H30.第4.5.6講
第4講 テーマ『スポーツによる地域活性化 ~スポーツイベント・スポーツツーリズムを活かす』
2018年8月2日(木)13:30~16:30
スポーツによる地域活性化~スポーツイベント・スポーツツーリズムを活かす
早稲田大学スポーツ科学学術院 間野 義之 氏
日本で大きなスポーツ大会が開かれる2019年から21年までの3年間を、私は「ゴールデン・スポーツイヤーズ」(GSYs)と名付けています。愛知・名古屋では2026年にアジア競技大会も開かれます。スポーツの力で観光や情報発信など、地域振興ができるのではないか。スポーツのレガシーは、ハード面に止まらず、文化、経済、環境、社会問題など幅広い分野に及びます。レガシーを継続的に創り、伝えるのは開催自治体となります。
スポーツが地域に及ぼす効果として、消費、雇用、税収などの経済効果、コミュニティ再生、地域愛の源泉、若い世代への夢の付与などの社会的効果・心理的効果があります。交流人口の増大、定住人口の増大、地域住民がいつまでもいきいき暮らす、産業創出、雇用拡大、QOLの向上など、各地のスポーツを通じた地域活性化事例は数多くあります。GSYsを好機ととらえ、事前キャンプ、健康増進活動、観光・誘客、文化プログラム、共生社会創りなど、他人ごと、他所ごとから、自分ごと、我々ごととして取り組んでほしい。
市民参加型耐久スポーツを通じての人づくり、地域づくり
株式会社トライアーティスト 代表取締役 竹内 鉄平 氏
私からは現役の選手として、また会社を起して取り組んでいるスポーツビジネスを通じた経験から、トライアスロンに代表される市民参加型耐久スポーツを中心にスポーツが地域に与える影響や人づくりについてお話ししたい。
地域を巻き込んだスポーツイベントの事例として、伊勢志摩・里海トライアスロンがあります。6回目を迎えた2018年大会は940名余の参加者を数え、参加費と協賛金で運営できるところまで成長してきました。イベント事業費や宿泊、飲食などの直接的な経済効果のほか、人々との触れ合い、スポーツが持つ価値の共有、地域コミュニティ形成など、「する」「見る」「支える」ことを通じ、スポーツイベントが地域にもたらすものは大きい。最近では、各地でトライアスロンのほか地域を巻き込んだトレイルランニングレース、ロゲイニングなど、さまざまな形態の耐久型スポーツイベントの開催が増えています。
第5講テーマ 『企業との連携による行政力の向上 ~行政経営のパートナーとして』
2018年9月28日(金)13:30~16:30
企業とつながる自治体~行政経営のパートナーとして
株式会社チェンジウェーブ 代表 佐々木 裕子 氏
「人」が変わり、化学反応を起こし、行動を起こす瞬間を仕立てるのが、変革屋たる私の役割です。イノベーションを起こすには、多様な人材が関わることが必要です。長野県塩尻市で始まったMICHIKARAの取組みは、課題を抱える行政の担当職員と民間企業人が完全フラットなチームを作って、行政課題の解決策を提示する活動です。新しい視点での空き家対策、子育て女性の就業支援、塩尻産木材で暮らす街などの森林資源活用策、高校生起業家育成事業など、行政施策として事業化しています。塩尻市では、民間と協働して事業を進めることが、行政経営システムのひとつの柱として位置づけられています。
変革は、論理で起こすことはできません。変えたいと本気で思い、多様性の力を信じ、実際に動き、波を起こす「ヒト」たちが存在し、化学反応を起こすことが出発点です。
情報発信日本一をめざして~民間企業と連携した「電子広報」から始まる取り組み
茨城県行方市 市長 鈴木 周也 氏
行方(なめがた)市は、歴史や自然、農産物を始めとする特産品などに恵まれた土地であるにも関わらず、難読市のひとつです。情報発信で日本一をめざす取り組みも、行方市を多くの人に知って欲しいことが出発点です。市民全員が情報の発信源となること、行政と市民の情報共有が必要です。市政情報を誰にでも、分りやすく、情報共有するため、紙媒体の広報紙とあわせ、MCCatalog導入による広報紙の多言語対応デジタル化を平成29年5月から始めました。スマートフォンで手軽に読めるほか、デジタル化により多言語対応(10言語)が容易になったこと、国内外を問わない情報発信、広報紙以外のハザードマップ、観光パンフレット、ごみカレンダーなど市情報のデジタル化も行っています。
デジタル化は、市政や歴史、文化などの情報共有のほか、行政コストの節減、アクセス情報の活用など、多くの成果を生んでいます。
第6講 テーマ 『誰もが取り組めるボウサイ ~地区の防災力を高める手法』
2018年10月11日(木)13:30~16:30
「 誰もが取り組めるボウサイ~地区の防災力を高める手法 」
跡見学園女子大学 教授 鍵屋 一 氏
災害は、誰もが体験したことのないことに突然襲われるものです。事前の計画と訓練が大切です。災害時の避難行動から、家族や地域が果たす役割が大きいことが明らかです。しかし、高齢化、近所付合いの減少、町内会活動への不参加、消防団員数の減少のほか、自治体職員数も急減しています。つまり、自助は高齢化、単身化に伴い弱体化しているほか、共助は町内会不参加、消防団員の減少等で弱まり、公助については行政職員の減少で弱体化というのが、今の社会の姿です。防災において地域が果たす役割はますます大きくなっています。
地域防災計画の要点は、弱くなった共助の強化にあると考えます。地域の助け合いが強まれば、自助、公助も強くなります。人を健康で幸せにするのは良い人間関係に尽きます。自分は大丈夫と言う「正常化の偏見」を打破することが防災教育のスタートです。また、行政のBCPは、地域の共助を支える上でも災害時に通常業務をできるだけ絞り込み、災害対応業務人員を確保することだと思います。
ボウサイをデザインと企画の力で訴求する取り組み
株式会社R-pro 代表 岡本 ナオト 氏
私は、3.11の後、「非常食定期宅配サービス」を始めました。半年ごとに非常食を宅配するので、賞味期限や置き場所を気にする必要がないほか、常に災害を意識してもらえます。我々が取り組むYamory(ヤモリ)の全体図は、①ワカモノ向けに意識しない防災をめざすプロダクト・サービス、②子供たちにボウサイを当たり前にする教育、③ボウサイ×テクノロジーで未来のボウサイをイメージする、3本柱の活動を展開中です。
ワカモノ向けの取組みとして、街中での被災を疑似体験する「YAMORI CAMP」、非常時にロープとして活用できるパラコードを使ったアクセサリーを福祉施設で作る「LOOPS」などの活動、ボウサイ教育として、ゲームで防災を学ぶ「いえまですごろく」、「KIMARI」、ボウサイ×テクノロジーでは、WEBマガジンで未来のボウサイを発信しています。今後の展開として、非常食定期宅配を広めるためのリニューアルのほか、レスキューとボウサイが連携した「家守防災服」を通じてボウサイ意識を高めたい。