教授 恒川 和久 氏
今日、公共施設の管理・運営は、施設の急速な老朽化、人口の減少と少子化・高齢化、厳しい財政状況等、厳しい環境下にあります。待ったなしの公共施設再編は、総論賛成であっても具体化には多くの壁があります。各自治体で策定される公共施設等総合管理計画にも、施設総量の縮減という数値目標に縛られ、公共施設・サービスのあるべき姿の議論がない事例が多いほか、画一的な数値面での縮減計画ではなく、自治体の特性、ライフステージ変化に伴う新たな公共施設重要の発生などの考慮が必要です。また、再編には部局縦割りの壁、自治体間の壁、官民の壁などを乗り越え、機能による異種用途の複合化、自治体の範域を超えた広域利用、民間施設・サービス活用なども必要です。
公共施設再編は目標年次まで待てません。有効活用されていない施設の早期削減に取り組むほか、受益者の偏在と負担の見直しなどを行い、公共施設更新・再編を後ろ向きの削減から、まちづくりに繋がる前向きの目標として欲しいと思います。
「公共施設更新問題への挑戦―秦野市の取組と日本のハコモノ事情から―」
神奈川県秦野市政策部公共施設マネジメント課長 志村 高史 氏
秦野市では、公共施設再配置の基本方針を将来にわたって真に必要な公共サービスを持続可能なものと定義。市民に公共施設の現状を課題、横断的に比較した公共施設白書を定期的に作成・公表。新しい情報を発信し続けることで、庁内や市民と危機感を共有。優先する方針を明らかにして再配置計画を作成。最終的に小学校区を中心とした15のコミュニティ拠点となる機能、施設に集約し、それ以外は譲渡・賃貸・解体することとしています。障害者福祉施設の民営化、保健福祉センターへの郵便局誘致などのシンボル事業を実施したほか、負担の公平化・適正化のため公共施設使用料の一括改定(平均55%引き上げ)。市民には、現在の安価なサービスのつけを将来市民に転嫁することの可否を訴えています。
秦野市の現状は遅かれ早かれどこの自治体でも直面することです。子や孫につけを先送りせず、国の補助を当てにすることなく自らの力でできることから始めよう。
第5講 テーマ 「民間と連携した健康都市づくり~民間発想の健康・介護プログラムの提案」
2017年9月14日(木)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)
「長野県松本市における市民との共創による健康寿命延伸都市の創造」
一般財団法人「松本ヘルス・ラボ」 専務理事 降旗 克弥 氏
松本市では、都市戦略のキーワードとして、①健康寿命延伸都市・松本の創造、②松本ヘルスバレー構想、③健康経営、の3点を掲げています。「健康寿命延伸」の健康とは、人・生活・地域・環境・経済・教育文化の健康を含みます。これらの実現に向け、①産学官連携のプラットフォームを担う「松本地域健康産業推進協議会」の設置、②健康情報の見える化をめざす「松本版PHR」の構築、③健康に関する情報発信と集積を図る「世界健康首都会議」開催などに取り組んでいます。
こうした取り組みの要となるのが「松本ヘルス・ラボ」です。ヘルス・ラボは、市民と企業が一緒になって「健康価値」を創造する組織として、健康チェック(健康の見える化)、企業等と連携した健康プログラムのほか、市民参加による健康産業創出の場づくり、新しいビジネスの実証などにも取り組んでいます。
「スポーツを通した健康まちづくりをめざして」
NPO法人「エンジョイスポーツクラブ魚沼」アドバイザー 高木 貞介 氏
エンジョイスポーツクラブ魚沼は行政と連携しながら、介護予防や健康づくりに取り組んでいます。多くの総合型スポーツクラブの運営は、財源面で自立が困難。NPOは行政の下請け組織ではなく、活動のPDCAを回す上でも経営基盤の強化は重要です。行政と連携することで地域の課題解決に寄与できます。そのためには、地域で必要とされるクラブであることが絶対条件。地域の課題探しからスタート。
その過程で子供から高齢者まで、各種スポーツに対する欲求が高いにも関わらず、行政、民間とも応えていませんでした。高齢化に伴い増え続ける医療費や介護費用について運動教室の効果も指摘されています。こうした効用をもとに行政に対し、年代ごとのプログラムを提案、受託事業として実施しています。地域や行政の課題に応えることによって、地域が求めるスポーツクラブとして初期の目的に合致した活動を行っています。
第6講 テーマ 「少子・高齢社会を支える地域運営組織 ~ 自立した組織づくりの方策」
2017年10月3日(金)13:30~16:30 名古屋栄ビルディング 特別会議室(12階)
「 自治を回復し、まち・むらの課題を、まち・むらの力で解決するために ― 協働から総働・小規模多機能自治へ ― 」
IIHOE【人と組織と地球のための国際研究所】代表者兼ソシオ・マネジメント編集発行人 川北 秀人 氏
急激な高齢化や人口減少が進む中で、地域の課題解決は、特定のリーダーに頼ることなく、仕組みとしての地域づくりが重要です。誰かが何とかしてくれるという甘えを捨て、「協働」から、地域住民が地域のおかれている状況を理解した上で小規模多機能自治をめざす「総働」に移行することが必要です。まちの力には関係の密度がポイントとなります。
地域では人口の高齢化と同時に、ハコモノ・インフラの高齢化も進行。しかし、新設はおろか更新する財源もありません。何を残すか、選択が必要となっています。また、住民の日々の暮らしにおいて、何が本当に大事なのか、行政はわかっているのでしょうか。地域づくりで歴史や文化といった個性も必要ですが、人口や産業・地勢など、地域特性を踏まえた施策を進めることが重要です。自治会活動も従来の「行事型」から福祉や経済などに重点をおいた「事業型」へ、小規模多機能自治への転換が急務です。
「小規模多機能自治による住民主体のまちづくり ~ 雲南市の地域自主組織」
島根県雲南市政策企画部地域振興課企画官 板持 周治 氏
島根県雲南市では、合併に伴う広域化と行政の限界、人口減・少子高齢化等に対し、市民一人ひとりが自ら考え・決定する地域の自治と、実践・持続する地域の運営を地域(概ね小学校単位)に任す、住民主体のまちづくり(小規模多機能自治)を進めています。
従来の自治会等と小規模多機能自治組織は並立し、それぞれの自助・互助・公助は重層性、補完性の関係にあります。地域自治組織の活動拠点として、従来の公民館を交流センターに改編、センター長を始めとするスタッフは地域で選任(センター職員と地域自治組織の一体化)。市からは指定管理料、活動交付金を支払い、生涯学習だけでなく、地域づくり、地域の特性に合った地域福祉を担っています。安心安全・持続可能性の確保、地域の歴史・文化の活用の視点から活動を進めています。
全国の自治体との情報共有、課題解決のため、平成27年に小規模多機能自治推進ネットワーク会議を発足させ、更なる制度改善に向けた取り組みも行っています。