H30.第1.2.3講
第1講 テーマ 『“関係人口”が地域を変える』
2018年5月18日(金)13:30~16:30 IMYビル 3階会議室
”関係人口”が地域を変える
ローカルジャーナリスト 田中 輝美 氏
ローカルジャーナリストという仕事を始めたきっかけは、情報の東京一極集中の現状を見て、地方に暮らしながら地方発の情報を発信したいからです。島根は過疎地域として課題が多く、全国からチャレンジャーが集まり、今や課題解決の先進地となっています。
交流人口と関係人口の違いは、よそ者を消費者としてだけ見る(交流人口)のではなく、ともに地域をつくる “仲間”として受け入れる(関係人口)ことにあります。課題が多いとは、“関わりしろ”が多いことを意味します。移住・定住しなくとも地域に関わりたい人が、今、増えています。地域の“力”になっていることの体感が大切です。移住・定住は結果です。地域をつくるのは、よそ者ではなく、やはり地元の人たちです。
地域と関わりたい人を生かすかどうかは、地域次第です。関係人口を増やす取り組みのひとつに、2012年から島根県が主催している「しまコトアカデミー」があります。自分の関わりしろ、役割をそこに見つけられることが大事です。
地域をアクティブ化する仕組みづくり~しまコトアカデミーのつくり方
しまコトアカデミー 事務局、シーズ総合政策研究所 藤原 啓 氏
地域おこし協力隊の例に見られるように、島根に来て欲しい人材を東京で募集しても中々集まりません。2012年にスタートした「しまコトアカデミー」は、島根との「関わりしろ」づくりを大切にした講座、移住・定住がゴールではないゆるい講座等、愛着のあるコミュニティづくりをめざしています。東京、大阪での座学のほか、島根でのインターンシップでは、受講者の意識が大きく変わります。講座で学んだ地域課題、地域の人々とのコミュニケーション等が、移住・定住に結び付くだけでなく、都会に住む受講生の仕事や地域活動においても多くの方が島根との関わりを持つようになっています。
しまコトアカデミーからの発展形として、受講生が主体的に島根との関わりを拡大する形で、「しまコト関西」、「しまコト・しごとカレッジ」、「しまコト女子講座 meets my life」などのほか、首都圏から「しまね」にコミットする仕組みとして「ビギナーズ講座」、「しまねつながるプロジェクト」なども動き始めています。
第2講 テーマ 「多様性を尊重するまちづくり ~LGBTの理解を契機に」
2018年6月11日(月)13:30~16:30 昭和ビル9階ホール
多様性を尊重するまちづくり ~ LGBTsの理解を契機に
特定非営利活動法人 ASTA 共同代表 松岡 成子 氏
LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)は、性的マイノリティーの総称のひとつです。LGBTの中にも前3者の性的指向を示すものと、4つ目の性自認を示すものが含まれます。近年は、性的指向と性自認に関しては、誰もがLGBTsのグラデーションのどこかにいる当事者として、全ての人の生きやすさに結び付ける、SOGI(Sexual Orientation & Gender Identity)の考えが重視されています。
電通LGBT調査2015によると、我が国のLGBTは総人口の7.6%(約965万人)と言われます。このように多くのLGBTがいても我々に見えないのは、「言えない」「言わない」人が多いと思います。多くのLGBTの存在を理解したとき、大切なことは「性別」ではなく、「人柄や人格」ではないでしょうか。私たちは、「ALLY(アライ)」(LGBTを理解、支援したい人)を増やし、カミングアウトしなくても安心して生活できる社会をつくること、誰もが誰かのALLYになることをめざしています。
岐阜県関市におけるLGBTの取組み
岐阜県関市 市民協働課 課長補佐 河合 康紀 氏
岐阜県関市では、性の多様性を認め、すべての市民がお互いを尊重し合い、誰もが自分らしく暮らせることを目指し、LGBTに対する配慮に向けた取り組みを始めるべく、平成28年8月に「LGBTフレンドリー宣言」を行い、その決意を表明しました。
具体的には、市職員・教員の意識改革を図るLGBTセミナーの開催、LGBT支援に対する庁内検討委員会設置等(平成28年度)、LGBTハンドブック作成、公共施設トイレの表示変更、市独自の申請書及びアンケート等の性別記載210文書中77を削除、印鑑証明の性別欄削除の条例改正、「広報せき」でのLGBT特集等(平成29年度)、小学生向け紙芝居作成、高校生主催によるダイバーシティ・シンポジウム等(平成30年度)の取組みを行っています。また、行政の取組みのほか、市内企業でのLGBT対応、中学校のLGBT教育、高校でのLGBT啓発グループの誕生など、その輪は広がりつつあります。
第3講 テーマ 「人口減少期の都市計画に向けて ~リアルな都市のたたみ方」
2018年7月11日(水)13:30~16:30
人口減少期の都市計画に向けて~リアルな都市のたたみ方
首都大学東京 都市環境学部都市政策科学域 響庭 伸 氏
人口の急減に伴い都市空間がどう変わり、どのような問題が発生するのか、これに対して都市計画はどのような政策をとったらよいのかお話ししたい。人口減少時代の都市計画に重要なキーワードは、①ミティゲーション(緩和政策)と②アダプテーション(適応政策)です。対症療法ではなく、人口減少社会に都市をどのように適応させていくアダプテーション政策が必要です。コンパクトシティが唱えられていますが、スプロールで広がった市街地の大きさは縮小しません。市街地に小さな穴が空くように空き家や空地が増えていきます。私は、これを都市のスポンジ化と呼んでいます。
都市のスポンジ化は、個々人の都合で起きる現象です。①ゆっくり、②個人が、③小規模で、④様々なものに、⑤あちこちで変わるなどの特徴があります。こうした特徴を踏まえ、時間をかけ、人のつながりを活かしながらスポンジの穴を一つずつ埋めていくことが、コンパクトシティに向け、地に足の着いた都市のたたみ方と言えます。
山形県鶴岡市における都市計画と都市再生への取組み
山形県鶴岡市都市計画課 課長 岡部 信宏 氏
山形県鶴岡市の人口は、2010年の136,000人余から2040年には94,000人余へと減少が予測されています。とくに中心市街地の人口減少や高齢化が著しく、空洞化が進み、増加する空き家・空き地、老朽住宅、狭隘道路などの課題を抱えています。市街地の郊外部への分散抑制と、市立庄内病院や総合保健福祉センターなどの中心部への移転、整備、バス網の充実などコンパクトシティをめざした施策を進めています。
2017年策定の鶴岡市都市再興基本計画(都市マス+立地適正化計画)では、中心市街地への公共施設集積のほか、ホテルやバスターミナルを始めとする民間誘導施設等整備事業、先端研究産業の誘導、空家・空き地・狭隘道路を一体のものとして再生を図るランドバンク事業、所有者から寄付された空き家を解体・整地して若者世帯や移住者に供給する中心市街地居住促進事業など、コンパクトシティ実現に向けた取り組みを進めています。